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書籍「ゴッホ」 書籍「こっけい以外に人間の美しさはない」 自作マンガ「ひみつ」

「ゴッホ」は私のはじめての本です。ここに全部掲載していますが、手に取って見てみたいという方はメールでお問い合わせ下さい。1000円(送料別)で売っています。デザインは日下潤一さんです。綺麗な本です。どうぞよろしくお願いいたします。

ゴッホ表紙

ゴッホの絵を最初に見た記憶。食卓の壁に新聞記事が貼ってあった。「この絵、えーなー。」と言うと「その人、自殺して死んだんやにー。」と母親は答えた。

ゴッホの笑顔を想像してみる。ゴッホは歯が悪かった、と知ってからそれは、歯抜けの笑顔になった。

ゴッホの「手紙」と「絵」の印象はそっくりだった。小林秀雄は言っている。「手紙の終わるところから絵が始まり、絵の終わるところから手紙が始まる。」

イラストレーション。「ゴーギャンさんへ」「ベルナール君へ」握手をしようと手を差しのべるゴッホ。「君に握手をおくる」ゴッホの手紙はいつもこの言葉でしめくくられる

イラストレーション。「テオへ!」「みんなにもよろしく」と握手をしようと手を差しのべるゴッホ。

ロバート・アルトマンの映画では、当時の画商、その店の様子、絵を買う人が再現されていた。こんなところで、ゴッホは無視されていたのか。僕も身につまされる。

「画家達の家の計画」、ゴーギャン以外は来ても来なくてもどっちでもいい。ゴーギャンが来てくれて本当にうれしかった。まさにゴーギャンと足して二で割ったような絵を描いている。

花瓶からあふれ、落ちても起き上がってくる、ひまわり。ゴッホが描いたのは、はみだした命だ。

その時その時の自分を確かめるように、自画像を描いている、僕はその中でも「パイプをくわえた包帯の自画像」が好きだ。生き急いだゴッホが、ちょっと止まったみたい。素の表情に接した気がする。

タンギー爺さんは、まるで大仏様のように鎮座している。ガシェ博士は可憐な花を前にして、苦い顔でポーズしている。それはゴッホのユーモアだ。

ロウソクを帽子に結わえ付けて夜の景色を描いたというエピソード。絶対に見て描くんだといういじらしい努力と、こっけいな姿。僕の愛すべきゴッホがここにいる。

「僕は人生においても絵の場合でも神なんかなくったってやっていける」と語る一方、一番偉大な芸術家はキリストだ!とも言っている。でも自分はあくまで眼に見えるものを描きたいので、宗教画は描かない。ゴーギャンやベルナールがキリストを描いているのを見ても、わざとらしくて嫌だと批判している。ところが、ゴッホの心の慰めでもあった「模写」においては、好んで宗教画を描いている。

レンブラントの「ラザロの復活」を模写したのがある。ラザロをゴッホに変えて模写してみました。びっくりしているのは弟テオとガシェ博士です。

ゴッホの描き方を真似してみたことがある。描いているうちに、不思議なことに気がついた。絵の具の乾かない短時間で、なぜあのようなクッキリとした厚塗ができたのだろう。下の色が混じってしまって、僕のは失敗だった。

「はね橋」の絵を見ていると、すごく幸せな気分になる。アルルはゴッホにとって天国だったんだ。

本を作っているうちに、やっぱり本物が見たくなりました。それも一枚や二枚じゃなくて、ゴッホの絵に囲まれるくらいに。オランダの「ゴッホ美術館」にはどうしても行っておかなくてはいけません。旅行嫌いのはずなのに、この心境の変化には、自分でも驚いています。画集とにらめっこしていても、なかなか書けずに悩みました。本物の前に立ったとき、何を思うのでしょうか。毎日ゴッホのことを考え、ゴッホの格好までしたのですから、感激することは確実です。本を作ることで、ゴッホを見に行く準備が、いつのまにか出来ていたのです。八月二十三日 伊野孝行

著者近影 撮影……日下潤一 二〇〇六年八月二十三日

伊野孝行 いの・たかゆき イラストレーター。1971年三重県津市生まれ。東洋大学卒業。セツ・モード・セミナー研究科卒業。 ゴッホ Vincent van Gogh 1853-1890 伊野孝行{絵と文} 日下潤一{ブックデザイン} 飯塚隆士{タイトル印字} 西山有布(BGX){本文組版} アポロ社{印刷・製本} {本文サイズ}二〇〇ミリ×一四八ミリ {使用書体}遊築初号かな(仮名) 遊築見出し明朝体(漢字) Goudy Bold(欧文) Tribute Roman(ノンブル・奥付・クレジット) 遊明朝体std M <本文>一四級 字送り・一四歯 行送り・二八歯 <扉>二〇級 字間ツメ 一四級・一〇級(欧文) <ノンブル>一二級 <奥付>一〇級・八級 {用紙}NTラシャ・黄色<表紙>NTラシャ・黒<見返し> ヴァンヌーボV・ホワイト<本文> 二〇〇六年九月十五日発行 書肆 絵と本 限定百部

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