新・伊野孝行のブログ

2020.2.4

雲古譚

2月1日、峰岸達さんが主催する「MJイラストレーションズ」の塾をあげての展覧会に行った。
場所は六本木。
この塾の展覧会のオープニングは例年、大変混み合っている。
お騒がせ中の新型肺炎コロナウィルスはその中の誰かにすでに潜伏しているかもしれない。家を出る時にマスクを忘れたので、六本木駅周辺のコンビニやドラッグストアに寄るも3軒空振り、4軒目のコンビニでようやく残り一個のマスクを見つけた。2個入りで400円もした。これで一安心である。

心配しすぎ?
事実、友達には「へー、なに?コロナウィルスが怖いの?年寄りでもないのに……大丈夫だって」と完全にバカにされていた。
ご用心、ご用心。
コロナウィルスはなくとも、これだけ人がいれば、インフルエンザをうつされる可能性も大いにあるのだ。

会がおひらきになって、友達4人でご飯でも食べて帰ろうということになった。
「あ、犬のウンコ!」
という友達の声が僕の鼓膜を震わせた瞬間、右足は思いっきり犬のウンコを踏んでいた。
白いスニーカーの靴底からヌルッとした感触が伝わった。生キャラメルのような色のウンコがぶにゅっとなっていた。
途端、友達たちが「キャーッ!」と叫んで側から離れて行った。
友達を追いかけながら、必死にアスファルトの路面に靴を擦り付ける。僕の後には踏まれたウンコとそこから続くウンコのスタンプが出来ていたはずだ。

ちょっと歩くと、ビルの前が砂利のところがあった。ラッキー。
鳥が砂浴びをするように、スニーカーに砂利洗濯させる。
青い靴底にはほんの少し茶色いところがあるものの、ほとんどはここで落とせたようだ。
お目当ての晩ご飯を食べる店に着くと、ちょうど入り口に足拭きマットがあった。
やはり俺はついてるぞ。
マットの上でツイストを踊るように足をクネクネ回した。これで仕上げだ。
その様子を見て友達は「最悪……」みたいな顔をしていたが、足拭きマットは本来こういうためにあるのだ。しかし、満席だったので、その店には入らなかった。

それで思い出したが、中学生の時に遊んでいた「お城公園」でとても不思議なことがあった。
お城公園は築城の名手、藤堂高虎の造った津城の跡地だ。天守閣をはじめとする建物は現存しないが、石垣はまだある。その石垣に登って遊んでいた。
自分の背丈より高いところまで登って、さらに上がろうと、石垣の石に手をかけた時、妙な感触が……。
指先を見ると黄土色のものがついている。なんだろうと思って顔を近づけると、ものすごく臭い!
「なんで…⁉︎」
鳥のものではない。動物の、それも雑食性の、同族の糞に近い匂いだ。が、このへんに猿はいない。犯人がいるとしても、この石垣は普段人が登るようなところではないのだ。

今週はたいへん汚い話でお目汚しをしてしまった。生まれつき胃腸の弱かった市川雷蔵(直腸癌で37歳で亡くなっている)はロケバスの中から、道端の犬のウンコを見て
「うらやましいな〜、わしもいっぺんあんなんしてみたいわ」
と言ったそうだ。六本木のど真ん中に落ちていたのもなかなかのものだった。

急ぎの仕事が入っているので、今日はこのへんで。