伊野孝行のブログ

ハート展と元号雑感

ゴールデンウィーク真っ最中なので今週のブログは休む気まんまんだったけど、ちょうど今日で平成も終わることだし記念に更新しておこうかな。

まずひとつお知らせを。ただいま渋谷の東急百貨店本店にて「第24回NHKハート展」が開催されております。私は月岡凛さんの詩に絵を描きました。ハート展はこのあと各地を巡回します。よかったら足をお運びください。

主催者の要望としてハートをモチーフにして欲しいとあったので、おばあちゃんの後ろのカーテンがハートの形になっています。
ぼくのおばあちゃんももういません。大学4年の時、「就職しないでイラストレーターになる」とおばあちゃんに伝えると「いらすとれーたーってなにや?」と聞かれて困った。「う〜ん、絵を描く仕事なんやけど……」と答えあぐねていると、ふと「市政だより」が目に入り、それをパラパラと見せて「ここに描いてあるような絵を描く人のことや」と言ってしまった。よりによってものすごくつまんない絵を見せちゃったな。おばあちゃんは「……なんや、ようわからんけども、就職しい」と悲しそうな顔をしていた。
イラストレーターになるのに予定を大幅に上回る時間を要してしまったため、おばあちゃんは私が今こんなに立派になっているのを知らずに死んだ。「市政だより」のようなあんなつまんない絵を描いていると思われたままかもしれない。あの世に「天国だより」でもあればノーギャラで描きたいものである。
ウチの父がたの祖父母は明治生まれで、母がたの祖父母は大正生まれだった(さっきのおばあちゃんはこっち)。祖父母たちの生まれ年は覚えてないが、明治の終わり頃と大正の初め頃に生まれただけで同世代だ。祖父は二人とも戦争に行っている。
でも子供心に明治と大正は違う色だった。流れている時間が違う感じがした。
一括りに明治といっても45年もあるので、序盤中盤終盤ではかなり様子が違う。では明治20年と明治40年ではどう違うかと言われてもパッとわからない。夏目漱石は慶応3年生まれで翌年が明治元年なので、だいたい漱石が20歳の時、40歳の時と考えればいいだろう……といってもどう様子が違うのかやはりわからないが(笑)。
きっと私が80歳くらいなった時、若い世代にとっての昭和は、ぼくらの明治のようなもので、大雑把にしかわかってもらえないんじゃないかと思う。
昔=昭和。
「おじいさん昭和生まれですか。やっぱりみんな着物着てたんですか?」とか「戦争大変でしたでしょう」とか「学生運動で暴れたクチですか?」とか聞いてくると思う。元号で時代が一括りにされることによって生じる混乱。こういう時間の共有は日本だけの特殊なことで、ぼくは面白い。
「いやいや、それも昭和だけど、ワシャ全然知らん。昭和は64年もあったんだ。しかし、ワシはネットのない時代を知っておるぞ」と言うと「ネットがないって、それどんな感覚なんですか?」と食いついてくるに違いない。当たり前に見聞きしていたことを言うだけで、時代の証言者になれるのだからせいぜい長生きしたいものだ。