新・伊野孝行のブログ

2019.12.10

ヤマトタケルのご利益は何か?

身近にあるけどよくわからないもの、それが神社。

我が故郷、三重県が自慢できる数少ないものの一つに伊勢神宮がある。今年のお正月にお伊勢参りに行ったのだが、なんと実質初めての参拝だった。幼年時代に行っているらしいが、全く記憶にはない。
旧ブログに参拝のレポートも書いた。

おかげ横丁は前に進むのも困難だった。

ブログ〈2019年正月、はじめての?伊勢参り〉

故郷を離れてはや30年。年に一度は必ず帰ってるが、その間、お参りしようなど頭にもなかったな。
2012年は古事記編纂1300年記念の年で、イラスト仕事で神話の絵をよく描いた。その後も時々神話の絵を頼まれることがあった。しかし特に自分と神社の距離は縮まらなかった。ここの神社にお参りすればこういうご利益があるとか、そう言われてもさ、ああ、そうですかってくらいで全然納得できないし。ついでに言えばお寺もそう。
昨年放送された神仏習合をテーマにした「歴史秘話ヒストリア」ではアニメを担当した。描いたのは神話の絵ではなく、奈良時代に神道が仏教に接近してきて、だんだんゴチャマゼになっていく様を表す再現ドラマの代わりだった。
この番組をやったことがきっかけで、神社はやや身近になった。これもまたブログに書いた。

古墳時代末期(5世紀〜6世紀前半)の祭祀の様子。

ブログ〈ヒストリアだよ神仏習合!〉

仏教伝来は日本書紀によれば552年。欽明天皇が百済からの使節に謁見。この当時は天皇という呼び名ではなく大王(おおきみ)。

ブログ〈神仏習合の時代考証秘話その1〉
ブログ〈神仏習合の時代考証秘話その2〉

ただし相変わらず神道も神社もよくわからない。
よくわからないっていうか、わかったところで真理に到達できるものではないっていうかさ。神仏習合とはなんだったか。神と仏がテキトーな感じで「いい加減にゴチャマゼになっている」その「いい加減さ」こそが日本人の知恵ではなかったか。日本人の本質ではないか。放送から時間が経ってしまったので、細かいところはだいぶ忘れたが、そんな感じで「わかった」つもりにはなってるんだけど。
神仏習合を経た神道は明治以降、国策として国家神道になる。そこに原理主義的に純粋なものを求めてもしょうがないんだよ、三原じゅん子さん。神武天皇は実在の人物じゃないからなっ。純粋なものを求める姿勢はあぶないよ。オレなんか「いい加減にゴチャマゼしてた」って聞いて逆に信用できそうな気がしたね。植木等を信仰しているので。ウエキヒトシノミコトを。

ちょうど一年前、900年休まず続く奈良の「春日若宮おん祭」に行った。いにしえの奈良の都のおん祭はこうであったか、人の神とのおつきあいはこうであったかと、そんな体験をした。祭の起源のようなものもちょっとわかった。これもまたブログに書きました。

春日若宮おん祭のお旅所。芸能が奉納される。写真は神楽の様子。芸能奉納はぶっ続けで8時間くらいある。
ブログ〈春日若宮おん祭での三角関係カミ体験〉

そんなわけで、普段から神や仏のことをぼんやり考えていると、神や仏関係の仕事がススっと来たりする。去年に引き続き「趣味どきっ!神社めぐり」が放送されています。Eテレで火曜午後9時30分~ 午後9時55分。今日は第2回目です。再放送もあり。神社への入り口はこの番組からどうぞ。

先週の放送分のアニメからヤマトタケルの神話をお見せしてサヨナラしましょう。
建部大社の御祭神はヤマトタケルノミコト。神社のご利益は、お祀りされている神様の得意分野なんだそうだ。ヤマトタケルの得意分野はズバリ「災難・災厄よけ」だ。キャプションは番組のナレーションを勝手に私が脚色してますのであしからず。

昔々、端麗な顔立ちで、とても力が強いヤマトタケルという少年がいました。力が強いのででっかい石も軽々と。

力を持ちすぎると警戒される。誰に?親父に!というわけで、父は彼を自分から遠ざけるために、九州の反乱者を倒しにいけと命じました。

ヤマトタケルは少女に変装して、宴会にもぐりこみ反乱者を討ち取ります!美少年なので女装してもバレないのです。

「お父さん戻りました」しかし暖かく迎えてくれる父ではありませんでした。「今度は東の反乱者を倒しに行け」と命じられます。「父は私に死んでしまえと言っているのか……」夕日に照らされたタケルの頬を熱い涙が流れます。そして東に旅立つのです。

駿河国に来たヤマトタケル。敵に沼地に誘い込まれ周りに火をつけられます。

迫り来る火の中、剣で草を薙ぎ払い、刈り取った草に火をつけます。すると火は外に燃え広がり、敵を焼き払って勝利します。

このヤマトタケルを救った剣は「草薙の剣」と呼ばれるようになるのです。三種の神器の一つとして、新天皇にも継承されています。……ホンマでっか!?

各地に遠征したヤマトタケルは日本をひとつにまとめることができました。

尾張国に戻ったヤマトタケル。「ねぇねぇタケルさん、伊吹山に悪い神がいるんだよ〜」

「よしっ!オレが退治してやる」と勇んで出かけたヤマトタケル。ちょっとちょっと何かお忘れじゃありませんか?草薙の剣を!

険しい山の途中、巨大な白いイノシシに出くわします。「こやつ、山の神の使いだな」ヤマトタケルはイノシシを威嚇しておきました。

すると突然、激しい雨と雹が降って来ました!行く手を阻まれたヤマトタケル。

白いイノシシは神の使いではなく、神そのものだったんですね〜。神の怒りに触れてしまったわけです。

雹に打たれて衰弱したヤマトタケル、故郷の大和を目指しますが、ついに伊勢国で力尽きたということです。享年30歳。

ヤマトタケルはキース・へリングや沖雅也より1歳若く、ブルース・リーより2歳若く、アンディ・フグより5歳若く亡くなっています。
あ、そうそう、なんでヤマトタケルに「災難・災厄よけ」のご利益があるかっていうと、父(大王)に従わない反乱者、つまり、降りかかる災難を各地をまわって取り除いた。そんで草薙の剣でもって災難から逃れたから、なんだって。

2019.12.3

月刊「シナリオ」リニューアル!

月刊「シナリオ」がリニューアル!

光栄なことにリニューアル号の表紙を担当しました。さらに、中身の方でも「ぼくの映画館は家から5分」という絵入りエッセイも連載させていただくという、コレまた、専門誌になんでオマエが連載もてるねん?と自分でも不思議に思うようなことが起こっております。
月刊「シナリオ」の創刊は1946年(昭和21年)、「極東国際軍事裁判」が開かれた年ですよ。闇市をバックに「リンゴの唄」が流れている……映像でしか見たことありませんが、そんな昔からある雑誌なんですね。日本シナリオ作家協会の発行です。

「シナリオ」1月号は12月3日発売!

表紙のアゴの長いおじさんは山中貞雄監督です。
おじさんといっても28歳で亡くなっているんですけどね。「シナリオ」が創刊された時にはすでにこの世にいませんでした。現存する3本の映画『丹下左膳余話 百萬両の壺』『河内山宗俊』『人情紙風船』のどれもが大傑作です。どんだけ天才だったか。
でも、『人情紙風船』が完成した時に赤紙が来て戦地へ。赤痢にかかって中国で戦病死。人の命はみな尊いけれど、なぜ戦争なんかで死ななくっちゃいけなかったのか、惜しい、惜しい!監督であります。
リニューアル号では山中貞雄の発掘シナリオ『恋と十手と巾着切』が載っています。必読!

『恋と十手と巾着切』は無声映画です。無声映画の脚本はどう違うのでしょう。興味ありませんか?

2000年、千石にあった「三百人劇場」で『丹下左膳余話 百萬両の壺』を観た。
ぼくがはじめて観た山中貞雄映画。たぶんニュープリント上映だったと思う。観客のテンションも高くて、笑うときは波に持ち上げられるように自然に声が出てしまった。上映が終わるとワッと拍手!熱気ムンムン。面白い!面白い!っていうかこれは新しい映画じゃん。
ぼくは時代物を描くのを一応売り物にしているんですけど、マニアックに時代劇を見てるわけでは全然ないんです。でもぼくを時代物へと誘った作品が3本ありまして、そのうちの一本が間違いなく『丹下左膳余話 百萬両の壺』です。他の2本は市川崑『股旅』とテレビドラマの山崎努主演の『雲霧仁左衛門』。

それは置いといて、老舗雑誌のリニューアル号だから、気合を入れて4パターンの絵を描きました。
ラフなしのいきなり本番。ちなみに表紙と自分の連載以外にもいくつか絵を描いていますが、みんなラフは出していません。ラフはいらないって言ってくれるから。申し遅れましたが、リニューアル号からデザイナーは日下潤一さん。日下さんは表紙のために描いた4点の絵の中から選んでデザインしたわけじゃなくて、4点全部に合わせてデザインしてくれた。なかなかないですよ、そんなこと。

似顔絵的にはこっちの方が似てると思うアナザーバージョン。日下さんが絵に合わせて全部違うデザインをしてくれたうちの1つ。

表紙用の絵のアナザーバージョン。

専門誌の中で唯一の非専門家が書いてる連載「ぼくの映画館は家から5分」

ぼくの絵と文の連載「ぼくの映画館は家から5分」は、編集長から「今までのシナリオにはなかったノリ」というお言葉をいただきましたが、そりゃそうするしかないっていうか、シナリオの専門誌で、素人のオレが出来ることと言ったら、違うノリでやるしかないっすよ……。
絵は映画をがっつり描いてますが(今月は『魂のゆくえ』)文章の内容は歩いて家から5分の下高井戸シネマ界隈のどうでもいい話だけでやっていこうと思っています。

他に「3人3色diary」「それをいっちゃあ、おしまいよ」にもカットを描いています。

「3人3色diary」今月は伴一彦さん。ロシアの劇団が全編手話でやった『三人姉妹』を観劇した、というところから手話の絵。

戸田学さんの「それをいっちゃあ、おしまいよ」今月は『夫婦善哉』です。

表紙は毎号ぼくが担当するわけではなくて、いろんな人が描くと思います。写真の時もあるのかな?また表紙でお会いしたいものです。

追記

本日12月3日、午後9時30分~午後9時55分
Eテレで「趣味どきっ! 神社めぐり・新」(全8回)が放送されます。去年に引き続きアニメパートの絵を描いてます。こっちもヨロシクね!

ヤマトタケルが草薙の剣で火を払う場面。
「趣味どきっ! 神社めぐり」のホームページはこちらです!

2019.11.26

百人一首の現代“画”訳

第99回オール讀物新人賞受賞作、由原かのんさんの「首侍」の挿絵を描きました。たいへん面白く読みました。本格的であり、かわいらしさもあって、自然に選ばせたタッチがこれであります。


さ、今日は忙しいので新しい報告は以上で終わり。

ただいま、人形町vison’sでは「百人一首って」展開催中です。百枚の絵になった百人一首、まだ見ていない人がいるだなんて、なんと嘆かわしいことでしょう。

誰しもが一度は音に聞き、札を見て、カルタをとったことのある百人一首。もっともポピュラーな古典と言えましょう。
「え〜、百人一首って…暗唱できる歌もないし、歌の意味もわからないよ」なんて気にすることはありません。私も、自分の担当したもの以外はほぼあやしいですから。暗唱できる歌なんて5つもないな。
でも、そんなこと一切鑑賞の妨げになりません。歌人、天野慶さんの現代語訳もあるし、それぞれ描いた人のコメントもついている。何よりご覧になれば、歌も絵もスーッと自分の中に入ってくることにお気づきになるでしょう。知らぬうちに血と骨に混じっているもの、それが古典というものです。
古典である百人一首に、新しい趣向を盛る。百人一首の「現代画訳」を見逃すなんて、罪ぞつもりて淵となりぬる、です。
脅しているわけではありません。正直、今までの人形町vison’sシリーズの中でも一番うまくいった企画、展覧会になっているのではないでしょうか。次はうまくいくとは限りませんので、その意味でもお見逃しなく。















「百人一首って」展はこちらで開催中!