新・伊野孝行のブログ

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2021.3.9

シナリオハンティング

今年からブログは不定期更新にしたのだけど、まさかこんなに更新しなくなるとは思わなかった。前回の更新が1月7日で、あれから2ヶ月も経っている。
「毎週更新」は自分のアイデンティティのひとつくらいに勘定していたが、やめてもなんともない。むしろ、煩わしいことが減ってラッキー。
つくづく無理やりやってたんだなと思う(最初は無理やりなんかじゃない。ブログを更新するくらいしかやることがなかった)。

無理やり更新するというのは、書くことがないのに書いている状態だ。「言いたいことがあるから表現する」のが創作の出発点で、好きだから、楽しいから、も同様。思いと行動の間に疑問を挟む余地がない。
「言いたいことがないけど言う」「好きでもないのに好きになる」「楽しくないけど楽しむ」は疑問を挟む余地だらけだ。夢中な時は忘我になれるが、常にソッポを向いてしまう自分がいる。こいつを制しなければいけない。

いやいやながらやっていて、うっかりチョロっと楽しくなってしまうこともあるだろう?それは人生を楽しむ上でもとてもいいことだ。

……などとつい行稼ぎ芸に精を出してしまった。

ブログは更新していないが、SNSには書き込んでいる。でもSNSは流れ去っていくので、やはりブログにまとめておこう。となるともうブログはSNSのまとめ記事なのだろうか。堕ちたもんだ。

月刊「シナリオ」の表紙を描いた。
今月の特集はシナリオハンティング (シナリオを書くために取材に行くこと)。シナリオライターと土地の風景の両方を主役にしたいと思い、こんな絵に。絵のモデルは脚本家の和田清人さん。深夜ドラマ『日本ボロ宿紀行』のシナハンで行った銚子市の外川漁港。
ふだんあまり風景をメインに描かない。どうしても人物をメインで描いてしまう。こういう絵になったのもテーマ(これもまた無理にでも受け止めなきゃいけないモノである)のおかげだ。

縦構図なので風景が描きにくいが、逆に縦であることを利用しよう。坂道があって、水平線が見え隠れする景色というのは、人間が理屈抜きに共感できるような気がしているがどうだろう。

月刊「シナリオ」では作文も連載している。「ぼくの映画館は家から5分」は下高井戸シネマにのみ的を絞ったエッセイ。『エクストリーム・ジョブ』を取り上げながら下高井戸に勃発した唐揚げ屋戦争について書いています。おんどれ!タピオカ屋戦争が終わったら、唐揚げ屋戦争なんじゃ〜!

去年の9月に引っ越しをした。この連載のことをうっかり忘れていたが、引っ越しても映画館まで歩いて5分だったという奇跡的な話。

これは『mid90s ミッドナインティーズ』を観に行った時に出くわした実話です。歳をとると、感動もすぐに忘れるが、彼らの中にはまだ残っているだろう。

SNSにアップした時『mid90s ミッドナインティーズ』の反応が多かった。しかし、自分としては『エクストリーム・ジョブ』の方が気に入っている。しかし、この連載も、やりたいやりたい!書きたい書きたい!でやっているわけではなくて、無理やりである。何せ下高井戸界隈限定なので、いつもネタに困っている。でも逆にテーマの狭さに助けられていることの方が多いかもしれない。

こんな連載、誰が読んでいるんだろうかと思っていたら、「小説新潮」の編集者が読んでいてくださったようで、読み切りエッセイの依頼があった。雑誌で掲載された一月後にウェブの「デイリー新潮」に転載され、同日Yahooニュースにも転載されていた。↓

イラストレーター「伊野孝行」が20年モノの中古自転車と“相棒”になれた理由

一時的に小木とまっちゃんに挟まれる。よりによってなぜこの記事がピックアップされたのだろう。よほどニュースがなかったのか。

実は、原稿の元になっているのはブログの記事(2020.5.12)なので、既読感のある方もいらっしゃるかもしれない。いわば、ブログがYahooニュースにもなったと言えなくもない。
やっぱりブログは無理やりにでも続けた方がいいのだろうか。

2021.1.7

今年の抱負をモ〜牛あげる

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いモ〜牛あげます。

今年からこのブログは不定期更新になりましたが、せめて松が明ける前にご挨拶を…と思い、あせってキーボードを叩いているところです。
え〜、今年の抱負といきましょうか。
今年も去年もその前も、私の抱負は「有名になりたい」これ一本でございます。本人の顔が知られるのはどうでもいいんですけど、絵がね。絵があまねく知れ渡って欲しいんです。

去年の9月でしたか。
西荻窪で用事があったのですが、その用事まで時間を少し潰さなければいけなかったので、駅からほど近いところにあるイラストレーターの犬ん子さんの仕事場に遊びに行ったんです。
旦那さんのチャンキー松本さんもちょうどいました。そこで、ダベっているときに、「まだまだ無名だ、俺なんか」と言う話をしてたのです(いつもそんな話をしてるわけではないが……)。
「有名になったらなったで大変やで〜」
「いや、せめて犬ちゃんくらいになったら満足するよ」
「でも、伊野くんのその素直な夢がいいと思うよ、マジで」
などとたわいのない話をしていたつもり……だったのですが、みなさんご存知の通り、この夫婦、朝ドラ『おちょやん』のオープニング動画を担当してまんねん。
でも、この時はまだ情報解禁前で、オレは全然知らなかったんだけどね。
つまり、コテコテ夫婦漫才絵師は、数ヶ月後には莫大な有名ポイントを稼ぐことが確定していながら、僕の相手をしていたわけだ。

罪深い!

俺、恥ずかしい!

「あの時、伊野くんの後ろに『おちょやん』の台本が山積みになってて、ハラハラして話半分で聞いてたん思い出したわ」
とのちに犬ん子さんは言っていた。
全然気づいてませんでしたー!

というわけで、今年こそ俺は頑張る!もう50歳になってしまうが!

丑年ということで、牛を描く機会がいくつかあった。
カタログハウスの『益軒さん』の表紙。表と裏でふたコマ漫画みたいになっている。


淡交社の『なごみ』で新連載はじまりました。
「よむ十牛図」

細川晋輔和尚の解説による新・十牛図。
十牛図とは真の自己を牛になぞらえ、悟りにいたる十の段階を絵に表したもの。
丑年の今年、あなたも、牛を探しに出かけよう!

2020.9.29

引っ越しても、歩いて5分

今日はまじめにブログを更新しよう。
実は今、引越しの真っ最中であります。これがちょっと特殊な引越しで、となりの部屋に引っ越します。
ウチはメゾネット住宅というのか、一軒家を二つに仕切って、それぞれに玄関がついている(もともとは大家さんと息子夫婦が二世帯で住むように作られた建物)。先月、となりに住んでいた転勤家族が地元に戻って行き、空いたのでそっちに引っ越すことにしたのです。
となりの方がかなり広い。
部屋番号というものはなく、同じ敷地に建つ一軒家なので当然引っ越しても住所が同じ。これも気に入りました。転居のお知らせをする必要がないからです。
でもガス、水道、電気、電話会社には連絡しなくてはなりません。最近はネットから入力できる。でも、同じ住所を入力するとエラーになるので、直接電話して説明しました。それでも伝達ミスがあったのか、ガスの開栓に立会人が来なかった。仕方がないので、数日間お風呂だけは旧我が家で入りました。
部屋の広さや間取りは違っても、基本的に同じ家なので雰囲気はあまり変わらないし、窓から見える景色もちょっとズレるだけ。
あたりまえですが最寄駅も変わりません。
つまり、引っ越しても下高井戸シネマまで歩いて5分なのです。
というわけで、月刊「シナリオ」で連載している『ぼくの映画館は家から5分』の最近分を紹介しよう。
もし、他の街に引っ越していたら、この連載を終わらせるか、『ぼくの映画館は家から電車で40分』とかにタイトルを変更しなくてはいけませんでした。電車で40分もかかったら、すでにぼくの映画館ではないね……。






月刊「シナリオ」はこの連載だけでなく、中身のイラストも全部一人で描いてます。たまに表紙まで描くこともあります。まったくもって大車輪の大活躍である。しかも、ラフもなしに好きに描いて渡している。これで原稿料がよかったらなぁ……なんてことは1ミリも思ってません。『話の特集』の無給のアートディレクター兼イラストレーター、和田誠さん気分を少しでも味わえるのだから。
8月号の表紙に描いた女性はイランの脚本家、ナグメ・サミニさんです。一般の人は誰も知らんでしょう。私も知りませんでした。凛とした美人で超知的な方。イランって抜けるような青空のイメージがあるんですけど、いつか行ってみたいな。






さて、まだ引越し作業が残っています。
旧我が家には12年も住んだので、移ることに若干の寂しさもあったのですが、家具やガラクタが部屋からなくなると、ただの箱という感じになって、未練はさっぱりありません。

2020.6.16

SNS通りとすずらん通り

今はもうブログを書く人はめっきり減ってしまったようだ。
人々はSNSという大通りでウィンドウショッピングを楽しみ、決して金は使おうとしない。それどころか、店の中にさえ入ってこない。SNSに「ブログ更新しました」とリンクを貼ってもなかなかブログまで見にこないのである。
軽快なウインドウショッピングの歩みを止めてしまうことにもなる。これはわからないでもない。ぼくもサーッと画面をスクロールしながらSNSを眺めているときに、リンク先に飛ぶのは何だかかったるいときがある。
ちょっとのぞいてみようかな、とリンク先のブログを覗いても、こんな風にブツクサ言ってる文章を読ませられるんだったら、たまったもんじゃない。

やはり時代遅れなのか。
しかし、俺はブログを絶対にやめない。週に一度、無理矢理にでも文章を書くという修行だから。
修行は他の人があまりやらないことの方が意味があるのである。みんながやってるような修行をしても、全体の平均値をあげることに貢献するだけだ。
イラストレーターという、絵を描いてるだけでもいい人種の私が、ブログを書く意味はこれからますます高まるだろう。わっははは!

……書くべきネタがないときに、以上のような内容の文章を定期的に書いてしまう。
加えて年齢的に循環期に入ってきているので、会話だけでなく日常の何もかもが、気をつけないとループしがちである。しかしループはグルーブを生む。人生のリズムにグルーブが出てくるのはこれからだ。自分にしか出せないグルーブを打ち出しつつ、なるべく飽きられないようにして、新しい歌を唄いたい。

はい、字数稼ぎ終わり。いきなりとってつけたようなお仕事報告。
表1よりも表4の方が賑やかな、珍しい雑誌カタログハウスの「益軒さん」7月号はこんな感じ。

話変わります。
ブログだけやってるわけにもいかず、SNSもやってますが、先週、神保町すずらん通りの「スヰートポーヅ」閉店を知り、twitterとfacebookにこんなことを書いた。

〈神保町すずらん通りの「スヰートポーヅ」閉店(涙)。
19年に及ぶ神保町バイト生活の第1食目がこの店の餃子ライスだった。
夕飯時で店は混んでいて料理が出てくるまでに時間がかかった。自分の休憩時間は刻々と終わりが近づいてくる。
あと5分で休憩時間が終わる時、やっと出てきてた。皮が閉じていない不思議な餃子だった。餡を皮でくるっと巻いてあるだけ。時間がないのでゆっくり味わうこともせず、死に物狂いで食べた。でも、美味しかった。
「スヰートポーヅ」とその向かいにある「キッチン南海」はすずらん通りでもっともよく通った店だ。その二つがなくなるなんて。「キッチン南海」は確実に千回以上行っている。
「スヰートポーヅ」の並びにあった「書肆アクセス」は地方小出版を専門に扱う書店で、一般書店には並ばない本が揃っていた。そういう本はどれも心意気があって、たたずまいがかわいいのだ。めったに買いませんでしたが…。
ここの店員さんが書いた『神保町「書肆アクセス」半畳日記』はぼくがいた頃の神保町の街の記録にもなっていて個人的にとてもおもしろい。
「書肆アクセス」はとっくにない。靖国通りの向こう側のとんかつ「いもや」もとっくにない。ちょっと離れたお茶の水、マロニエ通りの文化学院も気がついたらなかった。
『ぼくの神保町物語』は自分が生きた街を記録しておこうと思って何年か前に書いた描いたものです。
自分と街のエッセイ『ぼくの神保町物語』

なんだかSNSに書いたことをブログに載せるのも、シャクだな〜。
おわり。