伊野孝行のブログ

一休さんの頂相とキャラ

「頂相(ちんそう)」とは禅僧の肖像画のことだ、というのを知ったのは実は最近。そう「オトナの一休さん」の絵を頼まれてから。一休宗純の頂相は22点も現存し、これほど多く描かれた禅僧は珍しいようだ。%e4%b8%80%e4%bc%91%e8%82%96%e5%83%8f%ef%bc%91%e4%b8%80%e4%bc%91%e8%82%96%e5%83%8f%ef%bc%92

左上の木彫は、一休の晩年に作られたもので、頭とあごに空いた穴には、一休の毛髪が実際に植え付けられていたみたい。ほかの3点も、飄逸で皮肉な一休の人柄が出ていて、これらの表情をアニメのキャラの参考にした。でも、この3点は角度が全く同じなので、どれかを元に写したのかもしれない。

一休の頂相の中には「え?これが一休さん?」と思うような顔もあるが、そんな顔をしていたとは信じたくない。%e4%b8%80%e4%bc%91%e9%a0%82%e7%9b%b8坂口尚さんの『あっかんべェ一休』(一休宗純の生涯と時代を重層的に描いた優れた漫画)の一休さんの顔は主人公補正されて、かなりカッコイイ。そしてライバルの兄弟子、養叟宗頥(ようそう・そうい)の人相がめっちゃ悪い。物語を作っていく上で一休の対抗軸として欠かせない人物が養叟なわけだが、今に至る「大徳寺」の発展は養叟なくしてはありえない、というお方でもあるらしい。%e3%83%a8%e3%82%a6%e3%82%bd%e3%82%a6%e8%82%96%e5%83%8fこれが養叟宗頥の頂相だ。そしてアニメのキャラにするとこうなった。%e3%83%a8%e3%82%a6%e3%82%bd%e3%82%a6%e9%a0%82%e7%9b%b8

「オトナの一休さん」でも養叟は毎度やり込められているのだが、制作スタッフの間では時々「養叟萌え」の声を聞く。もちろん、ふじきみつ彦さんの脚本と、養叟の声を担当されている尾美としのりさんの演技が加わってのことだが。
視聴者の皆様にも是非「養叟萌え」していただきたく日々制作に励んでおります。
そして「一休さん」と言えば蜷川新右衛門さん。本当は一休さんより年下だった。蜷川新右衛門の肖像画はないので、アゴが割れていたかどうかは定かではない。でも青っぽい着物とくっきりとした眉は往年のアニメの蜷川新右衛門さんぽくしておきました。%e6%96%b0%e5%8f%b3%e8%a1%9b%e9%96%80%e3%81%95%e3%82%93%e8%82%96%e5%83%8f
%ef%bc%99%e5%89%87%e3%83%bc%ef%bc%91%ef%bc%97この3人は一休の弟子たち。頭が青剃りでカワイイ。%ef%bc%95%e5%89%87%e3%83%bc%ef%bc%91%ef%bc%92こちらは養叟の弟子たち。頭がツルツルで、あんまりカワイクない。私の勝手な味付けです。%e5%9c%b0%e7%8d%84%e5%a4%aa%e5%a4%ab%e8%82%96%e5%83%8f地獄太夫。地獄太夫は一休の彼女の設定。声を担当している大堀恵さんにちょっと似てますかね?
%e8%87%a8%e6%b8%88私も頂相を描いてみました(僧侶でもない私が描いたものはただの似顔絵かな?)。臨済宗の開祖、臨済義玄がトイレットペーパーを持っている肖像。一休さんのセリフにこうある。「我々臨済宗の祖、臨済はこう言った、人がありがたがる経などトイレットペーパーと同じだと。そして臨済は、自らの経で何のためらいもなくケツを拭いた」
この絵は、曾我蛇足が描いたと伝えられている頂相を元にしている。ちなみに曾我蛇足は室町時代の絵師で(江戸時代には曾我蕭白が「ワシは曾我蛇足十世だ!」と勝手に言い出した)一休さんのお弟子でもあり、一休は曾我蛇足の絵の弟子だったと言われている。
%ef%bc%95%e5%89%87%e3%83%bc%ef%bc%91%ef%bc%94 大燈国師の肖像。一休さんのセリフに「大燈国師は権力や高貴な暮らしから離れ、五条大橋の下の河原で暮らす貧しい者たちに交じり、人間地獄の暮らしをしていたのだ…。しかも、二十年」とある。この絵は白隠が描いた大燈国師の絵の写しです。
そんなわけで、毎週水曜夜10時45分から絶賛放映中!
(11月13日午前1時40分から、四、五、六則の3話を連続で放送するみたいです)
一休さんも600年後に、まさか自分がこんなアニメになっているとは思わないでしょうね。