伊野孝行のブログ

ザ・ベスト展!と一休さん

人形町って日本橋のすぐ隣なのに観光地っぽくないところがいい。

先日、青山界隈のとあるギャラリーに絵を見に行ったら、誰かお客さんがお土産に持ってきたどら焼きの、箱だけあった。

箱自体を「大福帳」に見立てたデザインで、その箱がいいから箱だけとっておいてある、ということだった。中身のどら焼きはない。

「すご〜く美味しかったよ」と言われて、箱しかないのがますます恨めしい。僕はつぶあんの和菓子が大好きである。
聞けば人形町のお店だという。しかし箱のどこにも店の名前が書かれていない。ただ大福帳と大書してあるのみ。そのいさぎよさに惹かれて、ますます食べたくなった。
今は、その店が「清寿軒」だという調べはついている。
来週人形町に行くから、絶対に食べよう!(どら焼きが入った状態。写真は勝手にネット上のものを無断拝借。シェアというのだろうか、シェアというと一気に罪悪感が減る。)
人形町は最近なじみの街になりつつあるのだ。
それは人形町(日本橋堀留町)の「Vison’s」というギャラリーでイラストレーターの企画展が2014年から、年に2回開催されていて、ちょっとした手伝いなんかもしているからだ。
このギャラリーは阿佐ヶ谷美術専門学校の持ちもので、同校でタイポグラフィーの授業をしているグラフィックデザイナーの日下潤一先生が企画展のテーマを決めてイラストレーター達に描かせているのだ。
描かせている……なんて書くと「伊野くんはひどい!みんなのことを思ってやっているのに」と日下さんはおっしゃるに違いない。
確かに日下さんは1円の銭もとらないボランティアで、DMや小冊子のデザインももちろん無報酬。そんな奇特な人に対して、描かせている、なんてひどいことを言ってはいけない。
いくら日下さんが強引にひっぱったとしても、絵は、描かせられるほど単純で簡単なものでもないのである。
2年続けて計6回やった企画展の、ザ・ベスト展が来週から開かれる。
日下さんが考えた展覧会のタイトルはこうなっています。
「こんな絵を描いた 自作ベスト+新作展」
参加した我々はやはり自発的に「描いた」のである。この DMを見て強く思った。だってそう書いてあるんだから。「絵は一人では描けないよ」これは唐仁原教久さんがよくおっしゃっている言葉だ。
この言葉の意味を僕は身にしみて知っているつもりだ。
人間は一生をかけて、ほぼ同じところをぐるぐる回っているだけ……というのは、人生を半分以上生きれば、誰でも思い至る感想だ。
ぐるぐる回る軌道をちょっとでも変えてくれるきっかけを無下にしてはいけない。そのきっかけはいつやってくるのか。待ってもいない時にやってくるきっかけを人は「おせっかい」というかもしれない。
おせっかいな人がこの世にいなかったらどうなるだろう。
ここに二人のよく似たキャラクターに登場してもらおう。
一人は中里介山の「大菩薩峠」の主人公、机竜之助。
もう一人は柴田錬三郎の眠狂四郎。
眠狂四郎は机竜之助をモデルにして柴錬がこしらえたキャラクターなので、容姿はよく似ている。大映映画ではどちらも市川雷蔵が演じている。どちらが机でどちらが眠かわかりますか?机竜之助は、物語の冒頭ではわりと積極的に人と関わるのだが(どんな関り合いかというと、剣術の試合相手の妻を水車小屋に拉致して犯したりする)だんだん巻が進むにつれ、殺人以外はほぼ流されるままに生きていく。
かたや眠狂四郎は無頼の徒と名乗るくせに、始終おせっかいに人と関わっちゃうのである。
「大菩薩峠」は机竜之助のだんだん出番が少なくなっていく上に、流されるままに生きているので、どうしても話が退屈になってきて、12巻あたりで僕は挫折した。しかも2回も。「眠狂四郎」は小説でも映画でもみなさん楽しんでいる通りだ(白状すると「眠狂四郎」の小説は1冊しか読んでない)。
はい、どうですか?
ほら、おせっかいな方がいいじゃないですか!おせっかいな人がいると話や人生が展開するんですよ……まぁ、途中から強引な例えだなと思ってましたが。それに私は机竜之助のキャラの方が好きです。
今日宣伝したのは他でもありません。17日の16時からトークショーがあるのです。
参加者のほとんどが顔をそろえるトークショー。プロレスのバトルロイヤルのように盛り上がればいいのですが、さてどうなるでしょう……とても心配です!
僕は田原総一郎よろしく司会のような役をやらされるので、ことのほか心配です。お客さんが来るのかも心配。
自由な言論空間の中で、イラストレーターのタブーに斬り込み、真剣勝負で言葉のやり取りをする!1000円を払ってくださった方に楽しんでいただけるよう、がんばります。どうぞよろしく。
どら焼きを買いに来るついでに来てください!有名な親子丼の店ほか、人形町には老舗がいっぱい!
さて、今週の一休さんは?
第二十三則「偉くなるって恥ずかしい」です!
物語も終盤。第4コーナーを曲がりました。ここからは一話も見逃してはなりません。
今回の見どころはEテレのサイトで読んでいただくとして、はい、ここでは極私的な自分の知り合いに向けての見どころを書きましょう。
見どころ、それは、このわたくしめがカメオ出演(?)しているところです!しかもこれから最終話までずっと出る。
今まで、一休さんの弟子といえばマル、サンカク、シカクみたいな頭の形をした雑魚キャラ(この弟子たちを描くのがけっこう楽しい)だったのですが、ここにきて初めて名前のある弟子が登場します。
その弟子の名は没倫(もつりん)。
さてこの没倫のキャラをどうするか相談した時に、アニメーターの飯田さんが「僕は伊野さんをイメージしてましたね、だって伊野さんも◯◯◯◯◯だから」と言いました。◯◯◯◯◯というのは次回以降のネタバレになるので差し控えますが、その意見を聞いて一同納得。「大丈夫ですか、伊野さん的には?」とディレクターの藤原さんに聞かれて「はい、みなさんがそう言うなら」と答えました。内心では「声優はやらなくていいんですかね?必要なら……」とまで思っていたのですが、そこは誰も求めてませんでした。当たり前だ。
この人が没倫です。似てますかね?