伊野孝行のブログ

伊藤若冲特集

ただいま発売中の「芸術新潮」で伊藤若冲のイラストレーションを描いてます。伊藤若冲は奇想の絵師。それならちょいと奇想のイラストでもいいかな?と…すこしやりすぎた見開きになってしまいました…。みょうちくりんな絵ですが、史実に基づいた場面を描いております。くわしくは「芸術新潮」でご確認を。他にも「若冲絵暦」と題した年表にも7点描いてます。ところで「芸術新潮」以外にもすでに3冊伊藤若冲を特集している雑誌があります。「聚美」「別冊太陽」「Pen」につづいて「芸術新潮」は4番手。なぜこぞって特集をやってるかというと、ちょうどサントリー美術館で「生誕三百年 同い年の天才絵師 若冲と蕪村 」という展覧会をやっているからです。昨日、展覧会を見てきました。月曜の昼過ぎにもかかわらず大盛況。月曜日は他の美術館が休みだから、余計に混んでいたのかも。とにかくスゴイ人気なんですよ、伊藤若冲は。片方の与謝蕪村だって人気はあるはずなんだけど、異常に人気なの、若冲が!伊藤若冲と与謝蕪村が同い年で、しかもお互いものすご〜く近所に住んでいた、という事実を今回はじめて知りました(はっきりと交流をしめす記録はない)。エピソードとして聞くだけなら、「ほう〜、そうなんだ」くらいにとどまるけど、実際に2人の絵を並べて見るのはとてもおもしろかった。僕の中で二人は比べる対象ではなかったのに、この展覧会のおかげで否が応でも比較して見れた。二人はとても対称的。若冲は人物画がとても少ない(ぼくは若冲の人物画はあまり好きじゃない)。蕪村は人物大得意。中国山水や俳諧の世界を楽しそうに遊んでいて、どこまでも広い。

若冲は動植物をこよなく愛する少年だった(子ども時代に昆虫好きだった人に変わった人多し、という説もあり)。いまではテレビの自然ドキュメンタリーなどで、動植物の小世界に、想像以上の色や形のおもしろさ、美しさがあることはみんな目の当たりにしているが、三百年前の若冲の絵はまさにその世界。狭い世界のなかに広がりがある。若冲はちょんまげ姿の日本人など描きたくない、とも言っていたようです。

ぼくも小学5年になるまでは、人間の友だちより、虫や魚と親交をもっていた孤独な子どもだったのですが、「カマキリのカッコ良さにくらべて、人間はなんてカッコ悪いんだろう」とよく思っていました。その気持ちを死ぬまで持っていた若冲はやはりそうとうな変わり者です。

ぼくはその後すっかり宗旨替えして、人間描くの大好き、むしろリアルな昆虫とかメンドクサクて描きたくない大人になりました。若冲の色使いはみなさん知るところですが、それよりも蕪村の色使いが不思議でした。金箔をつかってるわけじゃないのに、画面が光っているように見えるのはこれまでも体験しましたが(照明の影響もあるかもしれない)、隣り合う色の組み合わせや、バックの色の効果、などを見て蕪村はカラリストだなぁと思いました。