伊野孝行のブログ

玉ちゃん/セミナー

本日は2つのお知らせです。まずひとつめは新潮文庫より発売された玉袋筋太郎著「新宿スペースインベーダー」のカバーを描きました。装幀は新潮社装幀室の二宮大輔さん。この本はお世辞ぬきでおもしろかった。西新宿で生まれ育った著者が小学校5年生のときの自伝的小説。ちょうど西新宿に高層ビルが建ちはじめた頃の話である。わたしのような田舎のガキとくらべて、都会のガキが特別かわったものではなく、あ〜子供ってみんなそうだよなぁ〜と感じるところもあるのだが、やはり遊び場が「新宿」ということで田舎者には絶対あじわえないスケール感がある。また後年、ビートたけしの弟子となる玉袋筋太郎さんならではの遊びの発想というものが、やはりおもしろい。小学校の生徒を使ってボクシングの興行をうったり、サラ金の真似がしたくて貧乏な友達にむりやり金を貸し付けたり…、でも子供の純真な感情で読者をホロッとさせるエピソードもいくつかあり、その語り口がとてもうまい。高層ビルが建ち並ぶ今の西新宿には人の住むところなどないが、昔は(といっても、昔でさえ新宿が地元というのは特別なことだったようだ)子供たちがいて銭湯があってぎゃーぎゃー遊びまくっていたのであった。

しかし名前というものは本人が出世すると立派にみえてくるものだ。NHKではさすがに「玉ちゃん」という名前になっていたりするが「玉袋筋太郎」とはなんとかっこいい名前であろうか。「玉川勝太郎」に字面が似ているからか浪曲師の名前のようである。玉袋筋太郎さんは昔から「浅草キッド」としてテレビで見ているのでずいぶん年上の気がしていたが実は1967年うまれで、わたしの4こしか上でなかった。この小説は小学校5年生の話だから、わたしは小学校1年生のときだ。同世代である。どんな格好してたっけ?と思い出しながら絵を描きました。

さて、もうひとつはイラストレーション連続セミナーのお知らせです。私は阿佐ヶ谷美術専門学校の卒業生じゃありませんが縁あってお手伝いしているので宣伝をば。エポックをつくってきたイラストレーターに南伸坊さんがはなしを聞きます。黄金期のイラストレーターと我々低迷期の若い世代のイラストレーターではイラストレーションに対する意識がちがうと思いますね。「イラストレーションってこんなもんだよなぁ」と今は思っているけど、エポックをつくってきた人には「イラストレーションってもっとこういうものなんだ!」というのがあったはず。社会状況がかわってなんとなく自然にこうなっちゃった…という面はあるけど、人間が環境をつくり、環境が人間をつくる、という太古の昔より繰り返されてきた循環はイラストレーション界にもあてはまる。なのでこれは世代をこえた問題でもあります。またイラストレーションだけがずぶずぶ沈んでいる、という状況ではなくて出版も広告も似たようなことになっていると思う。聞き手がイラストレーターでもあり、デザイナーでもあり、編集者でもあり、文筆家でもあり、なにより「面白い」ことにこだわりつづける南伸坊さんということで、今までとはちがったセミナーになりそうです。なのでイラストレーターや志望の方だけでなく、イラストレーションを発注する編集者やデザイナーの方々にもご参加していただけたらうれしいです。場所は阿佐ヶ谷美術専門学校ですが一般に公開されていてどなたでも参加できます。本日10月1日13時より受付開始です。お申し込みはこちらから!