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伊野孝行のブログ

ちくちく第2回/鼠

「芸術新潮」で連載中の「ちくちく美術部」、今月は東京国立近代美術館でやっていた「生誕110年 片岡球子展」(ただいま愛知県美術館に巡回中)を観にいった感想です。片岡球子は今までちゃんと見たことがなかった。ここではセリフのないバージョンを載せておきますので、興味のある方は書店でどうぞ。ところでこの連載、2色ページの掲載で、毎回特色がかわる。今回はデータ作りに失敗したようで、誌面に印刷された絵は暗〜い感じになってしまった。

最近はデータまでこちらで作ることが当たり前のようになってしまったが、自分で2色分版しないで、印刷所でやってもらったほうがキレイにいくのではないかと思い、大日本印刷の工場の人と相談したが、2色分版はプロでもなかなか難しいとのこと。今回のようにあまり混色しないほうがうまくいきそうだ。

さて、これは半年くらい前に終わった「野性時代」で連載していた赤川次郎さんの「鼠」シリーズの扉絵。挿絵を描こうと思って原稿を読む場合、頭の中に映像をうつし出して読んでいる。「あ、ここは絵になる」という場面をいくつか候補にして、そこから絞っていく…わけなんだけど、いつもうまくはいかない。たいていうまくいかない。

誰でも、夢の中で現実のような世界を見ることができるわけだから、頭の中に映像を描くことはみんな出来る。映像をそのまま引っぱり出してきて、定着させるって作業が得意な人を一般的には絵が上手という。

河鍋暁斎は描くものをよく観察して自分の中に入れてしまってから、後でそれを自在に描き表したそうだ。暁斎が絵を描いているところをまわりで見ていたら、この人何も見ないでよく描けるな〜と感心するにちがいない。でも暁斎の頭の中にはクッキリと見えているんだろうと思う。

ぼくも頭の中ではイメージがあるのに、いざ、絵にしようとすると急におぼろげになってしまう。しかし、絵は暁斎のような特殊な才能がある人=うまい人というような単純なものでもないので、そういった才能を別段うらやましいとは思わないが、あれば便利だなとおもう。