新・伊野孝行のブログ

2020.9.15

夏から秋へ

急に夏から秋になった。季節の変化に気持ちがついていけないのか、すべてのことが手につかない。
そんなわけで今週のブログはサボるつもりでいたのだが、死力の限りをふり絞って、パソコンにしがみついているところだ。

毎年、夏になると麦茶ってこんなに美味しいのか、そうめんって毎日でも食べたいな、と思う。結局、麦茶とそうめんを愛するのは夏だけなのである。
あんなに夏にいじめられると、永遠に夏が続くような気がしていた。長袖のシャツなど捨ててしまってもいいと思った。この後、冬が来るなど信じられない。

夏の終わり、小さな庭に見知らぬ芽が出ていた。成長が著しく早い。俺は雑草なんかじゃないっすよ、という雰囲気を持っている。なんだろう?鳥がひまわりの種でも運んできたか。
背丈の低いまわりの植物を覆うほどに豊かな葉を次々とつけていった。
しばらくすると細かくて白い花を咲かせた。あきらかに雑草ぽかった。
その白い花を目当てにどこからか小蝿が飛んで来る。

昨日、スーパーに行く途中、道端にウチのとおんなじ植物が生えているのを見つけた。やはり雑草じゃん。確定。
早速家に戻るや、引っこ抜いた。雑草の陰になっていたレモンの苗木に派手な色のイモムシが何匹もいた。悪いけど、こっちもお陀仏してもらうよ。
虫も殺したくない気分なのに。
季節の変わり目、どうぞ皆様もお元気で。

2020.9.8

軽井沢の旅、番外編。

軽井沢滞在中に我が自転車の師匠である車輪太郎(くるまりんたろう・仮名)とパートナーの舞ちゃんがきてくれた時の話である。
二人は早朝東京を出発し、小淵沢駅まで輪行(自転車を電車に載せること)し、そこから軽井沢にやってきた。小淵沢駅というのは最も標高の高い駅らしい。軽井沢より標高が高いところから走ってくるのだから楽勝という算段だったのだろう。しかし道はただ軽井沢に向かって下っているわけではない。いったん下った後は、嫌になるほど上りが続いたらしい。やっとの事で彼らが軽井沢に着いたの夜だった。

翌日、彼らとサイクリングに出かけた。
出かける前に自転車を並べて写真に収める。自然の中で飯を食うと抜群にうまく感じるように、自転車もめちゃ映える。


中軽井沢にあるTさん宅からものの数分でこのロケーションである。
川沿いを抜けてさらに30分ほど走る。日差しは強いが、気分が良い。
輪太郎たちは、昨日の今日だから、緩やかな上り坂になるだけで、心が拒否反応を示すようだ。しかし、私は上りだろうがこうやって仲間と走ることが嬉しい。


発地市場には巨大藁ネズミがいた。

スピードは出しているつもりはなかったが、嬉しくて先走り、つい先頭になってしまう。
車道から歩道に入ろうとしたその時だ。
ほんのわずかな段差にタイヤが取られて、思いっきり転けてしまった。

足をついてなんとか転倒を防ごうと思ったのが間違いだったのか、右膝から前輪の上に倒れこんでしまった。身体の3ヶ所くらいに激痛。
特に膝にクッキリとスポークの跡がついている。よろめきながら自転車を持ち上げると、あれ?前輪がひしゃげているではないか!

こうなっては車輪自体が引っかかって回転しない。「終了〜!」という声が脳内に何度も響き渡った。もう無理なのだ。軽井沢自転車生活は一週間目にして終わり。明日からどうすりゃいいんだ。あと2週間も滞在するっていうのに。自転車は東京から一緒に来た分身のような存在に感じていた。

輪太郎がすぐさま駆けつけて、前輪を外してくれる。
我々は落ち着いて対応できるところに移動した。
ここで輪太郎は師匠としてどういう行動を取るのか、私はあきらめの境地に達していたから、意外にも冷静に彼を見ていた。
輪太郎は、ゆがんだ車輪を足で慎重に踏んで、なるべく元の状態に戻そうとしてくれた。

しかし、これで完全に戻らないのは誰の目にも明らかなのだ。誰の目というか、もう一人の目は舞ちゃんだが、彼女は縁石に腰掛けたまま我々をジッと見守っている。

「今日東京に帰るから、ウチにあるタイヤを宅急便で送るよ。とりあえず、歪みを直して前輪がひっかからないようにしよう」と輪太郎は踏んづけながら言う。
軽井沢駅まで引いていくしかないのか。歩いて行ったら1時間以上もかかるだろう。レンタル自転車屋は何軒もあったけど、スポーツ自転車を扱っている店ってあったけかなぁ。
だんだん、私の膝は血が滲んできていた(翌日には、熟成が進んだ生ハムの表面みたいなアザが広がっていた)。

しかし、駅まで行かなくても、どこかに自転車屋があるかもしれないぞと思い、私はスマホで検索してみた。
そしたら、なんと50メートル先に自転車屋があった!
しかも、めちゃめちゃマニアックな自転車屋だ。

今までも自分は運がいいと思ったことはあったが、この日は私史上2番目に運がいいと思った。1番目は子供のときに港に落ちて溺れて死ぬ寸前の時に、近くで釣りをしていた人に発見されて救出されたことだ。今回はそれにつぐ。まさに自転車乗り的命拾い。「五月野自転車」さん、ありがとうございます!


お店のInstagramの写真から。すごく面白い自転車が並んでいた。ハンドルが2本ついてる!(笑)。

無事前輪を交換し、そして何事もなかったように、我々はサイクリングを続けた。
暑い日であったが、木陰の中を走ると爽やかな風に包まれる。
舞ちゃんが一言「あ〜面白かった」と言って私を追い抜いて行った。

2020.9.1

軽井沢の魑魅魍魎

8月11日に更新をして以来、2週連続でブログの更新をサボってしまった。
その間はずっと軽井沢の個展期間だった。ブログというのも気持ちにヒマがないとなかなか更新できないものなんだなと思った。軽井沢でそんなに気忙しいことがあったのかというと、何もない。
朝7時半になると、泊めていただいている離れから母屋に行って、朝ごはんを食べ、夜はまた7時半くらいには夕食と酒が用意されている。至れり尽くせりである。もちろん気候は爽やかな軽井沢。そんな生活を20日間も得られた。

おかしい。どう考えてもブログの更新をするくらいなんのことはないじゃないか。やはり非日常だからだろうか。そういえば、いつもはひっきりなしに見ているスマホもあまり覗かなくなった。終わってみれば、あっという間の20日間だった。お世話になったTさん、タジケン他、軽井沢の友人に感謝でございます。
また、心配していた絵の売れ行きだが、案に相違して9割方は売れた。これも財布の紐を緩めていただいた皆さまのおかげでございます。今週は展示した絵を振り返って終わりたいと思います。

『Zombie Marathon』
ゾンビのマラソンは42.459(死に地獄)キロ走る。
ゾンビマラソンにエントリーすると不吉な数字のゼッケンが配られる。
沿道で見ていると、給水がわりに噛みつかれるのでご用心。

『タコ』
暑っつ!暑っつ!あ〜暑っつ!
標高1000メートル近い軽井沢もお盆の週は暑かった。軽井沢がこんなに暑いんだから、日本全国茹で上がってたでしょうね。

『かっぱ』
涼やかに。キュウリでも食べながら。

『ガイコツ』
冷たいものを食べ過ぎるとお腹を壊すよ、ガイコツさん。京都の酬恩庵一休寺で見ることができるでしょう。

『くもりなきひとつの月をもちなからうき世のやみにまよひぬるかな』
「一休骸骨」にある道歌です。
金をふんだんに使った高級感と無常感あふれる作品です。

『タコとの遭遇』
今回の個展のために描き下ろした絵の中でもっともお気に入りのシュルレアル・タコ絵画。
「ねぇ、自分で刀ぬけるよね?縄切ったら?」と、タコが言ってるかどうか知らないが、描いてる時には気がつかなかった。
上のガイコツとともに大阪の茨木市にある「STOMPSKUNK」というバーに飾ってあるかもしれません。

『Dancing Bon Festival』
お盆で踊るのは踊り念仏からかな?
この作品は気に入っていたので売らないつもりでしたが、ちゃんと表装して、青山ベルコモンズ跡の商業施設に出来る、蕎麦と信州の素材を使う石窯料理や日本酒を提供する「川上庵 東京」の壁にかかるらしいぜ。かかったら蕎麦を食べに行こう!

『無常画』
諸行無常でございます。
絶対売れないと思っていたが、案の定売れなかった。でも、個展のテーマを考えたらこういうのも描いておかねばならないと思いました。

『河太郎』
大好物をひとりじめ。

『日日是好日』『無縄自縛』
どちらも禅語から。

『お菊とお岩の井戸端会議』
結局女が勝つのさ。

『百鬼夜行〜すべてはスマホに中に〜』
使命を終わらさせれたメディアたちが付喪神(つくもがみ)になって行進します。
絵巻の百鬼夜行では最後、朝日が昇ってみんな退散する。この百鬼夜行ではスマホの光に溶けていく…トンチと風刺の効いた作品です!

『Villa Monster』
ラーメンを食べに出ている間に、飛び込みで来られたご夫婦がお買い上げくださったと連絡が。なんと洗練されたご趣味をお持ちのご夫婦であろうか。さすが軽井沢の別荘族。

『地獄太夫』
ぼくが在廊していない時に、全身にタトゥーを入れた若者が「この絵、写真に撮っていいっすか?」とパシャパシャ何枚も撮っていったという。そう、そんな紳士淑女のためにこの絵は描きました。

『おツネとポン太』
実はこれだいぶ前に描いた絵なんですが、狐と狸が化けてるってことにして今回出品しました…どうでしょうか。

『三遊亭圓朝の肖像』
近代落語の祖、三遊亭圓朝の肖像画。『牡丹燈籠』『真景累ヶ淵』『怪談乳房榎』の作者であるが、歌川国芳の弟子でもあった。

『異変』
以前、百人一首をテーマにした展覧会で慈円の「おほけなくうき世の民におほふかな わがたつ杣(そま)に墨染の袖」という歌を絵画化した作品なんですが、タイトル変えて出品してしまいました。すみません。

『折りたたみ色紙』各種
この他に写真を撮り忘れたのが2、3点あったはず。












『心中』
許されない愛を成就させるために死を選んだふたり。この世のすべてはうつろいゆく。愛もまたそうです。しかし生の世界を離れれば、愛は永遠…になるのかもしれません。
最終日、閉廊まであと15分という時に、これから結婚予定のあるカップルがご来場。この絵をお買い上げ下さいました。しかも親御さんにこの絵を持って挨拶に行くという。なんと洗練されたご趣味をお持ちの2人なのだろう。末長くお幸せに♡
こういうことが起きるので個展はおもしろい。

というわけで伊野孝行個展「恐怖の別荘地」in軽井沢は8月7日〜25日。旧軽井沢ローターリーにある酢重正之商店の2階で開催されました。多謝!