新・伊野孝行のブログ

タグ:展覧会

2020.11.24

半芸術の志村神社

現代美術とは現代に生きる人が作った作品全てなんでものことなのですが、普通はなかなかそう言いません。「現代美術」というジャンルのことを指す場合が多いですね。
ただいま、3331Arts Chiyodaで開催中の「WAVE2020」に出品しております。この展覧会は特にジャンルもテーマもない展示で、言わば、現代に生きる人が作った作品という意味での現代美術なのかもしれません。

ワタクシなんぞはイラストレーターでげすから、何でもいいから作品出してくださいと頼まれると、逆に困ってしまいまして、さてどうしたものでしょうか。
展覧会自体にテーマがないということは鑑賞者に文脈をいっさい掴ませないということなのです。作る方は展覧会のテーマという文脈に自分のテーマを乗っけられないので、それぞれが一人相撲を取らないといけません。

一方「現代美術」というジャンルは、文脈というものをとても重要視するようです。美術史の文脈を踏まえた上で新たに何か付け加える。さらに今現在のNOWな問題を取り入れたり先取りしたりする。
自分のやってることにいかに説得力を持たせるかも腕のうちなので、現代美術家はプレゼン能力が非常に高い人が多い。
ワタクシなんぞはイラストレーターでげすから、そういう能力はあまり必要ない。絵の仕事に対して漠然と憧れを持っていたときから、現代美術作家ってどうやってなるのかサッパリ見当がつかなかったです。マンガ家はストーリーも作らなきゃいけないし、仕事自体が過酷。その点、イラストレーターは落書きの延長でなれると思ったのです。事実、落書きの延長でなれました。

「反芸術」という言葉の意味を、引用すると負けた気になるWikiからひっぱってきますと〈反芸術は芸術作品に対する定義で、伝統的な展覧会の文脈の中で展示されながら、真剣な芸術をあざ笑うかのような内容を持つ作品、また芸術というものの本質を問い直し変質させてしまうような作品のこと。さらに既存の芸術という枠組みを逸脱するような芸術思想や芸術運動のこと。〉だそうです。

今回の「WAVE2020」の一人相撲のテーマはコレにしましょう。いや「反芸術」なんてそんなツッパったこと出来やしない。せめて半分くらいは芸術という意味で「半芸術」でどうでしょう。(とうじ魔とうじさんの『半芸術』という本を昔読んだので、まぁ………パクリです)

日本という国は、古くから死んだら神様になる珍しい国です。菅原道真の怨霊を鎮めるため、東郷平八郎を顕彰するため、お国のために戦った英霊たちを祀るため。明治になって神道は国家神道になり、歪んだ形になりました。多大な犠牲を払って大日本帝国は崩壊。その反省からか戦後は死んでも神様にならなくなりました。
それはそれでなんとなくもったいない。前にも書きましたが、古今亭志ん生神社はあってもいいなと思います。笑いの神と貧乏神が一緒にいる神社。将来的に長嶋茂雄神社もありだと思います。

今年、もし今が戦前だったら確実にこの人は神になって神社ができただろうなと思うケースがありました。
それは志村けんさんです。コロナ禍の悲劇を国民と共有した喜劇王。未だ惜しむ声はやみません。やや持ち上げ方が過剰なんじゃない?とも思えるのですが、持ち上げすぎじゃなければ神になりません。
志村神社の作品化は、特殊な文脈を持つ日本という国と、現在起こっている出来事とを、つなぐことが出来るのではないでしょうか。
現代美術は造形物が必要ですが、神社を建てるのはめんどくさすぎます。もっと簡単なもの。絵馬でどうでしょうか。

長々と下手なプレゼンを述べてまいりましたが、そんなこと汲み取ってもらえなくても、笑って見ていただければ本望でございます。「WAVE2020」展は29日まで開催してます。

以下「アイーン」への道。

えっと、右手をこうして、っと。

せいの、アイーン!「ダメダメ全然アゴ出てないよ」by撮影者

アイーン!こう?「え〜、もっと出ないの?」by撮影者

俺ってどっちかというとややしゃくれ気味なんだけどなぁ、アイーン!

「横から撮ったらアゴ出るんじゃない?」by撮影者

はじめて「アイーン」をやってみたが、確かにあとで写真を見ると全然「アイーン」になってない。撮影者に言われてあごも精一杯出したつもりだが、その指示にも間違いがあった。アゴを出すと同時に口角を上げなければいけなかったのだ。アイーンへの道は遠い。

2020.11.17

婦人倶楽部とWAVE

婦人倶楽部の新曲「君にやわらぎ」のジャケット描きました。

背景の奥でパッカリ割れているのが佐渡金山、「道遊の割戸」。大げさに描いたのではなく実際にこんな感じだ。ぜひ画像検索でもしてください。

もう何年くらい前のことだろう、そんな前でもないか。
友達のイラストレーター犬ん子さんがLINEスタンプを作っていて、とても使い勝手が良く、なおかつシャレていた。
「これ、自分のオリジナル?」と聞けば「佐渡の婦人倶楽部っていうバンド(アイドルグループって言ったかな?)のLINEスタンプなの」と答えてくれた。
その時、はじめて佐渡には婦人倶楽部というバンド(アイドルグループなのか?)が存在することを知ったのである。スタンプの中には「あっというまにおばさんよ」というのがあるので、おばさん達なのかもしれない。

佐渡ヶ島に暮らす主婦たちが巻き起こすポップアート「婦人倶楽部」。婦人たちのつぶやきを暮らしにお役立てください。(スタンプ制作:青空亭)

婦人倶楽部のLINEスタンプはここから買える。

YOUTUBEをあたってみると、めちゃくちゃクオリティーの高いミュージックビデオがいくつか上がっていた。
婦人たちの顔は手拭いで覆われているのでわからないが、それほどおばさんではないようだ。むしろ若い。ぼくからすれば女子大生くらいの感覚だ。それでも、あっというまにおばさんなのだろうけど。

Twitterに婦人倶楽部のアカウントがある。宣伝の時は「回覧板まわしてね」という決まり文句をつけているのに、唸った。「拡散希望」とか「リツイートお願いします」なんて野暮な言葉は使わないのが、主婦のひと工夫だ。
婦人倶楽部は音楽以外の衣装、振付、撮影、小物……顔出しNGも含めて、世界観がカンペキに構築されている。「回覧板まわしてね」にもそれを感じた。年齢を聞かれた時に10万23歳と答えたデビューしたてのデーモン小暮を思い出した。婦人倶楽部も要所要所にひと工夫あって楽しい。この丁寧な主婦たちのものづくりは「暮らしの手帖」に取材されるべきである。

昭和初期までは金銀の原鉱を処理していた施設跡地。スゲー!写真は佐渡島の魅力を切り取るカメラ女子、sakiさんの撮影。

そんな婦人倶楽部から新曲のジャケット依頼が来たから緊張した。
「江戸時代の佐渡の金山にタイムスリップした婦人たちを浮世絵風に」という依頼内容は確かにぼくのレパートリーで受けることができるが、一聴すればわかるように、婦人倶楽部の楽曲はとてもおしゃれなのである。
投げ込めるストライクゾーンは狭い気がした。コントロールに注意せねば。キャッチャーが構えるミットのど真ん中に放りこめた時、イラストレーター稼業の充実感も得られるのである。

キャッチャー役はプロデューサーのムッシュレモン氏と婦人A(婦人倶楽部はイベント担当の婦人A、ヴォーカル担当の婦人B、パフォーマンス担当の婦人C、演奏担当の婦人D、さらに最近もう一人加わって5名になったそうだ)だった。婦人Aは実はぼくとは昔ちょとした関係があったことが今回判明した。縁は異なもの味なもの、先立つものは佐渡の土、なんのこっちゃである。
仕事のやり取りをしている時にも、「すみません、稲刈り作業でお返事が遅れました」とかメールが返ってくる。婦人たちは本当に佐渡に根差して生きているようだ。
しかし依然として正体はヴェールいや手拭いに包まれたまま。
いつか佐渡に渡ってトキとともにこっそり生態を確認したいリストに入れた。

こちらのいずれかの配信で聴けるようです。


ムッシュレモン氏による「君にやわらぎ」の解説です。

おまけにもう一つ回覧板まわすわ。
11月21日〜29日。3331Arts Chiyoda(元学校だったところね)にて開催される「WAVE2020」に出品します。
今まで一度も波に乗ったことがないイラストレーターだけど参加してもいいのかしらネ。
絵はもう描けました。今日は搬入に行って来ます。
今回は特大絵馬に絵を描くことにした。今回は私の考える現代美術をお見せすることになるだろう。

こういう形で売ってるわけでなくて、木材から切り出した

WAVE2020のDM。

WAVE2020の詳しい情報はこちらからどうぞ!

2020.9.1

軽井沢の魑魅魍魎

8月11日に更新をして以来、2週連続でブログの更新をサボってしまった。
その間はずっと軽井沢の個展期間だった。ブログというのも気持ちにヒマがないとなかなか更新できないものなんだなと思った。軽井沢でそんなに気忙しいことがあったのかというと、何もない。
朝7時半になると、泊めていただいている離れから母屋に行って、朝ごはんを食べ、夜はまた7時半くらいには夕食と酒が用意されている。至れり尽くせりである。もちろん気候は爽やかな軽井沢。そんな生活を20日間も得られた。

おかしい。どう考えてもブログの更新をするくらいなんのことはないじゃないか。やはり非日常だからだろうか。そういえば、いつもはひっきりなしに見ているスマホもあまり覗かなくなった。終わってみれば、あっという間の20日間だった。お世話になったTさん、タジケン他、軽井沢の友人に感謝でございます。
また、心配していた絵の売れ行きだが、案に相違して9割方は売れた。これも財布の紐を緩めていただいた皆さまのおかげでございます。今週は展示した絵を振り返って終わりたいと思います。

『Zombie Marathon』
ゾンビのマラソンは42.459(死に地獄)キロ走る。
ゾンビマラソンにエントリーすると不吉な数字のゼッケンが配られる。
沿道で見ていると、給水がわりに噛みつかれるのでご用心。

『タコ』
暑っつ!暑っつ!あ〜暑っつ!
標高1000メートル近い軽井沢もお盆の週は暑かった。軽井沢がこんなに暑いんだから、日本全国茹で上がってたでしょうね。

『かっぱ』
涼やかに。キュウリでも食べながら。

『ガイコツ』
冷たいものを食べ過ぎるとお腹を壊すよ、ガイコツさん。京都の酬恩庵一休寺で見ることができるでしょう。

『くもりなきひとつの月をもちなからうき世のやみにまよひぬるかな』
「一休骸骨」にある道歌です。
金をふんだんに使った高級感と無常感あふれる作品です。

『タコとの遭遇』
今回の個展のために描き下ろした絵の中でもっともお気に入りのシュルレアル・タコ絵画。
「ねぇ、自分で刀ぬけるよね?縄切ったら?」と、タコが言ってるかどうか知らないが、描いてる時には気がつかなかった。
上のガイコツとともに大阪の茨木市にある「STOMPSKUNK」というバーに飾ってあるかもしれません。

『Dancing Bon Festival』
お盆で踊るのは踊り念仏からかな?
この作品は気に入っていたので売らないつもりでしたが、ちゃんと表装して、青山ベルコモンズ跡の商業施設に出来る、蕎麦と信州の素材を使う石窯料理や日本酒を提供する「川上庵 東京」の壁にかかるらしいぜ。かかったら蕎麦を食べに行こう!

『無常画』
諸行無常でございます。
絶対売れないと思っていたが、案の定売れなかった。でも、個展のテーマを考えたらこういうのも描いておかねばならないと思いました。

『河太郎』
大好物をひとりじめ。

『日日是好日』『無縄自縛』
どちらも禅語から。

『お菊とお岩の井戸端会議』
結局女が勝つのさ。

『百鬼夜行〜すべてはスマホに中に〜』
使命を終わらさせれたメディアたちが付喪神(つくもがみ)になって行進します。
絵巻の百鬼夜行では最後、朝日が昇ってみんな退散する。この百鬼夜行ではスマホの光に溶けていく…トンチと風刺の効いた作品です!

『Villa Monster』
ラーメンを食べに出ている間に、飛び込みで来られたご夫婦がお買い上げくださったと連絡が。なんと洗練されたご趣味をお持ちのご夫婦であろうか。さすが軽井沢の別荘族。

『地獄太夫』
ぼくが在廊していない時に、全身にタトゥーを入れた若者が「この絵、写真に撮っていいっすか?」とパシャパシャ何枚も撮っていったという。そう、そんな紳士淑女のためにこの絵は描きました。

『おツネとポン太』
実はこれだいぶ前に描いた絵なんですが、狐と狸が化けてるってことにして今回出品しました…どうでしょうか。

『三遊亭圓朝の肖像』
近代落語の祖、三遊亭圓朝の肖像画。『牡丹燈籠』『真景累ヶ淵』『怪談乳房榎』の作者であるが、歌川国芳の弟子でもあった。

『異変』
以前、百人一首をテーマにした展覧会で慈円の「おほけなくうき世の民におほふかな わがたつ杣(そま)に墨染の袖」という歌を絵画化した作品なんですが、タイトル変えて出品してしまいました。すみません。

『折りたたみ色紙』各種
この他に写真を撮り忘れたのが2、3点あったはず。












『心中』
許されない愛を成就させるために死を選んだふたり。この世のすべてはうつろいゆく。愛もまたそうです。しかし生の世界を離れれば、愛は永遠…になるのかもしれません。
最終日、閉廊まであと15分という時に、これから結婚予定のあるカップルがご来場。この絵をお買い上げ下さいました。しかも親御さんにこの絵を持って挨拶に行くという。なんと洗練されたご趣味をお持ちの2人なのだろう。末長くお幸せに♡
こういうことが起きるので個展はおもしろい。

というわけで伊野孝行個展「恐怖の別荘地」in軽井沢は8月7日〜25日。旧軽井沢ローターリーにある酢重正之商店の2階で開催されました。多謝!

2020.8.11

軽井沢日記1

8月7日(金)晴れ
心配だった輪行(自転車をバラして袋に入れ、電車に乗せて、目的地に着いたらまた組み立てる)もスムーズに済んだ。自転車を軽井沢駅の駅前で組み立てている間「空気のさわやかなこと、さわやかなこと…」と心の中で感嘆する。

14時から搬入。7年前に展示をやった時の印象よりギャラリーが広くて、持ってきた作品では壁が埋まらないのではないかと焦る。
ぼくは搬入が一番嫌いな仕事だ。飾り付けのやり方は人それぞれだが、きっちり寸法を出して位置決めをするのはとても骨が折れる。でも「酢重ギャラリー」のTさんはだいたいの目分量で飾り付けするタイプだったので(ぼくに合わせてそうしめくれているのかも)助かった。

『シナリオ』の編集長の西岡琢也さんから花が届いていた。『シナリオ』の誌面のイラストは毎号ぼく一人で描いている。好きにやらしてくれる。ラフも描き直しも基本なし。そのかわりおカネは安い。
今月はめずらしく西岡さんから「田宮二郎の顔が似ていないので、もうひと超え」と注文が入った。田宮二郎は3回描き直したのだが、自分でもあまり似てるとは思っていなかった。3回描き直した挙句の絵であることを告げると、西岡さんは大変恐縮されて、そのままでいきましょう、と言ってくださった。しかし、会場に届いた花を見ると、やはり描き直さなくてはいけない気がしてくる。

晩ご飯は向かいの「レストラン酢重正之」で。
ぼくが展示をやっているのが「酢重正之商店」という味噌屋の2階。お隣は「酢重ギャラリー・ダークアイズ」という器や家具やアートのセレクトショップ。みんな同じグループなのです。それだけではない「川上庵」というお蕎麦屋さんや「沢村」というベーカリー&レストランもやっている。

8月8日(土)曇り
朝5時に目が覚めて、そのまま起きていた。期間中はTさんの家の「離れ」に居候させてもらうことになっている。カーテンを開けると素晴らしい眺め。

上の写真は「離れ」の外観。朝ごはんを食べに、すぐ隣のTさんの家に上がると、朝からエレファント・カシマシが流れている。Tさんは2年前にエレカシに出会った後は、朝どころか、車の中も、帰宅後もずーっと聴いているのだそうだ。

友人の版画家兼イラストレーターの田嶋健さんが来てくれる。田嶋さんとの付き合いはもう15年くらいになるだろうか。Tさんを紹介してくれたのも田嶋さんだし、今回の展示では軸装も田嶋さんに丸投げしている。田嶋さんはここから車で40分ほど離れた佐久市に住んでいる。稼業の「田嶋商会」の仕事もあって忙しいので、15年の付き合いがあってもゆっくりと飲んだことはほとんどない。今日こそ飲もうと、言っていたけど、車で来たタジケンはノンアルビールだった。晩飯は「沢村」。
車で送ってもらう時、我々は濃霧に包まれた。

8月9日(日)曇り
どこでどういう条件でやろうとも、個展は緊張するというか疲れる。会場に詰めているとエネルギーが刻々と目減りしていく。東京で個展をするとお客さんの6〜7割が同業者。残りは編集者やデザイナーといった仕事仲間。知り合いでもない一般のお客さんが見にくるのは1割にも満たない。

ところが軽井沢では割合が逆転する。避暑に訪れた人々が時折、酢重正之商店で味噌を買ったついでに、わざわざ階段を上がって見に来てくれる。テーマをお化けや幽霊にしたのも、そんなお客様にも楽しんでいただけるようにしたかったからだ。みんなマスクをしているから表情がいまいちわからない。話しかけていいものやら。

ギャラリーで仕事をしようと思って、筆を竹製の筆巻きに巻いて持ってきたのだが、開いて見ると3本しかない。どうやらTさんの家(中軽井沢)からギャラリーまでの道のり(自転車で15分)で落としてきたようだ。筆は命。しかも1本3000円くらいする。目を皿にして道路を凝視しながら家とギャラリーを往復して、根性で2本発見した。あと、2本くらい持ってきてたはずなのだが…。そんなこんなで体内エネルギーの残量がチカチカしだしたので早引けする。

部屋でちょっと横になった後、Tさんの家の近所を自転車で走る。
なんて素晴らしいんだ!みるみるうちにエネルギーが充電されていく感じだ。

晩酌にタジケンからもらった地酒や、Tさん宅にあった紙パックの安酒を飲み比べたりしているうちにかなり酔ってしまった。

8月10日(月)晴れのち雨
昨日と今日はTさんのお孫さんたちと一緒に朝ごはんをいただいた。
今日は暑い!軽井沢でもこんなに暑いのか。
イラストレーターは絵を売って暮らしているわけではなく、絵の使用料をもらって生きている。いつも向こうから料金が提示される。展覧会は自分で値段をつけなくてはいけない。
ぼくの場合、展覧会で絵が売れることがあっても、ほとんどは人間関係で売れている。軽井沢で売るのは至難の技である。昨日から数点ずつSNSで作品を紹介している。そしたらまんまと京都のお友達が買ってくれた。おおきにどすえ。

8月11日(火)晴れ
今日も自然に5時起床。6時半、洗濯物がたまったので、家から自転車で20秒のところにあるコインランドリーへ。マガジンラックに和田誠さんの絵本が置いてあった。コインランドリーからは浅間山が望める。

朝ごはんを食べにいくと、当然のこととしてエレカシがかかっている(笑)。
さて、めんどくさいが今日はブログの更新日なのだった。ipadから更新するのがやりづらくすでに3時間も経過している。

2020.8.4

輪行!恐怖の別荘地

8月7日〜25日、軽井沢の酢重ギャラリーで個展『恐怖の別荘地』を開催することは先週のブログで書きました。
ぼくが今心配のは、コロナや、コロナの影響で誰も見にこないのではないか、ということではありません。
ぼくが不安なのは「輪行」です。

輪行というのは自転車をバラして袋に入れて、電車に乗せて目的地まで行き、そこでまた組み立てて乗ることです。
自転車ビギナーである私は輪行も初体験です。
先日、予行練習を行いました。
問題は、東京駅の、丸の内口もしくは八重津口で、衆目にさらされながら、炎天下の中この作業を無事終えられるかどうかです。家の最寄駅、下高井戸から輪行してもいいのですが、10キログラムもある車体を担いで乗り継ぐ方がしんどそうなので、東京駅まで自転車で走るつもりです。
今週のブログは7日に輪行する時のアンチョコとして更新しますので、みなさんが読んでもまったく意味がありません。

さぁ、自転車をバラすぞ!蚊に刺されるのが嫌なので家の中で。


その1、後輪のギヤを1速にする。

その2、ブレーキアーチのフックを外す(前後輪とも)。

その3、車体をひっくり返す。

その4、前輪を外す。どこかの壁沿いでこの作業をしないと、車輪を立てかける場所がないぞ。

その5、後輪のレバーを開いた後、変速機を後ろに引っ張ってギヤをむき出しにする。かかってるチェーンを外して車輪をとる。この手のスポーツ自転車は車輪がワンタッチで外せるが、後輪はギヤや変速機があるので手こずる。


その6、車輪が外れてたら〜んとなってるチェーンをチェーンフックにかける。

その7、エンド金具を後輪のハマってたところに装着。きつくレバーを締める。エンド金具は変速機の保護のため。

その8、サドルとエンド金具を下になるように、方向転換。ぼくの自転車にはサドルの下にキャリアがついてるので、エンド金具とキャリアが一番下になるが。

その9、フレームにタイヤを縛り付ける。ペダルはこの位置が邪魔にならないでしょう。ショルダーベルトを装着。ここまでくればあと一息!でもきっちり縛るのは難しい。ぼくは思い切ってビニール紐にした。

その10、変速機に軍手でもかけておくか。

その11、輪行袋に入れる。ショルダーベルトは袋の小窓から通す。

これで完成。しかし、軽く作られた自転車もショルダーベルト一本で担ぐとなるとやたらめったら重い。
ぼくの自転車は5月に買ったばかりのスポルティーフという車種です(20年前の中古)。スポルティーフというのは一見ランドナーによく似ているのですが、ちょっと違う。ロードバイクともちょっと違う。詳しいことは映画監督の平野勝之さんの記事が大変分かりやすかった。
趣味自転車の王様、高速ランドナー「スポルティーフ」について。映画監督・平野勝之「暮らしのアナログ物語」
今回は輪行するにあたって、ランドナー、スポルティーフの様式美でもあるマッドガード(泥除け)を外してあります。だってこれがついてると輪行しにくいんだもん。

8月7日〜25日、軽井沢の酢重ギャラリーで個展『恐怖の別荘地』。よろしく!

2020.7.28

GoTo恐怖の別荘地

8月8日〜25日、軽井沢の「酢重ギャラリー」で個展をします。
題して『恐怖の別荘地』

「GoToトラベル」東京除外のせいでこの夏、東京都民は旅行に出かけにくくなってしまいました。雰囲気的に。でもキャンペーンが適用されないだけで、本来は自由に行ってもいいんですよ。

人間にとって、個人の判断という「自由」はけっこう持て余すというのが、コロナでよくわかりました。
コロナに対して基準を決めて欲しいという声が上がります。基準があれば、それを守っていればいいのだし、逸脱者を非難もできます。

おばけにゃ学校もしけんもなんにもない
おばけにゃ会社も仕事もなんにもない
おばけは死なない病気もなんにもない

と、水木しげる先生は歌詞に書かれました。
試験など基準の最たるものだし、学校や会社という協調を必要とする組織もない。病と死という二大苦(生と死を分ける二大基準と言えましょうか)からも解放されている。つまり、おばけの世界には基準がありません。
だから、おばけは究極の自由を手にすることが出来るのです。

人間の自由は基準あっての自由でしょうか。
基準を捨てて、自由を手にすることが我々人間に出来るでしょうか?

私は半分おばけになりたい。
自由を渇望する方は、ぜひ、自分の判断で軽井沢へお越し下さい。
首を長〜くしてお待ちしております〜。

観光しながら働く、休暇を楽しみながらテレワークする「ワーケーション」を実践するべく、会期中は軽井沢に滞在するつもりです。なんと国に従順な態度でしょう。

酢重ギャラリーは7年前に一度お世話になりました。
その時のブログ記事です↓
画家の肖像in軽井沢

酢重ギャラリーはココです!
酢重ギャラリー

2020.1.28

「THE百人一首」

明日(1月29日)から京都の嵐山にある嵯峨嵐山文華館で「THE百人一首」が開催されます。


嵯峨嵐山文華館のサイトはこちら

嵯峨嵐山文華館は、なんてたって藤原定家が百人一首を選んだ地、小倉山のふもとにあるのです。
運営は公益財団法人小倉百人一首文化財団。ここ以上に百人一首の殿堂はあるでありましょうか。
ここは元は「百人一首殿堂 時雨殿」というミュージアムで、任天堂の山内溥社長が私費を投じて建てたものだと聞きました。嵯峨嵐山文華館と名前が改まってリニューアルオープンしたのは2018年。

百人一首の歌仙人形もなかなかよくできていて見飽きない

「THE百人一首」では2月23日に「第一回ちはやふる小倉山杯」が開催されます。
競技かるた界を牽引するタイトル保持者、A級優勝者など8名が集結し対戦!
どこで対戦するのかというと2階にある120畳の大広間、その名も「畳ギャラリー」。

搬入に行った時はさすがに自重したが、この広さの畳の部屋を見ると、思わず走り回りたくなる。なぜだろう?それは私が日本人だからか?

ご覧ください。三方の壁は展示ケースになっていて、ここで我らが「百人一首って」全100点も飾られます。


たぶん、「第一回ちはやふる小倉杯」の熱戦が繰り広げられるている間は、みんな壁の絵には注意を払わないかもしれません。「ちはやふる」の世界観とは全然違うアプローチですしねぇ。
でも、この壁に目を凝らしてください。百人一首の伝統が現代作家の中に撒かれ、新たな呼吸をしはじめているはずです。
形式的に百人一首のビジュアルを受け継いで描いたのでないのは、一目瞭然。キャプションはちょっと読みにくいかもしれませんが、読めばそれぞれが短歌の内容をどう受けて、どう表したかがよく分かると思います。
全部読むのはさすがにしんどいか。でも、面白そうなのがあったら読んでね。

伝統をどのように受け継いで自分のものにしていくかというのは、いつの時代であっても全人類の課題です(あ、でかいこと言っちゃったね〜)。
そんなでかい話はできませんが、3月21日(土)の14時〜15時に、歌人の天野慶さんと参加イラストレーターのトークがあります。
東京で展示をやるとですね、普段の人間関係もあって、イベントにも来ていただけるんですが、京都にあんまり知り合いいないんで、誰か来てくれるのか心配どすー。
120畳ありますからねー。トークするスペース。
ほんま、なんぼ来てもらってもいいですからねー
なにとぞよろしゅうおたのもうします。















作品たちがお待ちしてまーす!

2019.11.26

百人一首の現代“画”訳

第99回オール讀物新人賞受賞作、由原かのんさんの「首侍」の挿絵を描きました。たいへん面白く読みました。本格的であり、かわいらしさもあって、自然に選ばせたタッチがこれであります。


さ、今日は忙しいので新しい報告は以上で終わり。

ただいま、人形町vison’sでは「百人一首って」展開催中です。百枚の絵になった百人一首、まだ見ていない人がいるだなんて、なんと嘆かわしいことでしょう。

誰しもが一度は音に聞き、札を見て、カルタをとったことのある百人一首。もっともポピュラーな古典と言えましょう。
「え〜、百人一首って…暗唱できる歌もないし、歌の意味もわからないよ」なんて気にすることはありません。私も、自分の担当したもの以外はほぼあやしいですから。暗唱できる歌なんて5つもないな。
でも、そんなこと一切鑑賞の妨げになりません。歌人、天野慶さんの現代語訳もあるし、それぞれ描いた人のコメントもついている。何よりご覧になれば、歌も絵もスーッと自分の中に入ってくることにお気づきになるでしょう。知らぬうちに血と骨に混じっているもの、それが古典というものです。
古典である百人一首に、新しい趣向を盛る。百人一首の「現代画訳」を見逃すなんて、罪ぞつもりて淵となりぬる、です。
脅しているわけではありません。正直、今までの人形町vison’sシリーズの中でも一番うまくいった企画、展覧会になっているのではないでしょうか。次はうまくいくとは限りませんので、その意味でもお見逃しなく。















「百人一首って」展はこちらで開催中!

2019.11.12

百人一首って…

先週「伊野孝行のブログ」は突然の最終回を迎えたわけですが、舌の根の乾かぬうちに「新・伊野孝行のブログ」として再スタートしました。どうぞよろしくお願いします。

ご覧の通り、ブログだけでなくホームページ全体がリニューアルされております!
今まではスマホだと見にくかったんですが、今度はパソコンでもスマホでも見れます。(パソコンで「仕事」ページの作品を見るとものすごくでかく表示される人もいると思いますが、ネットを見てるウィンドの大きさを調整すると、作品の大きさも変わりますので)

今までのブログには、この画面の右(スマホだと下)にあるクマちゃんバナーから飛べます。11年分のブログなんて誰も読まないと思うので、よりぬき記事を並べてみました。
ホームページを開設したのは12年前で、ちょうどその時たまたま年男(36歳)だったんですが、あれから12年後の今年、リニューアルがまた年男(48歳)。次は還暦リニューアルかなぁ。

さて、今月20日から開かれる展覧会のお知らせです。

このところ毎年恒例になっている人形町Vison’sでのグループ展ですが、去年と一昨年は「風刺画」がテーマでした。なるべく誰も手をつけないテーマをやろうとしているのですが、今年は「百人一首」!

「百人一首って」展の詳細はこちらをクリック!

去年の展覧会の打ち上げで日下潤一さんが「来年は百人一首がええんちゃう」と提案しました。

私は打ち上げに行かなかったのですが、あとで聞いて「ええ〜百人一首って…」と正直思いましたよ。「なんで反対しなかったの?」とその場にいた人に言いました。

でも、言い出したら聞かないのが日下潤一さん。そして散々ゴネるのが私。これは毎回そうなんですけど、問答しあっているうちに企画がより鍛え上げられて行くのではないか…いや、ゴネてるうちに自分の中にストンと落ちる…そんな気がしてゴネるのです。私に必要な準備期間なのです。
百人一首のことを勉強するのはやぶさかではないんだけど、絵にして面白いか?展覧会として面白くなるか?という疑問がありましたね。
百人一首のビジュアルとしてまっさきに思い出すのは歌仙絵風のかるたでしょう。

光琳かるたの天智天皇と持統天皇。平安時代の風俗だが…

尾形光琳の「光琳かるた」とかかわいいですよね。京博で開催中の展覧会、切り分けられし伝説の「佐竹本三十六歌仙絵巻」も良くできてますよね。

益田鈍翁の思いつきは新しい伝説を生み出したという点で、単なる暴挙ではないのかもしれない。

歌を詠んだ人の肖像画を描く。そういうアプローチもあるでしょう。でも、それ以外のアプローチはどうとればいいでしょう。

歌にはそれぞれ背景があります。歌を詠んだ人の事情もあります。そういうのって歌を味わうだけではわからないです。裏側にあるエピソードを絵にするという手もあります。でも、一枚の絵で説明できることなんて限られてます。そんな説明を絵にして面白くなるだろうか、とも思う。
要するに歌から離れちゃうと、なんの絵かよく意味がわかんなくなるし、歌の絵としてどうなんだ?って心配ね。
また逆に歌にくっつぎすぎると、歌そのまんまの絵やん、ってなって「絵と歌の間にできるもの」が生まれてこないんじゃないかという心配ね。

ウ〜ン、百人一首を絵にするって、なかなか難問だぞ。
どういうアプローチをとるのかは、14人のイラストレーター各人各様。みんなどうするのでしょう。

でも、頭で考えてるのと、実際に描いてみるのは全然違うことだと、今回もまた思いました。
実際描き出してみると、まぁまぁ面白いねぇ(笑)
一人、7〜8首割り当てられてるんだけど、一人で百首描いてもいいかもなって思うくらいに改心しましたね。あれだけゴネておいて。

私のとったアプローチはいわば「連想」です。

〈語呂合わせと言葉遊びは日本の伝統的な精神を理解する鍵のひとつであり、連想を愛する心と深い関わりがある。連想こそは、日本の伝統文化、現代文化の核心だと言っても過言ではあるまい〉

チラシにも引用されているピーター・J・マクミランさんの言葉です。
確かに百人一首には言葉遊びと連想が満ちている。
私は視覚の連想で描いてみようと思いました。
ひとつふたつ、お見せしておこうかな。

〈春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山 持統天皇〉

(春が過ぎて、夏が来たようね。真っ白な衣が干されていようだわ、新緑の天の香具山に!)

光琳かるたの持統天皇は平安時代の風俗になっているが、飛鳥時代の人なので風俗や文化は全然違うんですよね(この時代はまだ天皇という称号もない)。平仮名も開発されてないので、元の歌は万葉仮名で書かれてます。

〈春過而夏来良之白妙能衣乾有天之香具山〉

香具山にこんな滝があるのかどうか知らないけど、香具山の衣を揺らしているのは、西域から唐を渡ってきたおおらかな風だったかなと想像する。この歌に政治の匂いはしないけど、持統天皇の父は天智天皇、夫は天武天皇、息子は草壁皇子。息子に天皇を継がせたい、それが母としての悲願だったよう。


〈いにしへの奈良の都の八重ざくら今日九重に匂ひぬるかな 伊勢大輔〉

(とおいむかし、都であった奈良で咲き誇っていた八重桜が、今日はこの宮中(九重)で美しく輝いています)

いにしへの古都から今日(京の都)届いた八重桜。九重は「宮中」を意味するらしい。技巧的なダブルミーニングが美しい。しかもこの歌、紫式部から無茶ぶりされて即興で詠んだとか。伊勢大輔おそるべしです。
絵は、幾重にも花びらが折り重なって咲く八重桜に見立てた、宮中の女官たち。

百人一首の絵が百点並ぶのは、なかなか壮観ではないでしょうかね。
よかったら見にきてくださいよ。

23日には15時から百人一首をぼくらにレクチャーしてくれた歌人の天野慶さんをゲストに迎えたトークショーもあります。
それがなんとたったの500円ぽっち。しかもその後17時からオープニングパーティーがある(展覧会は20日から開催してます)っていうんだから、こりゃ行かないほうがどうかしてますね。

展示会期 2019年11月20日[水]〜11月30日[土]
開廊時間 12:00―19:00(23日トークショー中は入場制限有り、最終日のみ17:00まで)
展示作家 伊賀美和子、犬ん子、伊野孝行、大高郁子、日下潤一、霜田あゆ美、田嶋健
丹下京子、西川真以子、二宮由希子、丸山誠司、南伸坊、森英二郎、矢吹申彦

監修・解説=天野慶(歌人)
トークショー《「百人一首って」歌人・天野慶とメンバー》
11月23日[土・祝]15:00〜17:00

「百人一首って」トークショー受付けフォームはこちらから。