伊野孝行のブログ

珈琲ボーイの日記帳

世の中のすべてのアルバイト青年に捧げる「ぼくの神保町物語 イラストレーターの自画像」は、今月もちゃんと「小説すばる7月号」に掲載されています。

ところで、アルバイトをしながら絵や音楽や芝居などをやっている人は、自分をなんと呼ぶのでしょうか。フリーター?……いや、食えてなくたって、「俺は画家だ!」「ぼくは音楽家なのさ!」「私は女優よ!」と胸を張ればいいのですが、それは画家やミュージシャン、俳優などの場合に限る、とぼくは思っていました。IMG_1643

だって、イラストレーターって仕事をする時の職業名だから、仕事を頼まれないと、そもそもイラストレーターじゃないでしょう?

たとえ一枚も絵が売れなくても、画家は画家だけど、イラストレーターは仕事がこないと、ただの無職の絵描きだもん。でも、イラストレーターになるための資格なんてないから、自分で名乗った時点で、その人はイラストレーターでもあるわけですね。また、画家の人が、挿絵を頼まれて描いたら、その時点ではイラストレーターなのだとも言える。……なんだか話がややこしいですね。

「画家でもあり、イラストレーターでもありたい」と言っている人は、ぼくの統計によると、結局どっちにもなれない場合が多いようです。一見、ジャンルに捉われないカッコイイ発言のように思えるけど、かえって、純粋芸術と商業芸術を分けて考えているのではないか……と最近は思います。ぼくはイラストレーションはそのまんま芸術だと考えているので、「イラストレーター=芸術家」で全然差し支えないです。

だからこのホームページは「イラスト芸術」という名前にしたのですが、「芸術、芸術ってうるさいな〜」と言われれば、ひっこめてもいいです。芸術かどうかなんて自分が勝手に決めればいいだけのことだから。でも一人前のイラストレーターになるのは自分だけでは決められないことですもんね。難しいですよ。IMG_1656

で、ぼくの話ですが、イラストレーターと名刺には刷ったものの、まったく仕事がありませんでした。ず〜っとアルバイトをしていました。たまにお店に友達のイラストレーターが来たりすることもありましたよ。それも編集者との打ち合わせでね。友達は僕を「彼、イラストレーターの伊野さんです」って編集者に紹介してくれたりするんですけど、全然イラストの仕事してないし、それに編集者の目の前にいるのは、完全にウェイターじゃないですか。

だからそういう時はこう言いました。「イラストウェイターの伊野です」ってね。

……ダジャレだよ!今月の「ぼくの神保町物語 イラストレーターの自画像」は日記帳仕立てです。