新・伊野孝行のブログ

タグ:挿絵

2020.6.23

夏のリモートワーク計画

今までノートパソコンを持っていなくて、デスクトップのiMac一台でやってきた。
iMacの調子が悪くなると、ものすごい不安に襲われる。そして家以外では仕事ができない。他の友達はどうしているのかと聞いてみたら、みんなMacBookProだとかMacBookAirだとかを別に持っていて、しかもiPadProまで持っているという。
みんなどんだけ、Appleに金を払っているんだ。
僕が生涯で一番金を払うのは酒造メーカーだと決まっている。すでにいくら払ってきたことか。
今、ここでApple製品を買ったところで、その順位は変わらないだろうから、iPadProを買おうと思った。(どんな理由や!)

8月に軽井沢でちょっとした個展があるので、向こうでしばらく避暑をしたい。そのために購入したっていうのもある。もう、6月も終わり。絵をどんどん描かなければいけないのに、iPadをいじってばかり…。使い方をマスターしておかねばいけないし。
今朝も6時くらいに目が覚めて、枕元のiPadを開いてみた。Procreateというお絵かきアプリをダウンロードし、寝床の中で描いてみる。
西洋人の開発したアプリだからか、油絵のブラシが、本物ぽくていい感じだ。Procreateに限らず、他のお絵かきアプリも、毛筆(いわゆる書道とか日本画とかに使うような)がいまいちだ。自分の手で描くニュアンスの50分の1くらいしか描き表せない。

「光る頭の自画像」
iPadだけで描いた最初の一枚。別に自分のことが好きで描いたわけじゃないよ。絵を描く時には、描く前に何を描くかイメージしなければいけない。それが一番大切であるし、面白いし、めんどくさくもあるわけだ。寝ぼけてて何も考えたくなかったから自画像にしておいただけ。
光ってる部分はエフェクト効果。制作時間は10分くらい?最後まで寝床で仕上げた。布団を汚さないので寝たきり老人にもおすすめだろう。

朝食後、今度は今流行りのFaceAppというので遊んで、女性や老人になってみる。iPhoneでやってるので、もはやiPadは関係ない。ただ単にサボっているということ。今日はブログの更新日、それを思うと憂鬱だ。あぁ、めんどくさい。


女性化した写真はよく見ると指が溶けている。性転換と若返りのために強烈な薬を飲んだ結果か。
このアプリの成果を見るたびに、似顔絵の難しさを思う。例えば、女性になった顔と見比べてどこが大きく違うだろうか。髪の毛はおいておいても、他はそれほど変わっていないのだ。でも、どこからどう見ても女性だ。一生懸命に写真を見て似顔絵を描いてもなーんか似ない。写真をトレースして描いてもなんか違う。そんな似顔絵の難しさを、このアプリを通して考えてしまう。
くれぐれも、自分のことが好きで、こんな写真を乗せてるわけじゃないのです。ここだけの話、本当に自分のことが好きな人は自分の写真など載せません。それくらいに自己愛は屈折するものなのです。
このアプリ、3日経ったら自動的に課金されるらしいので、もう飽きたし、さっさと削除してしまった。


最近のお仕事。
「オール讀物」大島真寿美さんの短編『種』。直木賞をとった『妹背山女庭訓』のサイドストーリーでもある。
ただ筆に墨をつけて描いているのだけど、これをiPadのお絵かきアプリでやるのは難しい。可能だとしても時間は10倍くらいかかるだろう。便利の逆である。結論から言って、軽井沢には筆も絵具も持っていかなければいけないようだ。

構図はこの浮世絵が元ネタ。
今週はこんなところでよろしいでしょうか。とりあえず、更新だけは今週もしました。

2020.4.7

コロなめ日記

4月◯日
不要不急の外出はひかえるべしですが、用事があったので久しぶりに電車に乗って品川まで外出。
事をすませて運動不足解消のために目黒まで歩く。ところどころで桜が満開。
とんかつの名店「とんき」を見つけたので入ってみる。まだ5時前だったからか、ガラガラ。白木造りのカウンターに座る。店は大きいのにカウンターしかない。
カウンターの中が広い。見たことのないタイプの床板の張り方。使い込まれて角のすり減ったこれまた白木の引き出し。カウンターの中には従業員が7、8人いるが、それでも悠々として広い。カウンターからトンカツを揚げたり、キャベツを盛ったりする仕事が鑑賞できる。奥にも調理場がもう一部屋ある。お米を研いだりしてるのかもしれない。鑑賞させる仕事ではないということなのかもしれない。
しかし、カウンターの中のみなさんはヒマで手持ち無沙汰の様子。でもダレていないのが名店のたたずまい。スタッフの私語はない。自分にも経験があるが飲食店、ヒマな時は逆にしんどい。
「とんき」は池波正太郎の『食卓の情景』に出てくるお店で、のれん分けしたお店(国分寺)には行ったことがあるが、本店ははじめてだった。100%ラードで揚げたトンカツは、食べた後に、今日トンカツ食べたってことを忘れるくらい胃もたれしない。
店を出る頃には少しづつお客も入り始める。持ち帰りの注文の電話が何件かあった。
余談ですが、駅ビルにあった林家夫妻のボード。

※「とんき」は緊急事態宣言発令に伴い8日〜21日まで休業だそうです。

4月◯日
カタログハウスの雑誌『益軒さん』が届く。今年から表紙と裏表紙を描いている。お花見の絵。益軒さんが場所取りをして、みんなを呼んでいる。二コマ漫画のように裏表紙がオチになっていてる。自分の場所がなくなちゃった益軒さん。今年は桜も静かに過ごせたでしょう。




4月◯日
半月ほど前に『現代用語の基礎知識』増刊号のために、時事風刺漫画を3点描いた。出版されるまでのタイムラグを考慮しなければならない。3月上旬、話題になっていたもろもろの中で、コロナウィルスは若干の緊張感とのんきさを持ち合わせていて漫画のネタにしやすかった。コロナが浮き彫りにする政治や国民の様子など。本屋に並ぶ頃もまだ話題は続いているだろう。
ところが、コロナは予想を超えた騒動となり状況が変わってしまった。世の中は殺伐。描いた漫画のシャレが思いっきり不謹慎な感じ。というわけで、急遽、3点とも漫画を描き変えて編集部に送る。うう、コロナめ。

4月◯日
今月下旬に大阪に小説家の大島真寿美さんたちと文楽を観に行くことになっていたが、やはり中止になった。
2月に「豊竹呂太夫師匠文楽発声教室」@文藝春秋西館地下というのに参加した。お稽古の後の二次会で、呂太夫師匠に「あんた見込みあるで」とサービスで言われ、ついその気になって、覚えた一節をしばらく自宅でうなっていた。実際に少しお稽古をすると、義太夫のカッコよさと難しさが、「観てるだけ」の時とは違う次元で理解できる。
大島真寿美さんはご存知のように『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』で直木賞を受賞されているが、3・4月合併号の『オール讀物』で外伝ともいえる『水や空 妹背山婦女庭訓 波模様』を発表された。なんと今回の主人公は、私が最も愛する画家の一人、耳鳥斎(にちょうさい)なのだ。耳鳥斎は絵だけでなく義太夫にも才があったんですね。「水や空」は耳鳥斎の画集の名前。耳鳥斎が主人公の小説というのはおそらく史上初でしょう。

2019.11.26

百人一首の現代“画”訳

第99回オール讀物新人賞受賞作、由原かのんさんの「首侍」の挿絵を描きました。たいへん面白く読みました。本格的であり、かわいらしさもあって、自然に選ばせたタッチがこれであります。


さ、今日は忙しいので新しい報告は以上で終わり。

ただいま、人形町vison’sでは「百人一首って」展開催中です。百枚の絵になった百人一首、まだ見ていない人がいるだなんて、なんと嘆かわしいことでしょう。

誰しもが一度は音に聞き、札を見て、カルタをとったことのある百人一首。もっともポピュラーな古典と言えましょう。
「え〜、百人一首って…暗唱できる歌もないし、歌の意味もわからないよ」なんて気にすることはありません。私も、自分の担当したもの以外はほぼあやしいですから。暗唱できる歌なんて5つもないな。
でも、そんなこと一切鑑賞の妨げになりません。歌人、天野慶さんの現代語訳もあるし、それぞれ描いた人のコメントもついている。何よりご覧になれば、歌も絵もスーッと自分の中に入ってくることにお気づきになるでしょう。知らぬうちに血と骨に混じっているもの、それが古典というものです。
古典である百人一首に、新しい趣向を盛る。百人一首の「現代画訳」を見逃すなんて、罪ぞつもりて淵となりぬる、です。
脅しているわけではありません。正直、今までの人形町vison’sシリーズの中でも一番うまくいった企画、展覧会になっているのではないでしょうか。次はうまくいくとは限りませんので、その意味でもお見逃しなく。















「百人一首って」展はこちらで開催中!