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伊野孝行のブログ

芸術に似たもの

上野の森美術館ギャラリーでやっていた展示が終わった。わざわざ足を運んでいただいた方にはお礼を申し上げます。
絵の解説をするのはまことに野暮なこと。出来映えこそがすべてであり、意図があってもつたわらなければ言うだけ恥のかさね塗り。また今回は100号サイズの絵であるため、ブログにのせるようなサイズで見せても意味がほとんどない。抽象画のポストカードを買ってもまったくおもしろくないのと同じだ。大きさこそが今回の一番の見せどころだったので、現物を目にしていない人はいっさい文句をつけてはならないよ。わざわざ足を運んで見にきてくれた人はどんな悪口を言ってもらってオッケーオーライだ!このような形で展示した。右端にある小さい絵は、作品の複写(iphoneで写しただけ)です。この形はPDFファイルを開いたときの画面を模している。PDFファイルも右端に小さいサムネイルが出る。ふだん見慣れているパソコン内の景色を引用してみた。また、大きさの違いから受ける印象の差、というものもサムネイルと実物の100号の画面を見くらべることによって感じ取ってもらえればと思ったのだ。それに、これは日めくりであるから、他の絵も一応どんなものかわかるようにしておいたほうがよいと思った。1日目のこの絵は、かのジャクソンポロック氏がやったような、中心や奥行きがなく全面を覆うオールオーヴァーな画面作りを「抽象」ではなく「盆踊り」でやってみたかった。それが作品意図であーる。2日目、盆踊りの絵をめくると、この静物画があらわれる。芸術とは、かの岡本太郎氏も言うように「なんだこれは!?」と思わせることが大事なので、なんかヘンな感じのする静物画というものを描いてみたかった。これは電化製品の梱包材で、たぶん小型ラジオかなんかが入っていた紙製のものだ。実物は10センチ四方に満たないほど小さい。それを100号にしてみたらヘンな感じがすっかな〜?と思って…。3日目はこんな絵。シュルレアリスト達がヘン顔を決めて写真を撮っていたので、それを真似して自画像を描いてみただけ。画材は木炭を使った。100号サイズ1枚を描くと木炭が1本と半分くらい無くなってしまう。どんどん削れてちいさくなっていくのが気持よかった。4日目はこの絵。100号にしてもっともインパクトのあるのは「顔」だろうか?と思って制作。今回の他の出品者の方々は画家の人なので、似顔絵はふだんお描きにならないはずだ。ここはイラストレーターの小技でも見せておくか。似顔絵は輪郭や髪型が似せるときに重要なポイントになってくる。しかし、ここではあえてそれらを描かなかった。

5日目。これも2日目の静物画と同じ趣向。これは発泡スチロール製の梱包材。横のものを縦にしてある。もっと大きい300号くらいの絵にすればさらにヘンな感じがするのではないだろうか。まだまだ小さい。ちなみに100号はふすま2枚分くらいだ。6日目。かのマックス・エルンスト氏のコラージュのような、なんだか不思議な絵にしたかったのだが、意外に自分はシュールな絵作りがヘタであった。エルンスト氏は教科書に使う銅版画を切り貼りしてまことに意味不明な絵を作った。絵画はもともと意味の読みとれるものであったが、シュルレアリスムの頃から、絵の意味なんて読みとれなくてもいいじゃん、いや、意味を読みとられるようじゃあまい!なんてことになってきて、それは今の現代美術にも受け継がれている。意味が読みとれるということは、言葉で理解できること。理解される時点ですでに新しくない。新しいものであることを命題にしている現代美術では、鑑賞者の言葉にからめとられているようではあまい!…とわざと意味が読みとれないように作っているにちがいない。なので難解に思われているだけ……そう勝手に自分は決めつけているのであります。イラストレーターはその逆で、意味が誤解なく読みとれるように絵を作る。だから頭の使い方を逆にすれば、「芸術に似たもの」なんて簡単に作れるだろうと思ってたけど、やってみたらむつかしかったネ。なにごとも経験をかさねないと。7日目の最終日はこんな絵。かの伊藤若冲氏の虎の絵を元にシュールな絵を作る予定だったのだが、途中で失敗したので、グチャグチャやってスプレーとかもかけてテキトーに終わらせた絵。制作意図とは離れてしまったが、「絵になってる」「絵になってない」の境目はどのへんから訪れるのか?グッヂャグッヂャやっててその境目が来たときに筆を置いたつもりだったのだが、ほんとうに境目はきていたのだろうか…?というわけで、7日間の「芸術に似たもの」をつくる試みは終わった。

来場者の中には「イラストだとか自分自身を卑下する必要はない。並の画家よりよほど絵になっている」と言ってくださったキュレーター氏もいらしたそうだが、いや、べつに卑下してないんだけどなぁ〜。でも世間ではイラストなんてのは下に見られてるんだな〜。ぼくは、もしイラストレーションも芸術だと言う必要があれば、ふだんイラストレーションとして描いている絵そのままを芸術だと言ってさしつかえないと思う。わざわざアートっぽい絵になんかする必要はない。アートっぽい絵を描いてイラストレーションの幅を拡げたっていうのは、そもそも現代美術に負けている気がするのだが…。初日と最終日くらいしか顔を出せなかったが、上野という場所は街の中のギャラリーとちがって、いろんな人種の人がたくさん来る。