伊野孝行のブログ

読み物の連載はじまる

今日は2月16日、そして当たり前のことですが明日は17日。明日発売の「小説すばる」3月号で連載がはじまります。それも読み物の連載です。さっきポストをのぞいたら明日発売の「小説すばる」がすでに届いていて、どっきり。連載開始のおしらせは来週する予定でしたが、ゲンブツを見てしまって落ち着かなくなりました。来週までこの気持ちを引きずるのが嫌なので、今週の更新でお知らせしてしまおう。掲載誌が届いてこんな気持ちになるのは、はじめてイラストレーションの仕事をした時以来かも……。さいしょ掲載誌を手にとって、眺めてみましたが、表紙にも背表紙にも名前がなく、期待の低さがうかがえて、とりあえずひと安心。はじめてこの文章を読む一読者の立場になって、読もうと思いましたが、すでに何回も読んでいるので無理でした。おもしろいかどうか全然わからない……。

『ぼくの神保町物語 イラストレーターの自画像』と題されたこの読み物は、去年の秋に、人形町のビジョンズというギャラリーでやった展示が元になっています。わたしが19年間働いていた神保町の街のことを絵にした展覧会だったのですが、展示にあわせて原稿用紙で20枚ほどの文章も書き、冊子にして会場で売っていました。

展示を見にきてくれた集英社の編集者の方が、この連載の形につなげてくれました。第一回は「憂鬱なコーヒーボーイ」というタイトルで、神保町で働きはじめた頃のこと、つまりそれは、わたしがイラストレーターになる決心をした頃の話であります。まだ、物語自体が動いていないので、おもしろくないかもしれないです(いいわけ)。

神保町のことを書いた本は、これまでにもありました。ただ、それらのほとんどは古書店のことを中心に書かれているので、喫茶店のボーイの目から見た神保町の話は、今までにないはずです。そしてそのボーイはイラストレーターになりたい男で、なるまでにすごく長い時間がかかりました。同じところで延々と働いているのは情けない気分にもなりますが、おかげで街の定点観測ができていました。その間に街は変わりました。なにより自分も変わりました。街の話だけではなく、通っていた絵の学校セツの話や、絵の話、イラストレーションの話も入って、どちらかというと、そっちが主であるかもしれません。

これをうまく書き通せば、そこそこの読み物になることは自分でもわかっているのですが、いかんせん長い文章なんて書いたことがないので、一番の悩みの種。文章も書いて絵も描く、というスタイルは憧れでもありましたが、文章の方に慣れるまで時間がかかりそう。毎回8000字くらい書かなくてはいけないのです。書きあぐねたら、半分まで文章で書いて、残りは漫画にするのもアリ……それくらいの楽な気持ちで臨んだほうがいいですね。与えられたページ数だったら、文章と挿絵を自由にしていいと言われています。つづくそんなわけで、1年間くらい続く予定。本屋で見かけたら立ち読みでもしてください。