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伊野孝行のブログ

歴史を学びたい

昔はこれでもいっぱしの歴史通であった。
昔……というのは小学3年生の頃である。他の子ども達が漫画やアニメに夢中になっているのを横目に、学校の図書館で、豊臣秀吉、織田信長、徳川家康の伝記を借りては読んでいたものである。
だが、悲しいことに私の歴史の知識(特に戦国時代)はその頃で止まってる。
小学4年生まではほとんど友達がいなかったので、自分独自の文化圏を作っていたのだが、5年生になって、急に友達ができ、私も他の友達と同様に漫画やアニメに夢中になってしまったからだ。
フツウの小学生になっちゃったわけ。
去年も大河ドラマ『真田丸』を見て、「真田、真田ってよく名前を聞いてたけど、こんな一族だったんだ〜」ってやっと知ったくらいの歴史知らずなのだ。
イラストレーターとして時代物や歴史物の仕事もしているのに、そんなのでいいのだろうか?
そりゃアカン!でしょう。(↑日本史に限らず、今までよくわかってないまま歴史上の人物をたくさん描いてきてしまった。これは秦の始皇帝です)
イラストレーターとしてのデビュー作が童門冬二さんの新聞小説『小説 小栗上野介』の挿絵だったので(当時私は29歳、一回2千円のトホホな画料)、幕末〜明治はそんなに知らなくもないのだが、特に戦国時代以前、日本の中世となるとぜんぜんわかんない。
先日、最終回まで放送し、また同じ時間帯で再放送中の『オトナの一休さん』は室町時代の話である。
ちょうど応仁の乱の回を描いている頃に、呉座 勇一さんの『応仁の乱ー戦国時代を生んだ大乱』 (中公新書)がベストセラーになっていた。応仁の乱というのはなんだかよく分からないままだらだら続いた戦らしい…ということは知ってたので、この本を読めば、面白く理解できるのかも!と飛びついたものの、何度も途中下車したくなり、なんとか最後まで読んだが、歴史が面白い!という気持ちは一向に芽生えてこなかった。
後日、「芸術新潮」の私の担当者(れ)氏が『応仁の乱ー戦国時代を生んだ大乱』 を読みたいというので、差し上げた。
お礼でも言ってくれるかと思ったら、(れ)氏はわざわざツイッターで
〈話題の『応仁の乱』、「ちくちく美術部」を弊誌に連載するいのっち氏からの下げ渡し本にて遅ればせに読了。いのっち氏は、なかなか乱が始まらない、人名多すぎでその個性の書き分けもないとか低評価のアマレビューみたいな文句を言ってましたが、中世史の本ってそういうもんです。ベストセラーというの は本来の読者でない人が買うからベストセラーになるわけで、当然、ミスマッチ多発と推測。数ある中世史本の中では普通に読みやすく、普通に面白いと思います。現代人から見て感情移入できる登場人物がおらず、著者も冷静ですが、畠山義就にだけは微妙な好感を寄せている風なのもいとおかし。(れ)〉
などと書き込んで、私の浅はかさを世間に知らしめてくれた(リツイートされまくっていた)のだが、人から本をもらっておいてなんてことをしてくれるのだ。(↑これは(れ)氏が担当している「ちくちく美術部」。今月は江戸東京博物館の『没後150年坂本龍馬』展を取り上げています)
(れ)氏は美術雑誌の編集者だが歴史博士と言っても良いくらいに詳しい。私が歴史を勉強したがっているのを知りこんなメールをくれた。
〈ここ数年の中公新書では、『贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ』がやはり15世紀日本を扱っていて巻を置く能わざる面白さでした。でもまあこれも、伊野さんが読んで面白いかどうかは……〉
とまたもや、嫌味な一言を添えて、本を紹介してくれた。
実際読んでみると、的が絞ってあるので『応仁の乱』ほどは退屈しなかったが、”巻を置く能わざる”には程遠く、やはり私にとって歴史の壁は高いままなのだった。
そんな私を歴史好きにしてくれる救世主のような本がついに発売された。5月20日のことだった。
本の名は『秘伝・日本史解読術』(新潮新書)。著者は荒山徹さんである。
この本は新潮社のPR誌「波」で『歴史の極意・小説の奥義』というタイトルで連載されていたのをまとめたものなのだが、連載当時から私は「あ、なんか歴史って面白そう……」という気持ちになっていた。その感触が残っていたので、待望していたのである。
あらためて本になったものを読んでみると、これこそまさに”巻を置く能わざる”面白さだった。
ま、私の感想などより、ご本人の紹介文の方が的確だと思うので、ここに貼り付けさせていただきましょう(クリックするとデカくなる)。
〈特筆すべきは、解説をほどこした歴史時代小説の名作を縄文から幕末まで年代順に配置したことで日本史の流れがイッパツで概観できるようになった工夫でしょうか〉
とありますが、小説を読んで興味を持つというのはナイスな入り方ではないですか。考えてみりゃ、いきなり私が歴史学者の先生の論文みたいな新書を読んで面白いと思うのは相当にハードルが高い。
荒山さんがオススメする歴史小説を読んでいくのが、今年の趣味の読書の方針なのです(八木荘司『古代からの伝言』、杉本苑子『檀林皇后私譜 』、永井路子『王朝序曲』、三田誠広『桓武天皇―平安の覇王』、吉川英治『新平家物語』、津本陽『夢のまた夢』……)。
でもせっかくなので、まずは荒山さんご自身の小説を読んでみた。『白村江』(PHP研究所)です。歴史の授業で習ったあの「白村江の戦い」だ。はい、もちろんぜーんぜんよくわかってない。最初から、余豊璋とか金春秋とか聞いたこともない名前の人が出てくる。あ、蘇我入鹿は知っている。けっこう分厚い本なので、読み通せるか不安だったが、3分の1を過ぎるあたりから、またまた”巻を置く能わざる”状態になってきた。手に汗握る冒険小説だったのだ。
教科書で名前だけ知っていた「白村江の戦い」は今ではすっかり頭の中に映像で描ける。なお、荒山徹さんは『白村江』で第六回歴史時代作家クラブ賞を受賞されております。パチパチ!
そしてもう一つ付け加えるなら、荒山徹さんは私が2013年に講談社出版文化さしえ賞をもらった時の小説『長州シックス 夢をかなえた白熊』をお書きになった方なのです。

そしてさらに付け加えるなら、荒山さんは毎回「オトナの一休さん」の感想をツイッターで書いてくれるのです。だからって、お礼の意味で本を紹介しているわけではありませんよ。

スカーフと一休さん

みなさんGWいかがお過ごしですか?

私は今まで一度も有給休暇というのをもらったことがありません。バイト時代も今も、休みの日=無給なので、働かなくても金がもらえる有給休暇に憧れています。

一度だけ有給休暇がもらえるチャンスがありました。

10年ほど前キンコーズで半年だけバイトをしていた時のことです。キンコーズはちゃんとした会社なのでバイトにも有給休暇がつくことになってました。キンコーズは当時、求人をある人材派遣会社に委託していたので、私はキンコーズで働きながらも、その人材派遣会社からお給料をもらっていました。労働条件はキンコーズに直接雇用されている人と全く同じでした。

やっと半年が過ぎ、有給が5日ほどつくことになったので、どう使おうかと、楽しみにしていました。ところが、ちょうどそのタイミングで、キンコーズとその派遣会社は契約を解消してしまったのです。

派遣会社から電話がかかってきました。

「もちろん、伊野様には引き続き、キンコーズ様で働いていただけるのですが、そうすると伊野様とキンコーズ様とで再度契約を結んでいただくということになります」

「はぁ……ってことは今まで半年間働いて、やっと有給休暇がつくことになったんですが、それも白紙に戻るということですか?」

「そうですね。そういうことになります」

「え〜!私、有給休暇だけを楽しみに働いてたんですけどぉ〜」

というわけで、有給休暇はまぼろしと消え、ムカついたのでキンコーズを辞めてやりました。

さて、主に関西方面の方にお知らせです。

「しあわせのスカーフ」展

ウラン堂ギャラリー & galerie6c 合同企画展、30人のクリエイターによる正方形のメッセージ。苦楽園口駅前の2つのギャラリーを巡って楽しむ「しあわせのスカーフ」展というのに参加します。2017.5/10wed〜5/28sun

「しあわせのスカーフ」展はコチラ!

これはスカーフのデータ。古代中国をモチーフにしております。これはバンダナ。茂田井武をモチーフにしております。どっちも絵は使いまわしですけども。これは去年のマン・レイのスカーフとゴッホのバンダナ。

「ウラン堂」さんは『画家の肖像』の巡回展をやらせてもらったギャラリーです。

さて、『オトナの一休さん』見てますか?

友達も「あ、ごめん、最初は見てたけど、最近は忘れてた」とか「え、シーズン2もやってるの?」とか油断がならねぇ。

シーズン1は時系列にあまり関係なくエピソードを並べていましたが、シーズン2は時系列に沿って話が進むのです。だから1回たりとも見逃してはならないのでございます。

今日(5月2日)も夜10時45分から放送されるよ!今回は一休は兄弟子の養叟とマジで大喧嘩します!次週は、そんな兄弟子の養叟が死んじゃう!再来週はいよいよ応仁の乱がはじまる!これは見逃せない!でも5分間番組なので普通は見逃してしまう。だから毎週録画してね〜。

オトナの一休さんはコチラ!

 

オトナの一休さん2

本日4月4日(火)22時45分から『オトナの一休さん』のシーズン2がスタートします!シーズン2は二枠あって、放映日時は毎週火曜の22時45分毎週金曜の11時45分です。ついに健全なお昼の時間帯にも進出したわけです。

シーズン1が放映される前には、LINEニュースをはじめ各ネットニュースに取り上げられたり、ホリエモンがいいねと言ってくれたり、関係者一同、狂喜乱舞したものですが、シーズン2直前は静かなもんですねぇ……ていうか、宣伝が「他力本願」ですなぁ、仏教だけにね……。

というわけで、誰も見ていないに等しいこのブログでもガンバって宣伝いたします。

シーズン1では、如意庵の住職を請われた一休宗純が、商人たちとズブズブになっているお寺の実態に嫌気がさし、たった十日で住職をやめ、旅に出てしまうところで終わりました。

あれから半年後……狂った風とともに一休宗純は来たりぬ!(第十四則「帰ってきた一休さん」より)
シーズン1で憎めないクソジジイっぷりを見せつけてくれた一休和尚ですが、シーズン2でもそれは相変わらず。でも、室町という時代は、いま大流行のあの「応仁の乱」が待っています。
中公新書のベストセラー、呉座 勇一著『応仁の乱 – 戦国時代を生んだ大乱 』はすでに28万部を突破し、20秒に1冊売れている!と、このまえ電車の広告で見ました。お読みになりましたか?
かくいう私もその1冊を買った者です。ちょうどタイムリーに『オトナの一休さん』で応仁の乱の絵を描くところでしたから。
しかし、自分に歴史の知識がなさすぎるのか、『応仁の乱 – 戦国時代を生んだ大乱 』は大乱が始まるまでの文章がちょっと不親切で、よく分からない固有名詞や、似たような名前がポンポン出てきて、名前も最初はルビがふってあるのですが、次のページからはなくなってしまい、なんという読み方だったかわからなくなり、余計に頭に入ってこない。でも文章自体は読みやすく、ツルツルと読めてしまう。ハタと気づくと何も理解できていない……という具合で、何度か途中下車してやろうかと思いましたが、我慢して読みました。その甲斐あってか、大乱が勃発した後は、わりと面白く読めました。
他の「応仁の乱」の本と読みくらべたわけでないので、この新書がどれほど画期的なのか、自分ではよくわかりません。
それでも、一休宗純が生きた時代がどんな時代だったか、その一端をうかがうことはできましたし、読んで損ということは絶対になかった。ただ、これがなぜそんなにベストセラーになっているかわからなかっただけで……。
という話がしたかったわけではないのです。『オトナの一休さん』シーズン2ですよ。
シーズン2では、親しい人たちとの死別、先ほど言った「応仁の乱」による世の中の混乱、一休自身の老いなどがからまりつつフィナーレに向かっていくでしょう(まだ絶賛制作中です)。でも一休さんは人目を気にせず笑ったり、泣いたり、怒ったり、自分がわからなくなったり、恋に落ちたり……あの調子でやってますので、最後までお付き合いのほどよろしくお願いいたします!
(第十四則「帰ってきた一休さん」)より(第十五則「一休、自殺を図る」より)(第十六則「一休さんは強がり坊主」より)
登場人物・キャスト
一休宗純(いっきゅう・そうじゅん)=板尾創路/養叟宗頤(ようそう・そうい)= 尾美としのり/蜷川新右衛門(にながわ・しんえもん)=山崎樹範/弟子たち/=夜ふかしの会
スタッフ
作 ふじきみつ彦/絵 伊野孝行/アニメーション 野中晶史 飯田千里 幸洋子 円香/音楽 大友良英 マレウレウ

10月のオトナの一休さん

6月にEテレで3話だけ放送された『オトナの一休さん』がレギュラーになって帰ってくる!

毎週水曜日の午後10時45分から放送です(10月5日スタート)。5分間番組なので、なかなか気合を入れないと見逃してしまいますので、ぜひ毎週録画の予約を入れておいてください。
世に広まっている一休さん像とは、すなわちとんち小僧。有名なアニメにより日本だけでなく海外でも人気があるとか。
ところが史実の一休さんはポクチンはしません。ではどんな人だったかって?それを再びアニメ化して伝えるのが『オトナの一休さん』なわけです。%e4%b8%80%e4%bc%91%e7%94%bb%e5%83%8f1
いや〜、本当にスゴイっすよ史実の一休さんは。アニメとして脚色している部分は当然ありますけど、基としている文献に書かれていることがすでに滅茶苦茶なんですから。
私は脚本を読んで、ディレクターとアニメーターと相談しながら絵にしているわけですが、あまりに面白い人なので自然に一休研究をしたくなってきます。本当にこんな人がいたんだな〜と、感に打たれます。勉強するなら今でしょ、なんですけど、何しろ私一人でアニメの絵を全部描かなくちゃいけないんで、なかなか時間が取れません。%ef%bc%91%e5%89%87%e2%88%92%ef%bc%92%ef%bc%96
そんな私が、だいたい想像するにですね……禅がロックだとすると一休宗純はパンクかな?ロックンロールの本質を思い出せ!っていうのがパンク、だと私は理解しているのですが、『オトナの一休さん』を見ると一休さんが伝えたかった禅の本来の姿が解る?いや、それすらも飛び抜けて自由?……描いている私にも未だハッキリとは掴めません。
無縄自縛(むじょうじばく)という言葉が『オトナの一休さん』には時々出てきますが、「ありもしない縄で己を縛るな」というのが一休さんのメッセージです。
◯10月5日第一則「クソとお経」
弟子たちが読経をしているところに現れた一休さん。持ってきたのは、まだ湯気が立っているクソ。その下にはなんとお経が!%ef%bc%91%e5%89%87%e2%88%92%ef%bc%96%ef%bc%91%e5%89%87%e2%88%92%ef%bc%92%ef%bc%92
◯10月12日第二則「すずめの葬式」
涙を流しながら読経する一休さん。誰の葬式かと新右衛門がいぶかると、なんとかわいがっていたすずめの葬式だった!%ef%bc%92%e5%89%87-%e2%88%92%ef%bc%92%ef%bc%92%e5%89%87-%e2%88%92%ef%bc%91%ef%bc%92
◯10月19日第三則「思春期の一休さん」
新右衛門が一休さんのとんち小坊主エピソードをたずねると、兄弟子はそんなものは皆作り話だと否定。では本当の一休さんはどんな少年だったのか?
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◯10月26日第四則「ストリート禅問答」
一休さんと新右衛門が京の町を歩いていると、見知らぬ僧侶が禅問答を仕掛けてきた。「市中に隠ありや否や?(町の中で修行する僧などいるのか?)」さあ、一休はどう答えた?%ef%bc%94%e5%89%87%e3%83%bc%ef%bc%97%ef%bc%94%e5%89%87%e3%83%bc%ef%bc%98
第一則〜第三則は6月に放送されたのでご覧になった方もいらっしゃると思います。第四則はなんと一休さんが歌っちゃうもんね〜。もちろん作曲は大友良英さん。お楽しみに!
配役やあらすじ、スタッフ紹介、ディレクター藤原さんと脚本家ふじきさんへのインタビュー、などは下記の番組サイトでどうぞ〜。

プリンセスの物語

毎週ブログを更新すると決めてしまったので、仕方なく今週も更新します。

アクセス数も横ばいで、いつまでたっても無名なまま。有名になりたいなんて気持ちはとうに消えてしまったけど、それでも業界で生き残っていくには、ある程度名が知られていないと、仕事を頼むときに思い出してももらえない。

それに有名だと何かしら楽なところもあるのではないかと推測する。あつかいや何かの面で。

先日もとある展示のオープニングに行ったときに、平澤一平さんがそこにいた若いイラストレーター(女性)に

「あ、〇〇ちゃん、紹介するよ、伊野くんです、知ってるでしょ?」と紹介してくださったが「知りません」とにべもないお返事だった。

(いくら興味がなくても、せめて本人を目の前にしたら「すみません、存じ上げなくて。私〇〇と申します」くらい言うのがそういう時の八百長ではないんかい……)と内心では思ったが、自分の口からは

「いえ、知らなくて当然です。知ってる方がおかしいです。私は、無名な人間なので」という言葉がスラスラ出てきた。逆にペコペコ頭を下げておいた。

きっとこちらの内心などはバレバレだろうし、よくある出会いの一例にすぎないようなことも、サラッと流せない自分のこのウザイ性格が、ほとほと嫌なのであるが、同じ業界の若手にも認知されていないようでは、まだまだオレも頑張らねばならない……という燃料にもなるのである。

はい、今週の枕はこれにて終わり。書かなくてもいいことまで書いて、余計に人気がなくなっちゃうよ……。照手姫1今週はずいぶん前に描いた絵を載せます。去年の仕事です。主婦の友社から出ている「頭のいい子を育てる」シリーズ。今回の本は『お姫様や魔女がいっぱいでてくるおはなし』です。絵は『照手姫と餓鬼阿弥』より。照手姫3もう一つはギリシャ神話より『アドリアネーの糸』です。アリアドネ1アリアドネ2どちらもプリンセスが主役のお話です。はい、そんなわけで今週はネタに困ったから、アップする機会を失っていたものでお茶を濁しました。

ついでに告知。大阪の「オソブランコ」さんで『一筆箋展』が開催されています(台湾にも巡回するってさ)。私以外の参加者の皆さん、クォリティ高いです。「リソグラフ」という印刷機を使って作るのです。そうするといい感じのチープな出来になるのです。上が仕上がりで、下がデータ。ちょっと青の指定が濃すぎたな。ino3伊野B見本伊野A見本伊野C見本

「一筆箋展」

会場 オソブランコ
(大阪市浪速区幸町1-2-36 2F)
会期 2016年9月3日~30日
時間 12:00-20:00 (土日祝-19:00) 水曜、第二土曜休日
あともう一つ告知あった。
毎年恒例の銀座のリクルートG8で開かれているTISの展覧会も今日より始まります。今年は『158人の漱石 百年後ノ我輩、こゝろ、それから……』にも出品しています。
2016年9月6日(火)~ 10月6日

クリエイションギャラリーG8〒104-8001 東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F TEL 03-6835-2260

11:00 ~ 19:00  日・祝日休館  入場無料

昔話法廷2016

昨年の夏、「もし昔話の登場人物が訴えられたら?」という斬新な企画とシュールな着ぐるみ(私は再現VTRの代わりに挿入される絵を担当していた)で大いに話題を集めたEテレの『昔話法廷』が今年も開かれる。

今回の裁判は「アリとキリギリス」「舌切りすずめ」「浦島太郎」の3本。放送は明日8月3日から。

昨年の放送した「三匹のこぶた」はドイツのミュンヘンで2年に一度行われる子ども番組のコンクール「プリ・ジュネス」で、世界各国の子どもたちの投票により第1位となり、「国際子ども審査員賞」を獲得したという。そして何故かグッドデザイン賞にもノミネートされたとかいう話も聞いたけど、私は結果を知らない。アリとキリギリス1修正この昔話法廷は人間が入った着ぐるみで裁判を行うので、絵も着ぐるみに合わせている。つまり、アリとキリギリスはあまり身長に差がない。アリとキリギリス3修正アリとキリギリスは昔から仲が良かった。ほら、子どもの頃はこうやって虫取りに夢中になったものである。虫のくせに……。さ、どんな展開が待っているでしょうか。裁判を乞うご期待。

舌切り雀1はい、お次は「舌切りすずめ」。アメリカの肥満児がアイスクリームを食べるように、すずめはおばあさんが米で作った洗濯のりを全部食べてしまった。舌切り雀11当然、おばあさんは怒り心頭!ヘッドロックで首を決めてすずめの舌を切った!確かに舌を切るにはヘッドロックしないとなぁ。浦島太郎1お次はご存知、「浦島太郎」なぜ浦島太郎が竜宮城に行ったかというと……浦島太郎5助けた亀に連れられて、なわけですが。これらの場面は今までに絵本などで繰り返し描かれたことでしょう。でも絵本には載っていない場面が「昔話法廷」では見られます。

「“アリとキリギリス”裁判」
NHK Eテレ 2016年8月3日(水) 午前9:00〜午前9:15(15分)

「“舌切りすずめ”裁判」
NHK Eテレ 2016年8月4日(木) 午前9:00〜午前9:15(15分)

「“浦島太郎”裁判」
NHK Eテレ 2016年8月5日(金) 午前9:00〜午前9:15(15分)

みなさんよかったら見てね〜!再放送もあるし、ネットでも見られるようになる(教材番組なので)と思います。

一休さんと曾我蕭白

昨日は「オトナの一休さん」第1則が放映されました。みなさん、見てくださいましたか?

私はテレビの前で緊張して待ち構えていたのですが、急にあくびが出て、眠くなってきました。緊張すると眠くなるタチなのです。IMG_1632

でも、はじまったらすごく集中して見ました(我が家には録画機器がないので、その分余計に)。大友良英さんの音楽とマレウレウさんの歌がつくと、雰囲気が変わりますねー。良い意味で気持ちの置き所を安定させない、つまり無縄自縛(むじょうじばく)から解き放ってくれる音楽と歌でした。
放送前からネットで話題にしてもらっていて、番組の制作に携わった人たちで集まった時に、「ありがたいねー」と話してました。どれくらいの人が見てくれたかわかりませんが、たとえば、視聴率1パーセントでも120万人の人が見たってことになる(この計算は合っているでしょうか?)わけで、そう考えただけでも頭がクラクラしてきます。私が普段、主な仕事場としている出版の世界とはケタが違うので、なんだかおっそろしいです。
……こうやって、注目されていると思っている自分がすでに恥ずかしいです。結局自慢話になっているところが、さらに恥ずかしいです。自意識過剰気味ですので、今週のブログはあっさりこのへんで筆を置くことにします。ではバイバイ。

と思ったけど、もう一つご報告。IMG_1621

先日「本の場所」で行われたトークショー、ご来場くださった皆様ありがとうございました。曾我蕭白の本物の絵を、ガラスケースも何もない状態で見ることができました。円山応挙も伊藤若冲も与謝蕪村も1点づつ出てました。コレクターの方の心の広さに感謝であります。トークは南伸坊さんが7割くらい喋ってくれました。まだまだ私のトークベタは改善されておりません。「オトナの一休さん」が始まるから気をつかっていただいたのでしょうか、会場のメインには曾我蕭白の描いた一休さんの肖像画(南伸坊さんと私の間にある絵)が飾られておりました。
曾我蕭白は「曾我蛇足十世」を名乗っていました。つまり自分は曾我派の開祖、曾我蛇足の十代目であると。これは蕭白による全くのデタラメなんですけど、実はこの曾我蛇足という人、室町時代に活躍した絵描きで、一休さんの弟子でもあったのです。そして一休さんは曾我蛇足の絵の弟子でもあったようです。お友達みたいな関係でしょうかね。一休さんの肖像画というのはいっぱいあるんですけど、曾我蕭白の描いた一休さん、全然似てないんですよね、笑っちゃうくらい。ハイ、おしまい。

特報!オトナの一休さん

Eテレで新感覚アニメ「オトナの一休さん」はじまります!アニメの絵を描いております。まずは6月に3本放映!

みなさんご存知の名作アニメ「一休さん」は日本だけでなく世界でも人気があり、特にお隣、中国では「最も親しみのある日本アニメ」というくらいに評判がいいらしいです。ところがちょっと待った!史実の一休宗純(1394~1481)は、ほんとは可愛らしいとんち小僧なんかではないのです!とんち小僧のイメージは江戸時代の説話集『一休咄』からつくられたフィクションなのです。

ZEN…それは究極の自由…すべてのしがらみにZENZENとらわれるな!

op2史実の一休さんは、禅宗の僧侶ながら、破戒の限りを尽くし、ぶっとんだパフォーマンスで室町時代の都びとをあっと言わせた人物であります。その、一見悟りとは無縁に見える一休の言葉や行動のすべてには、見てくれや形式にとらわれて安心する「無縄自縛(むじょうじばく)」な人々への身をもってのメッセージが込められているのでした。常軌を逸しためちゃくちゃな行いの中に、実は深〜い禅の教えがあったのです!「オトナの一休さん」は、知らず知らずに縛られている我々現代人の心を解き放ち、一日の終わりに見ることで、笑ってラクになれる5分間アニメなのです!1則−11第1則「クソとお経」放送予定日 6月6日(月)23時50分~55分 再放送6月16日(木)22時45分〜50分2則 −2第2則「雀の葬式」放送予定日 6月8日(水)22時45分〜50分 再放送6月20日(月)23時50分〜55分3則ー 5第3則「思春期の一休さん」6月13日(月)23時50分~55分 再放送6月22日(水)22時45分〜50分op4

「はまり役」という言葉がありますが、この「オトナの一休さん」の絵、120パーセント自分の素の部分で描ける感じがして、ノリノリです。「当たり役」にもなってほしい。そうすれば私もちょっとは有名になれるかもしれませんしね…。
「オトナの一休さん」は一休宗純の自作の漢詩集『狂雲集』や弟子たちがまとめた『一休和尚年譜』などを元にしています。
脚本はふじきみつ彦さんです。
まずはこの脚本がなければはじまりません。コント台本や不条理劇の脚本で活躍するふじきさんの書きおこす一休さんが、本質は外さないまま、アップトゥーデートされていて、すごくおもしろいです。
絵を動かしてくれるアニメーターは
野中晶史さん、幸洋子さん、飯田千里さん
のお三方が、一人一本を担当。それぞれの動きの持ち味の違いも楽しめます。この方たちに動かしてもらわないとアニメになりません。元祖「一休さん」がアニメなんだから、「オトナの一休さん」もアニメでなくてはならんのです!
そして豪華な声優陣!

一休宗純=板尾創路さん

蜷川新右衛門=山崎樹範さん

養叟宗頤=尾美としのりさん

そんでもって音楽は大友良英さん

みんな〜見てね〜!喝ーっ!1則−26

ちなみにこれが、本当の一休さんのお姿であります。一休さんのお弟子さんが写生して描いたらしいですが、私は日本美術史上屈指の肖像画だと思っています。早く国宝に指定すべきでしょう。
とんち小僧アニメ「一休さん」の中国人のファンの方が、この肖像画を見てこう言ったそうであります。「アイヤ〜!あの可愛い一休さんが、歳をとってこんなオジさんになっちゃったんだ〜」てね。IMG_1602

 

モランディ/長沢節

モランディを知ったのは20代の半ば頃、セツに通っていた頃だったかな?くわしい時期は忘れてしまったけれど、はじめて見た時はそりゃ驚いた。絵の冒険というのはチョモランマやアマゾンの秘境を訪ねなくても、ごく身近な庭のようなところで出来るんだなと思った。

練習曲がそのまま作品たりえるというか、細かい実験の差が、作品ごとの個性になっている。バッハの平均率クラヴィーア曲集を聴いてるようで気持ちいい。

バリエーションをつけまくった画家の絵よりも、逆にモランディの方が楽しめるかもしれない。同じような絵に見えるけど、みんな違う。間のとり方が無限にあるのを、目の前でやって見せてくれる。

先日、東京ステーションギャラリーにモランディ展を観にいったのだけど、意外に画集で見ていたときのほうが刺激的に感じた。ページをめくると次の作品がパッと現われる。その方がモランディの実験がくっきり見えた。

展覧会の広い部屋にずらっ〜と絵が並んでると、一つ一つの作品の差より、同じような絵が続くという空間の印象を先に受けてしまった。モランディの絵を並べるのはむつかしいのかもしれない。

いや、そのとき私は少し急いでいた。そもそもそんな見方はいけない。急いでいる奴には気づかない時間を押し広げて、そこで仕事をしているのがモランディなわけだから。モランディ静物画っぽくモランディの肖像を描いてみた。この絵は「画家の肖像」という作品集に入っている。「画家の肖像」はハモニカブックスより発売中です。クリック↓

「画家の肖像」はいつのまにかamazonで買えるようになっているではないか!

……なんだよ、モランディのことを語り出したと思ったら、おいおい、宣伝か〜い!

オマケにもうひとつ宣伝じゃーい。小説すばるで連載中の「ぼくの神保町物語」第2回は「長沢節信者」と題して、セツに通いはじめた頃の話を書いてます。IMG_1498IMG_1511思い起こせば昨日のことのよう……であるが、なんと22年も前の話であった。そして先生が亡くなってからもうすぐ17年。あの頃から気分は全然変わってないので、昔話をしている感じがまったくしない。最近は作文を書くにあたって、あの頃のことをよく考えているので、なおさら昨日のことのようだ。IMG_1512絵の隅に”This picture on Mr.HozumiKazuo’s work”と書き入れましたが、この挿絵はセツの第一期生、穂積和夫先生がかつてお描きになられた「セツ・モードセミナー案内図」を下敷きに、っていうかオマージュ、っていうかパクリ……はい、そんな絵です。IMG_1513細かいところは色々私なりに……描いてます。今年はこの作文のことで頭がいっぱいです。

読み物の連載はじまる

今日は2月16日、そして当たり前のことですが明日は17日。明日発売の「小説すばる」3月号で連載がはじまります。それも読み物の連載です。さっきポストをのぞいたら明日発売の「小説すばる」がすでに届いていて、どっきり。連載開始のおしらせは来週する予定でしたが、ゲンブツを見てしまって落ち着かなくなりました。来週までこの気持ちを引きずるのが嫌なので、今週の更新でお知らせしてしまおう。掲載誌が届いてこんな気持ちになるのは、はじめてイラストレーションの仕事をした時以来かも……。さいしょ掲載誌を手にとって、眺めてみましたが、表紙にも背表紙にも名前がなく、期待の低さがうかがえて、とりあえずひと安心。はじめてこの文章を読む一読者の立場になって、読もうと思いましたが、すでに何回も読んでいるので無理でした。おもしろいかどうか全然わからない……。

『ぼくの神保町物語 イラストレーターの自画像』と題されたこの読み物は、去年の秋に、人形町のビジョンズというギャラリーでやった展示が元になっています。わたしが19年間働いていた神保町の街のことを絵にした展覧会だったのですが、展示にあわせて原稿用紙で20枚ほどの文章も書き、冊子にして会場で売っていました。

展示を見にきてくれた集英社の編集者の方が、この連載の形につなげてくれました。第一回は「憂鬱なコーヒーボーイ」というタイトルで、神保町で働きはじめた頃のこと、つまりそれは、わたしがイラストレーターになる決心をした頃の話であります。まだ、物語自体が動いていないので、おもしろくないかもしれないです(いいわけ)。

神保町のことを書いた本は、これまでにもありました。ただ、それらのほとんどは古書店のことを中心に書かれているので、喫茶店のボーイの目から見た神保町の話は、今までにないはずです。そしてそのボーイはイラストレーターになりたい男で、なるまでにすごく長い時間がかかりました。同じところで延々と働いているのは情けない気分にもなりますが、おかげで街の定点観測ができていました。その間に街は変わりました。なにより自分も変わりました。街の話だけではなく、通っていた絵の学校セツの話や、絵の話、イラストレーションの話も入って、どちらかというと、そっちが主であるかもしれません。

これをうまく書き通せば、そこそこの読み物になることは自分でもわかっているのですが、いかんせん長い文章なんて書いたことがないので、一番の悩みの種。文章も書いて絵も描く、というスタイルは憧れでもありましたが、文章の方に慣れるまで時間がかかりそう。毎回8000字くらい書かなくてはいけないのです。書きあぐねたら、半分まで文章で書いて、残りは漫画にするのもアリ……それくらいの楽な気持ちで臨んだほうがいいですね。与えられたページ数だったら、文章と挿絵を自由にしていいと言われています。つづくそんなわけで、1年間くらい続く予定。本屋で見かけたら立ち読みでもしてください。

 

 

 

ほろ酔い茂田井トーク

【おしらせ】「茂田井武 日本橋〜paris」オープニングほろ酔いトークイベントが 3月1日(火)19:00~21:30にあります。場所は日本橋のギャラリーキッチンKIWIでおこなわれますmotai

↓以下、KIWIのサイトより転載。

【トークイベントの内容】
 郷愁とユーモア溢れるイラストレーションで戦後に人気を集め、
 いま再び評価が高まる早世の天才画家・茂田井武。
 近年では、江國香織の『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』や『いくつもの週末』装画に『トン・パリ』(講談社)や『古い旅の絵本』(JULA出版局)絵が使われています。
 そんな茂田井武が、幼年から青年時代を過ごした日本橋本町。その地ならではのエピソードと絵、その後渡ったパリでの暮らしと創作活動についてなど、茂田井武の研究家でもある広松由希子さんと、自他ともに認める茂田井武ファンで、「芸術新潮」などで活躍中のイラストレーター、伊野孝行さんが語り合います。
 茂田井武も食べたであろう日本橋の老舗の味と選び抜いたお酒をご用意します。

 たっぷりのお酒+食いしん坊が選んだ日本橋の老舗のつまみとごはん/5,000円(税込)
 ※21時半以降はキャッシュオンで追加のお酒をお召し上がりいただけます。
 ※会期中に計3回、お酒とおいしいモノが楽しめるトークイベントを開催します。

【展示の内容】
 茂田井武が日本橋で過ごした幼年からパリの修業時代を含む貴重な資料と、ポスター作品、絵本などをゆっくりご覧ください。グッズ販売もあります。
 会期:2016年3月1日(火)〜3月28日(月)
【日時】3月1日(火)19:00~21:30
【定員17名

【ゲスト・プロフィール】
 ◎広松由希子(ひろまつ・ゆきこ)
 編集者、ちひろ美術館学芸部長を経てフリーに。 絵本の執筆、評論、翻訳、展示企画などをおこなう。ボローニャ国際絵本原画展やブラティスラヴァ世界絵本原画展など、国内外の絵本コンペの審査員もつとめる。著書に『おめでとう』『茂田井武美術館 記憶ノカケラ』(講談社)「いまむかしえほん」シリーズ(全11巻 岩崎書店)など多数。
poche(絵本家 広松由希子のHP)

 ◎伊野孝行(いの・たかゆき)
 イラストレーター。1971年、三重県生まれ。スタイルにとらわれず自由に描くことをモットーにいろんな媒体で絵を描く。「芸術新潮」で『ちくちく美術部』、「小説すばる」3月号から『ぼくの神保町物語』を連載開始。第44回 講談社出版文化賞(2013年)第53回 高橋五山賞(2015年)。著書に
 『画家の肖像』(ハモニカブックス)など。 
「伊野孝行のイラスト芸術」

お申し込み・お問い合わせ▶▶▶
 ※メールフォームで送信できないときは、info@kiwi-lab.comへ直接ご連絡ください。

↑以上ここまでKIWIのサイトより。

e88c82e794b0e4ba95e6ada6efbc91この絵は茂田井武が「新青年」という当時最もモダンな雑誌に描いていた挿絵です。子どもの世界だけではなく、こういうあやしげな雰囲気の茂田井さんも私は大好き……というか、茂田井武はわたしの中では最重要画家の一人であります。でも日本美術史の本を開いても茂田井武の名前を見つけることはむつかしいでしょう。だから美術史なんて真剣には勉強する気がしない……という言い訳が成り立って、ますます私は勉強しなくなりそうです。しかし、歴史というものは固定されたものではなくて、常に書き換えられる可能性をもった生き物なので、いつかわたしの好きな画家たちにスポットが当たる日もくるかもしれない。でも、あんまり有名になって欲しくない。そんなわがままなファン心理……。

トークをご一緒する広松由希子さんは、茂田井さんのことをずっと応援し、研究していらっしゃるので、わたしは色々聞きたいことがあります。わたしは単なるファンなので、いいな〜、こんな風に描きたいな〜、う〜ん、どうやっても描けっこねぇや……だってオレは茂田井武じゃないんだもの……仕方ない……そんなことを繰り返しているだけ。

茂田井武はいかにして茂田井武になったのか?わたしはよく知らないままだ。日本橋の「越喜」という大きな旅館の次男坊として生まれた。戦前という時代はカラー映像で見ると、たいそう美しい。やがて実家の稼業は傾き、茂田井青年はパリへ渡り、日本に戻って「新青年」などで絵を発表しはじめる。その間、茂田井さんはいろんな仕事につきながら生活苦というのも舐めている。ざっと、こんなことくらいしか知らないけれど、もっと広松さんに教えてもらおう。e38282e3819fe38184e3819fe38191e38197

↑「伊野孝行ゑがく茂田井武」

さて、KIWIのトークイベント。

「たっぷりのお酒+食いしん坊が選んだ日本橋の老舗のつまみとごはん/5,000円(税込)」

高けぇ!と思った方も多いでしょうが、KIWIの主人、畠山さん(編集者)に聞くと、

「日本橋弁松の弁当、鮒佐(浅草橋のほう)の佃煮など、日本橋ゆかりの味をセレクトしようかと思っています。他にキッチン付きのスタジオとして、前もって作れる料理(当方イベントの定番料理)は用意したいなとも思っていて、料理担当と相談しています。既製品でも調理するものでも、うまいものを出しますのでご安心ください。」

たっぷりのお酒ってどれくらいですか?

「よく飲む方はベロベロになります。飲まない方には、ペリエ、アップルジュース、ご希望があればあたたかいお茶もご用意しています。」

つまり、食べて、飲んで3,000〜4,000円くらい払うバル並みの満足感はあるということじゃないか。そう思えば高くない!それにわたしは畠山さんとは親しいのだが、畠山さんが連れて行ってくれるお店、畠山さんが鍋会に持ってきてくれる食材というのは、必ず美味しい、ということをご報告しておこう。

というわけで、茂田井さんも食べたであろう、日本橋ゆかりの味をあじわいながらの、茂田井話いかがでしょうか?

長々と宣伝御免。

 

 

わたしと街の物語(終)

あー、展示が終わった、終わった!来てくださった方、ほんとうにどうもありがとうございました!!
人形町は江戸の中心地だけど、イラストレーションのギャラリーが点在している青山界隈(江戸の田舎)からはちょっと離れている。
気合いをいれて見に行こうと思わなければ、行きにくいところかな?だから余計に来て下さった人には心から感謝しております。おかげで冊子も完売しました。便利なネットの世の中だから、展覧会も、昔とはやる意味合いがちがうと思っています。単なるプレゼンの場ではないし。イラストレーションの仕事は自分からはじまることはない。でも展覧会ならゼロから自分ではじめられるのが楽しいところ。

綺麗なフォームで跳べるハードルなんて用意しても意味はない。跳べるか跳べないか危うい高さに設定すると面白いと思う。たとえ着地に失敗しても、そこは成功と大差ない地点になっているはずだ。すべてはテーマの決め方による。テーマは「お題」とはちがうな。モチーフを探しにいかないと。自分にむかって外からやってくるものに対して、自分の中からも盛上がってくるものが出てくる。ぶつかりあって作品が生まれるように仕向けてくれるもの、それがいいテーマだと私は思う。
自分のことは自分がいちばんわかっているつもりでいるから、逆に意外なテーマはみつけられなかったりする。実際、今回のテーマは自ら進んでやろうとは思わなかったもの。

ここのギャラリーでイラストレーターの展示を企画しているKさんに話を持ちかけられたとき、19年間バイトしていた街の話なんて、文章にはしてみたいと思ったけど、絵にしようなんて思わなかった。神保町の話なのに人形町でやるなんてややこしい、なんて最初はゴネてた。
でも、やって良かった。
意識しないでも人は街とともに生きていることが判明した。

とってもパーソナルなことばかりで、どれだけ人に伝えられるか苦心したけど、考えてみれば表現や芸術というのは、それが基本だと改めて思いました。ロンドンを描いた大河原健太君も、この展示のために絵がガラッと変わった。変わらざるをえなかった。それはテーマをこなすために。それがイラストレーターである。いつもの手慣れた手法を捨てて、愚直とも思える描写で、一年半いたロンドンの街や人を描いてくれました。
とてもカワイイ絵ばかり。感じが伝わる。こういう絵ははじめて描いたって言ってたから、そりゃヘタッピなところもあるけど、ヘタな絵はいつも気持ちと共にあるのです。技術は気持ちを伝えるためにあるべきで、ウブな気持ちをわすれた技術は空虚だろう。

技術なんてものは工夫してるとすぐに身につくものである…とヘタを装うテクニシャンのわたしは思うが…。大河原君にもこの展示が意味のあることになってもらわないと、引きずり込んだ私は寝覚めがわるい。今回も昔のバイト仲間が見に来てくれた。みんな絵に興味があるわけではないから、これまでの展示はちゃんとおもしろがってくれたのか心もとないが、今回はみんなが最も共感できる内容のはずだ。たとえバイトであっても仕事は楽しいにこしたことはなく、彼らがいたことで僕も楽しかったから、ちょとした恩返しができたことが、オマケとして良かった。

見慣れた街の風景を自分のアングルで描いたら、そこで過去にすでに会っていた人と、もういちど再会するような出来事もあった。それはまたお話する機会があれば。
おわり。

 

 

わたしと街の物語(開催中)

秋本番。一年を通してもっとも好きな季節である。真夏の猛暑日は近所のスーパーに行くだけでも、シンドイ。生き物にとって温度は生死に関わる条件であり、事実、熱中症で亡くなる方は大勢いるのである。今こそが、活発に行動してなおかつ快感を得られる時期である。さぁ、《伊野孝行×大河原健太 わたしと街の物語 神保町とロンドン》を見に出かけよう!23日初日。オープニングパーティーでにぎわう会場。当然のことながらほぼ知り合い。挨拶する大河原健太氏。「矢沢はさぁ…」と言ってそうな横顔の雰囲気が、この写真にはある。有名人と写真をとるときは腰をかがめて小者感を出すべし。古いつきあいの友人(おもに遠藤賢司ファンで構成されている)たちと。横からピースサインを出そうとするタイポグラフィの巨人。二次会で大河原君に説教されているのだろうか。神妙な顔つき。ナウなヤングに人気の大河原健太作品。伊野孝行作「イラストレーター残酷物語すごろく」に我が人生を重ねあわせて見入る中年男性。伊野孝行作「コーヒーボーイの日記帳」を笑いをこらえながら読みふける、小澤征悦に極似の中年男性(田嶋健さん)。いつも心にあたたかい太陽をもつ詩人、ロックンイラストレーターの小林ヒロアキさんも、大枚をはたいて新幹線で来てくれた。27日は関川夏央さん大竹昭子さんをゲストにむかえてのトークショウ!満員御礼。芸術家は才能で生きていると思ったら大間違いで、義理と人情によって生かされているのだ、とあらためて思わざるをえない。来てくださったみなさまありがとう!恩に着ます。背骨があしらわれたTシャツは、さきほど横からピースサインを出していたタイポグラフィの巨人、小宮山博史先生である。小宮山先生の発案でこのギャラリーのイラストレーター企画展は出発したのであった。会場は5分に一回爆笑の渦につつまれた。関川夏央さんによるロンドン時代の夏目漱石の話、大竹昭子さんによるニコラ・ブーヴィエが書いたの30年代の神保町の話など、タメになるお話をしてくださった。イラストレーションとアートは違うのか?エッセイと小説は違うのか?…答えは会場に来た人にしかわからないが、芸術の本質はすべて同じであることが判明した芸術の秋ではなかったか…。お客様の中に内田春菊さんがおられ(もちろん関川さんのトークを聞きに来られた)トークショーを聞きながら描いたスケッチを見せていただく。おもわず写メをとらせてもらう。期間中はお菓子などの差し入れを頂くこともある。箱詰めのクッキーの間に黒い紙でできた緩衝材があったので、カツラがわりに遊ぶ。いや〜、展示期間中というのは気が張りつめていて、ただぼ〜っと会場にいてもクタクタに疲れるのである。誰も来ないとよけいに疲れが出るのである。こんなことでもしないと気分転換ができないよ…。みなさん来てね!10月3日までやってます!

Vision’s presents The Illustrator’s Gallery Vol.3 わたしと街の物語その1 伊野孝行+大河原健太「神保町とロンドン」

 

 

わたしと街の物語(初日)

毎週火曜に律儀に更新されるだけがとりえのこのブログ。昨日はさぼってしまった。というのは昨日は展示の搬入で疲れたから。で、昨日が搬入ということは今日(9月23日)が〈わたしと街の物語  伊野孝行+大河原健太「神保町とロンドン」〉の展覧会初日ということではないか!

人形町VISON’Sの空間は広い!HBギャラリーの3倍はある。左の壁に飾られた絵は100号以上あるのだが、ぜんぜん大きく見えない…。自分のことばかり宣伝してきたが、この展示は二人展である。相棒の大河原健太君は去年まで2年弱、ロンドンにいた。ワーキングホリデービザを使ったということである。絵はロンドンの《Waterlooで見かけたグラフィティ》だそうだ。足はスタッフのKさん。ついでに大河原君の作品を何点か紹介しよう。奥に見える青いシャツの男性が大河原健太君です。今まで、シンプルで強い絵を版画やシルクで描いていたが、今回は愚直なまでにロンドンの町や人を描いております。

搬入の日の朝まで作業していたようだ。フィキィサチーフ(定着材)をかける余裕がなかった、とか言いやがって、作品を持つたびに手が汚れた。初日に早く来て、フィキィサチーフをかけるという。ちなみにフランスではオープニングパーティーのことを「ヴェルニサージュ」と呼ぶ。ヴェルニとはニスのことで、油絵に仕上げのニスを塗る日、という意味である…なんてことを長沢節センセイに聞いた覚えがある。上が大河原健太作、ロンドンの地図。下は伊野孝行作、神保町の地図。まん中は何の絵でしょう?こんな絵もある。伊野孝行作《コーヒーボーイの日記帳》。拡大しても読めないとおもうので、是非いらしてください。会場の広さにおびえて二人はやや作品を多く描きすぎた(笑)二人あわせて70点くらいある。さて、これを読まなきゃはじまらない「わたしと街の物語」の冊子。僕と大河原君の作文と挿絵が入って、お値段なんと200円!(限定300部)200円くらい財布の小銭を集めたらあるでしょ?

本日(23日)は夕方からオープニングパーティーがあります。27日の関川夏央さんと大竹昭子さんをむかえてのトークショーは残りのお席が少なくなってきました。確実に座ってお聞きになりたい方は早めのお申し込みを。

下記のビジョンズのホームページから予約できます。
Vision’s presents The Illustrator’s Gallery Vol.3 わたしと街の物語その1 伊野孝行+大河原健太「神保町とロンドン」

 

 

 

わたしと街の物語②

さて、今週もひきつづき、展示の宣伝でございます。今回の「わたしと街の物語」という展示の新しい趣向の一つに作文を書くというのがありました。絵を描く前にまずは作文。

最初、僕はこのテーマに関しては、絵よりも作文のほうが書きたかった。文章で言いたいことが、そのまま絵で表したいことになるかというとまたちがう。

文章にべったりの挿絵として絵を描くという方法もあると思う。でも全部そうなっちゃうとおもしろくないし、離しすぎるとワケがわからなくなってしまうおそれもある(テキストからポンと離れたところにあってイメージをさらに膨らませるのが理想)。このあたりがとても悩ましかった。うまくいってるのかどうか自分でもわからない。

だから、来てくださる人には、冊子になった文章を読んで欲しいなぁ…と願うのです。やっぱり「ゴッホの手紙」を読んだ方がゴッホの絵をより楽しめるじゃん。ね、だから会場で冊子を買って(安い値段にするはずだから)読んでね。

というわけで、見てくれ、読んでくれ、と言っても来てもらわなくちゃ仕方ないから、作文の最初のさわりを載せてみよう。絵は展示作品の「部分」です。

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「ぼくの神保町物語」

本来なら就職活動に精を出すべき大学四年の六月、ぼくは神保町をぶらついていた。「アルバイト募集中 K珈琲店」の貼り紙をたまたま見つけて、ふいにバイトでもしようかという気になり、店にとびこんだ。
面接が終わった後でオーナーにこう言われた。
「どうして、あなたを採用したかわかりますか?嘘をつかなさそうだからです」
すぐ顔に出るタイプなので当たっている。さて、それはさておき、そのころぼくは長年あたため続けていた嘘にどうやってケリをつけるかで迷っていた。
実は、小さいときからずっと絵を描くことを仕事にできればいいだろうなと空想していたのだが、美大を目指すこともなく最初からあきらめていた。できっこない、できっこない。会社員になって趣味でやっていくのが分相応だろう…。
…いや、しかし一度も勝負しないで人生を終えるのはアホだな!
数ヶ月悩んだのち、ついにそう決心して十月には就職活動をやめてしまった。オーナーに告げると「もったいないことをするね〜」
とびっくりしていた。嘘をつかないというのは何もこのことを言いあてたわけではないが、自分としてはようやくまともに人生をはじめることができた気分であった。
子どもの頃から、絵は得意なつもりだったが、いざとなると何からはじめていいかわからない。イラストレーターか漫画家になりたかった。イラストレーターを多数輩出しているセツ・モードセミナーという学校がよさそうに思えた。月謝が安い上に入学試験もない。友だちも欲しかった。昼間はセツに通い、夜はバイト。学校のない日は一日バイトという生活がはじまった。
正直に行動するというのは実にいい。毎日にハリが出る。おかげでフリーターというのも不安どころか楽しい日々だった。
しかし人生はそう甘くはない。K珈琲店で働きながら四十一歳で辞めるまで実に十九年ものあいだ下積み生活をおくることになるのだ。これがぼくの神保町物語のはじまりである。
神保町より都営新宿線で三つ目の駅、曙橋にセツ・モードセミナーはある。
校長の長沢節はぼくが入学した時に七十七歳だった。セツ先生がどんな人かよく知らないで入ったのだが、たちまちこの老人の虜になってしまった。長沢節の魅力は会ったことのない人には決してつたわらない。著書も評伝もあるが、それを読んでもわからないと思う。言葉で説明できないからこそ魅力的なのだ。まずはそのことを学んだのだった。
入学してしばらくたって、オウムの地下鉄サリン事件があった。
「教祖はブタみたいだけど、幹部はみんなカッコイイねーっ」
とセツ先生は言っていた。先生はゴツゴツした骨に美を感じる人だった。セツ好みの美少年というのは、顔じゃなくて骨のことだ。
ガリガリだったぼくは愛されて、ますます立派なセツ信者になっていった。
セツ先生はすべての発想が独特だった。自分で考案した「セツパッチ」という細いズボンをはいていた。先生の格好は他の人が真似しても似合うものではない。民族衣装はその民族が着るとものすごくカッコイイように、長沢節という人の一人民族衣装のようだった。
絵描き修行ののっけからそんな人に会ってしまって、ますます自分で考えてものをつくるというのは楽しいことだなと思った。
授業は来る日も来る日も人物クロッキー。実際のモデルを見て描くと、いつもそこには対話があり、発見があるのでとても楽しかった。しかし、月に二回ある水彩タブローの合評会ではいきなり壁にぶち当たっていた。合評会で「A」と評価された作品はロビーに飾られるのだが、ぼくは飾ってある絵を見てもさっぱりわからなかった。そんなわけで当然「A」はもらえない。
セツは「デッサンは絵の基本じゃない。色の構図こそが絵の基本」という教えで、これは純粋絵画から見た分析である。たしかに古今東西すべての傑作絵画は色の構図がキマッているのであった。また、デッサンがめちゃくちゃな絵でも、いいと感じるのはそのせいなのだった。なんとなくこれがわかりかけてくるのに半年かかった。また、これがわかるとこむつかしいことを知らなくてもすべての絵は理解できるのだ。
半年目でやっと「A」をもらった。この半年はすごく長かった。合評会が終わり、いそいで絵の具箱をかたづけて、浮き足立ったまま雨の中をバイトに向かった。
「伊野くん、休憩入って」
と店長に言われて、ロッカールームに傘を取りにいった。絵をこころざして半年、はじめて褒めてもらえたうれしさがまたこみあげてきた。よかった…才能がないわけではないかもしれない。ロッカールームを出て傘のジャンプボタンを押すと、勢よく傘がひらいた。店長やお客さんが目を丸くしている。お店の中で傘をさしてしまったのだ。
バイト先ではまかないがなかったので食事は外の店でとる。とんかつの「いもや」に入った。いつもは七百円のロースかつ定食だが「A」をもらった日は九百円のヒレかつ定食を食べていいことにした。(今思うと、とんかつはロースこそうまいのだが…)その後、頻繁に「A」をもらえるようになったのでこの制度はやめた。

週に五日も働くようになると、平のアルバイトから珈琲を入れる係に昇格した。時給も二百円あがる。うちの店は当時、一杯七百円もする高級店だった。池波正太郎もよく来ていたようで日記にも出てくる。二ヶ月ほど練習をしてから、実際にお客さんに珈琲を出すようになるのだが、最初は自分のいれたコーヒーに七百円の価値があるとは思えなくて詐欺をはたらいているような気がしたものだ。
何者にもなっていないただの男は、せめて珈琲の味は一人前になりたいと思った。はじめて職業意識というものがめばえた。
池波正太郎の本、とくにエッセイはくり返し読んだ。池波正太郎の書くものには、アルバイトにおいてとかくゆるみがちになる精神をひきしめてくれる効果がある。影響をうけやすいので、ハマっているときはキビキビと働く。どんな境遇にいても真人間でありたいと思う。しかし自分の中の池波ブームが過ぎ去ると、また元に戻ってしまうのであった。


…ハイ、ちょうど時間となりました♪…とまぁ、このへんでやめとこう。この時期は毎日たのしいだけだった。後々プライドもクソも捨てて耐え忍ばなければならないハメになる。でも、たいしたことじゃない、よくある話だと思う。でもよくある話にしろ、鏡の中をのぞくような作業を通じて、個人的な体験を他人様に楽しんでもらうような作品にしあげることが、今回の芸の問われるところだと思っています。それに何も自分の話ばかりをしているのではないですよ〜。これは「わたしと街の物語」でありますから。19年間神保町にいた珈琲ボーイから見た、街の移り変わりも主要なテーマなのでありました。つづきは会場に来て、見てね〜ン。読んでね〜ン。

さ、展示は来週9月23日(水)から。シルバーウィークの最終日がオープニングだ。トークショーも受付中〜。Vision’s presents The Illustrator’s Gallery Vol.3 わたしと街の物語その1 伊野孝行+大河原健太「神保町とロンドン」

 

 

わたしと街の物語 ①

さて、今月23日からはじまる展示について本格的に宣伝させてもらいましょ。テーマはタイトルになっているように「わたしと街の物語」です。19年間通っていた神保町のことを描きます。なぜ通っていたかというと、バイトしてたんですね。それも同じ店でず〜っと。途中で一度無職の期間があったり、数ヶ月他の街で働いたこともあるけど、ほとんど家と神保町の往復だけで生活しているようなものでした。これはDMに使っている絵です。向かって右が今現在のわたしで、左が23年前のわたし。バックは「すずらん通り」をイメージしてるけど実際の街並とはちがう。絵の雰囲気はバルテュスが6割型描いたところでやめちゃった…みたいなことになってますが…。親しくしている友だちでも昔のボクだとわかってくれない人が多い。きのう、親から電話がかかってきて「これ、孝行か?わからんだわ〜」と言っていた。似てないわけではなくて(すごく似ている)ずいぶんと変わっちゃったんだなぁ…いろいろ。

え、さて。

わたしは展示をする時にこころがけていることがある。それは橋本治さんの次の一文が言い尽くしていると思うので、抜き書きしてみよう。

〈江戸時代の観客の喜び方というのは、一つです。今とおんなじといってもよいでしょう。つまり「新しい!」です。
「この趣向は新しい!」源頼朝が手習いの師匠になって振り袖娘にスケベなことばっかりするという趣向は新しい。そのことによって「新しい!」という発見をした以上、それを言う以前の自分は、その新しさに気がついていなかった。つまりその新しさによって見る側は「なァるほど!」と世界観の修正を迫られる。「昨日の私はバカだった」ということを知るんですから、笑うべきは対象は自分です。〉

橋本治「大江戸歌舞伎はこんなもの」より(↑とある展示作品の部分)

自分が「おもしろいなぁ〜っ」て思うものは、かならず自分にとって新しいのだ。古い時代の作品を見てそう思うこともある。きっと新しいこころみを試した人のウブな気持ちが、獲れたてピチピチの鮮度で作品の中に保たれているのだ。逆にいかにも新しい顔を装った退屈な作品もある。仕方がないが自分には新しい発見がなかった。もしくは出来なかったということになる。(↑とある展示作品の部分)

で、今回の新しい趣向のひとつはこれだ。まず、絵を描く前に作文を書いた。原稿用紙で30枚弱。タイトルは「ぼくの神保町物語」という。絵を描くときのテキストになる。といっても、作文の挿絵を描くわけではないので、文章は文章、絵は絵でまた別の表現になるはずだ。ちょっとデカいたとえ話をすると、ゴッホの絵にたいして「ゴッホの手紙」はテキストになっている、と言えるかもしれない。(↑作文の原稿。でもこれはやらせ。ほんとはワードで書いている。)

わたしは自慢というのが苦手でほとんどしないのだが、今回は宣伝のために嫌々してしまうのだが…作家の関川夏央さん(トークショーのゲストである!)がたいそう誉めていたそうな…。この作文は冊子にする予定。

(来週につづく)

ギャラリーのホームページおよびトークショー(9/27)の申し込みはこちらです↓
Vision’s presents The Illustrator’s Gallery Vol.3 わたしと街の物語その1 伊野孝行+大河原健太「神保町とロンドン」

 

 

ウクレレ♪デコレレ♪

銀座8丁目のリクルートG8でおこなわれる恒例のTIS(東京イラストレーターズ・ソサエティ)の展覧会も今年で21回目となるそうな。今年のテーマは「ウクレレに描く」です。

最近、ずっと弾いてなかったギターをまた触り出すと同時に、音楽も前よりよく聴くようになった。ぼくは面白いとおもったら、マニア道に走るより、不見転で自分でもやりたくなる。鑑賞者の立場だけにいるのと、ヘタでも自分でやってみるのとは、大河を間に挟むくらいの差があると思う。べつに楽器などできなくても口笛でも音楽はできるわけだし、大昔のように実作者、演者と鑑賞者が別れていない方が「芸術」の意味、必要性がより理解できるはずだ。

…と、まぁ、またデカイことを言ってしまったので、画像をアップしにくいが、わたしの出品するウクレレはコレだ。…なにとぞ、お手柔らかに。ハワイのお土産風に描いてみました。だから大量生産風にカンタンな絵…。

もう、終わるらしいテレビ番組「若大将のゆうゆう散歩」が好きで、たまたまつけてやっているとよく見ていた。庶民派の地井武男のときとちがって、加山雄三はお城の殿様がおしのびで城下町にやってきているような感じでいい。我々は下々の者だとつい思っちゃう。そう思わせる天真爛漫さ。きっと加山雄三は自分のことは庶民だなんてこれっぽっちも思ってないから、そのふるまいが自然だ。

加山雄三は毎回、散歩の感想を書にしてしたためるのだが、あまりよくない。散歩に飽きた?ときに突如はじまる料理コーナーの腕前もほほえましい。得意とされている絵も、真面目な絵なんだなぁ。ところが、あるときウクレレを作っている工房を訪れたとき、ポロロ〜ンと一曲やったのが、ものすごくうまかった。よかった。ぼくは加山雄三のつくる歌が好きだ。学生時代の美術部の部室になぜか加山雄三のテープがあり、なんども聴いていた。

そして加山雄三もまた、自分がおもしろいと思ったら、すぐやってみるタイプのひとだった。番組をやめる理由も、80歳までにつくりたい船があるとか…。

というわけで「デコレレ展」2015年9月8日(火)~ 10月7日(水)クリエイションギャラリーG8(東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F)でやってます。

会期中にイベントもあり。すべて入場無料。
イラストレーターが描くウクレレ148本「デコレレ♪」の詳しい情報はコチラ!

暑中お見舞い

しょちゅうおみまいもうしあげます

いや〜夏風邪をひいてしまって、夜になると咳でむせて眠れない。寝返りを打つだとか、ツバを飲み込むだとか、ちょっとしたことがきっかけで咳がでてこようとする。ときどき身を起こして、「はぁ〜っ…」とため息をつくとまるで病人じみているが、熱もなければ、ノドも痛くない。ただ咳がでるだけ。それも肺の方からでてくるのではなく、ノドのすぐ奥からでてくるので、肺からヒューヒュー音もしない。

咳のことを気にしてると、暑いほうのことをすこし忘れているのであった。

第53回 高橋五山賞

このたび、第53回 高橋五山賞を授賞いたしました。パチ!パチ!パチ!

〈高橋五山賞は、教育紙芝居の生みの親、高橋五山氏の業績を記念して、1961年に創設された。ただ単に、五山賞ともいう。年間に出版された紙芝居の中から最も優秀な作品に贈られる。高橋五山賞審査委員会(財団法人文民教育協会子どもの文化研究所)主催。〉wikipediaより。

受賞作品は「ごん助じいさまとえんま大王」という去年出た紙芝居で、わしおとしこさんの脚本です。紙芝居の世界は、わたしもまだ全然知らないと言ってよく、「ごん助じいさまとえんま大王」が2作目でした。1作目は「おおきいねこちいさいねこ」で、2作とも教育画劇の三原さんという方にたのまれて描いたのでした。作り終わるたびに、「う〜む、まだまだだなぁ」と我ながら課題を感じていたので、賞をもらってびっくり。聞けばとっても歴史がある賞で、該当者なしの年もあるらしい。

「時期尚早では…」と思いました。講談社のさしえ賞のときもそう思いました。しかし、賞というのはタイミングでもらうこともあるし、必ずしも実力がついたからといってもらえるものでもないので、ありがたく頂戴いたしました。もちろんわしおとしこさんの脚本のおかげでもあります。

というわけで去る7月7日、アルカディア市ヶ谷「大雪の間」でおこなわれた贈呈式&お祝いの会に出席してまいりました。実演をしていただく。自分の紙芝居をちゃんと見るのははじめて。いちばん前の席(2メートルくらい離れている)に座っていたが、紙芝居って距離があるからけっこう小さく見えるんですね。脚本を担当された、わしおとしこ先生と(わしおさんが脚本賞でわたしが画家賞)。お祝いの会の途中、わたしの斜め前に座っておられるこの方に、眼が釘付けでありました。豆絞りをこんな粋にあしらうなんて…。このお方は今回より創設されました右手(うて)賞を授賞された梅田佳声先生であります。紙芝居の実演家であります。大スターの業績を寿(ことは)ぐ雰囲気が会場にあふれておりました。わたしは紙芝居のことは何もしらない若輩者でありますが、この方のたたずまいを拝見しただけで、たちまち芸の奥深さを感じ取ったわけでございます。「順番がわかんなくなっちゃたよ…」とボケをまじえながらの実演も披露してくださいました。笑いと話芸に会場にいた全員は魅了されました。街頭紙芝居と教育紙芝居の枠を超える芸術家。わたしの頭の中には「芸能」という文字が太くくっきりと浮かびました。梅田佳声先生を師とあおぐ飯野和好さんもお祝いにかけつけていらっしゃいました。賞状とお花と金一封。ありがとうございました。わたしの知らない紙芝居の世界に触れた一夜でございました。

(ちなみに、紙芝居は日本にしかないって知ってました?そういえば、外国人が紙芝居やってる写真や映像は見たことないですもん。紙芝居は裏にストーリーが書いてあるのが発明なんですけど、それはあの山川惣治さんが考案したのだとか。)
「ごん助じいさまとえんま大王 」はポチッとなでも買えます。

 

 

ちくちく美術部・他

断固毎週火曜日更新!などと言っておきながら、先週はGWまっただ中ということもあって、さぼってしまった。自分で決めてるだけの約束事だから、さぼってもどうということもないし、反応もないから、いっそ半年くらい更新しなくてもいいんではないか…と思ったりもするが、なにはともあれコツコツやるしか能がないのでしばらく続けてみよう。

芸術新潮で連載がはじまっている。「ちくちく美術部」というマンガによる展評だ。フキダシの中のセリフを抜いた状態でお見せしよう。今、本屋に並んでいるからよかったらお読みください。わたし一人でやるのではなく、アートテラーの”とに〜”さんといっしょにやっています。(アートテラーとはアートの語りべのことで、この職業は本人曰く、世界で一人しかいないという…。とに〜氏は元吉本芸人という経歴。お会いしたらたいへんな好青年でした。)

副編集長のT氏から「とに〜さんといっしょにマンガで展評やりませんか?ちくちくするやつやりたいな〜」とそそのかされてはじまった。わたしはなにも好きこのんで悪名を売りたいわけではない。

いや、別にちくちく言うことが本義ではなく、自分の眼と脳をとおして見た感想をのべているだけのことです。わたしの場合は自分も絵を描くから「そんなこと言ってるオマエはどーなんだよ」というツッコミは必ず入る…余計に言いにくいっちゅーの!

以前、あるライターの方がこんなことを言っていた。「昔は編集者から、コレ(本、CD、映画、芝居、展覧会など…)を見て好きなように書いてくださいって言われてたのに、今は、コレをいいように紹介してください、と言われる。」と。広告掲載料大事のためか、はたまた広報の台頭か。いずれにしろ読者がおいてきぼりになって、雑誌から読み応えがなくなってはつまらない。

今はネットでみんなが意見を発表できる時代だけど、雑誌ならではの切り口や書き手の芸でもって、払ったお金以上の楽しみを読者様にお返ししたい、そんな気持ちでやっていきます。どうぞよろしく。

さて、ちょっと前にお知らせした「妄想ロックTシャツ」が通販で買えるとな!

妄想ロックフェスTシャツ通販サイトはコチラ!

帽子に眼鏡というわたしと同じ格好のモデルさんだが、着た雰囲気が自分とはまるでちがう。やはりわたしのTシャツはおしゃれではない…。

Tシャツ。その他お知らせ

急に春めいてきた。そろそろ亀(クサガメ12歳)が冬眠から目覚める頃だと思って、家の裏の日陰においてあるゴミ箱(ポリバケツに深く水と落ち葉を入れてある亀の寝床)の様子を見に行っていた。

半月ほど前は首をのばしてスヤスヤ眠っている様子だったので、起こさないようそっとしておいた。一週間前にも、のぞいてみたが、同じ姿勢で寝ていた。で、昨日見てみても、同じ姿勢で寝ていた。……ひょっとして…?棒切れでつついてみたら、同じ姿勢のまま水のなかでひっくりかえった。カメキチは死んでしまった…!

冬眠中は仮死状態に近いから、眠ったまま昇天したのだろうか。水の中からとりだして、つついたり、ひっぱったりしたが、もちろん反応はなく、固まっている。どれくらい前に死んだかわからないが、皮膚などは生きているときとかわらないさわり心地であった。ほんとうに死んでいるのか不思議に思うくらいみずみずしい。なきがらは庭に埋めた。飼いはじめたときはゼニガメだったが、20センチくらいに成長したので、ずいぶん大きくなったなぁ、と思いながら穴をひろげていった。

さて、「お知らせ」というのは、亀が死んだことをお知らせしたかったのではない。パソコンに向かって、春ですね、そろそろTシャツが着れる季節ですね、と書こうとして脱線してしまった。お許しあれ。

目白のブックギャラリー〈ポポタム〉でTシャツのグループ展に参加しています。(注:ポポタムは水曜木曜がお休みです)
「妄想ロックフェス2015」はコチラをクリック
「妄想ロックフェス」というように妄想バンドTシャツを作る、ということだったので、架空のバンドを設定しなければいけない。そのへんはTシャツの絵柄を決めてからテキトウにでっちあげておいた。タヌキがやってるバンドにしてCDケースの中には葉っぱを入れておきました。

「BIBIRI TANUKI は狸が化けてやっているとも、狸にばかされた人間がやっているとも言われるが、ほんとうのところはわかっていない。
「UOSUOM」というCDを出しているが、プレーヤーに入れても音が出ず、おかしく思ってイジェクトボタンをおしたら葉っぱがでてきた、という話もある。」

Tシャツは、サイズはもちろん、布の色、インクの色たくさんの中から選べます。ぜひ、この機会にTシャツをお買い求めいただきたく、一筆啓上申し上げた次第。北尾トロさんがライター仲間とつくっている「レポ」で連載がはじまりました。「頭にちょんまげをのっけてればいいってもんではない」というタイトルのエッセイです。でも「レポ」は次の20号が最終号なので2回だけの連載です。そのタイミングで連載がはじまるのもすごいが…。今号の表4「山田うどん広告」は石野てん子さんです。石野てん子さんって◯◯さんのことですけどね。会社が慎重社なだけに、そのへんは慎重なんです。(わからない人にはなんのことかわからないとおもいますけど)「江戸アートナビ」が更新されました。こちらも今回が最終回。

ブランドの影にゴーストライターあり?の巻

昔は工房で絵を描いていたわけですから、誰々の作ということ自体決めるのは難しいし、サインと判子だけ先生で、あとは弟子が描いている場合だってあったでしょう。酒井抱一の弟子には鈴木其一がいたわけですから、弟子と言っても筆が劣るわけではない。鈴木其一が描いた絵に、酒井抱一のサインと判子が入っているという「ニセモノ」もあるかもしれない。そういうものはニセモノとは言わないかもしれないが、「伝・酒井抱一」ということになるのだろうか。江戸時代にはニセモノを専門につくる人も多数いて、今ではあまり知られていないような絵描きの絵も、かならずニセモノがあるという。

たとえば、ある有名が絵師が亡くなるとする。どこからか手をまわして、絵師の判子を手に入れれば、判子はホンモノのニセモノの絵が仕上がる。…そのようなわけで、安村先生も「ホンモノかニセモノかほんとうのところは誰にもわからない。自分がいいと思ったら、それでいい」というようなことをおっしゃっていた。ぼくもそう思う。

茂田井武サイコー!

↑「茂田井武の肖像2015」/只今〈えほんやるすばんばんするかいしゃ〉にて展示中

茂田井武は、見るたびに発見があり、自分にもできるんじゃないかとその気にさせてくれるが、結局、ダメだ、描けっこない!と絶望させる最高の画家の一人である。自分にもできるんじゃないかとその気にさせてくれるのがミソである。鑑賞者の立場から創作者の立場へとうながす力はどこにあるのだろう。

茂田井武の自由さったらない。「型」というものは絵の邪魔にしかならないと思えてくる。どの絵にも共通してあるのは、偶然できあがってしまったかのようなみずみずしさ。型にたよって描けば手際がよくなり、成功率は上がるが、自分にはもう絵の未来がわかっている。手際の良さはときに警戒しなくてはいけない。

いざ筆をもって紙に向かえば、頭の中で予想していなかったことが画面の中ではじまる。たいがいはそれを無視するか、はなから想定外のことが起こらないように下書きを作っておくかして、効率をあげる。じつは、案に相違して起こる出来事の中に絵を描く楽しさ(したがって苦しさも)があることは、描く人なら誰でも知っているだろう。〆切りやラフの提出がなかったら、すべての絵はそうして描いた方がスリルがあって楽しい。

「童画」の絵描きとして知られる茂田井武だが、子どもはみんな鑑賞者であり創作者なので、絵にたいして二つの回路をもっている。ぼくは茂田井武の絵をみて絵を描きはじめたわけではないが、茂田井武の絵を見るたびに「おれもやってみたい」という、はじめてつくる側にまわる時のような気持ちになる。きっと茂田井武の絵の中には二つの回路を刺激する何かがあるにちがいない。

↑「茂田井武の肖像2010」/拙著「画家の肖像」に収録

茂田井武を絶賛しながら、自分が描いた「茂田井武の肖像」ばかりアップしてしまったが、興味を持った方は是非、本を買うなり実物を見るなりしてファンになってほしい。

ちょうど今、銀座の〈ノエビア銀座ギャラリー〉で小規模ながらいい展覧会をやっています。前期1月13日〜2月20日後期2月22日〜3月27日。

「茂田井武展 – 記憶の頁 -」はコチラ!

それにあわせて高円寺の〈えほんやるすばんばんするかいしゃ〉では2月13日~ 24日『茂田井武 – トン・パリ祭』を一階ギャラリーで開催中。こちらでは茂田井のグッズやトリビュート作品が展示販売されています。

《 茂田井武トリビュート作品・参加作家(順不同/敬称略) 》
及川賢治/吉田尚令/山福朱実/松成真理子/ささめやゆき/岡田千晶/渡邊智子/渡辺美智雄/高畠純/堀川理万子/伊藤秀男/たんじあきこ/どいかや/杉浦さやか/いぬんこ/伊野孝行/芳野/イナキヨシコ/霜田あゆ美

『茂田井武-トン・パリ祭』at〈えほんやるすばんばんするかいしゃ〉はコチラ!

この二つの展示の企画はもとより、近年刊行された茂田井本などを中心になって作っておられる広松由希子さん(児童書評論家)と五十嵐千恵子さん(児童書編集者)のトークショーが2月21日〈日本出版クラブ会館〉であります。

トークイベント『童画家 茂田井武について』@レラドビブリオテックはコチラ!

というわけでみなさま、2月は茂田井武月間でございます。

茂田井武を紹介するページ MUSÉE MOTAI

 

 

私の好きな絵

今日(11/11)は火曜日なのでブログの更新の日であるが、手をつけないまま12時に人形町の「vison’s」というギャラリーに行っていた。なんの因果か、明日からはじまる「私の好きな絵 B氏のコレクションより」という展示の設営を手伝うためだ。B氏とは誰か?そんなのバレバレだと思っていたが、本気で誰だかわからない人もいるようだ。謎めいていたほうがいい。
展示作品数を数えたらちょうど100点あった。B氏は保管のためにトランクルーム?まで借りているらしい。もちろん転売などはしないから、ただ持っているだけだが、お金はかかってしまう。B氏自身、今回のように一堂に会するのははじめてのようで、買ったことを忘れていた絵もあった。12時から途中で昼食をはさみ、7時まで、7人がかりで作業をしてようやく終わる。僕も100点の絵の飾り付けははじめての経験だった。
会期中の16日(日)にはこんなイベントがある。このトークショーはかならずや面白くなると思う。理由は後でのべるが、まずはチラシを読んでみよう!以前、南伸坊さんは赤瀬川原平さんのことをこう書いておられた。

「赤瀬川さんとすいてる美術館で、絵を見ながら談笑するっていうのは、ぼくにとって至福の時間だ。こんな楽しい時間はなかなかない。好きな絵について、感じたことを、ポツポツ、ととぼけた調子で話される。それがモウレツに面白くて楽しくて刺激的だ。美術についてムズカシイことを言ってやれという人はいくらでもいる。だが赤瀬川さんのように楽しく話のできる人は、いない。」

僕は、南さんと酒席をともにさせていただくとき、絵の話をするのがとても楽しい。僕が南さんにたいして思っていることは、まさに南さんが赤瀬川さんにたいして思っていることと同じなのだ。

研究者や評論家が絵について「理解」していることと、描き手が「理解」していることはきっと質がちがう。でも、それを面白く語れる人というのは、まーそうはいない。

なので、このトークショーは、僕がいつも酒を飲みながら満喫している「絵の話」をみなさんにも味わっていただく機会でもあるし、また、このトークショーを聞けば自分たちも「絵の話」がしたくなるにちがいない。(ナイショにしておきたいが、絵の話をするようになると、確実に絵が進歩する。マジで。)

昨日、南伸坊さんから、好きな絵のリストが送られてきた(それぞれが好きな絵をスクリーンに写しながらしゃべります)。

◯ バルチュス「部屋」

◯ マルケ「オロンヌの浜」

◯ アンソール「善き裁判官たち」

◯ ルソー「蛇使いの女」

◯ マグリット「脅かされる暗殺者」

◯ デルボー「月の位相」

◯ マチス「音楽」1910

◯ キリコ「街角の神秘と憂愁」

◯ リヒテンシュタイン「ボールを持つ少女」

◯ ウォーホル「手術前手術後」

◯ 歌川国芳「ひいなのいさかい」

◯ 与謝蕪村「奥の細道図巻」

◯ 曾我蕭白「群仙図屏風」

◯ 鈴木春信「五常義」

◯ 仙崖「指月布袋画賛」

◯ 井上安治「銀座通夜」

◯ 小倉遊亀「浴女」

◯ 耳鳥斎「烟草好の地獄」

◯ 山下清「剣道」「柔道」八幡学園時代の貼絵

◯ 不明「ばけもの絵巻」国書刊行会妖怪百物語絵巻より

う〜ん、幅広い。このリストを見ているだけで、南さんの選び方に刺激をうける。矢吹さんは何をお選びになるのだろうか。僕も何を選ぼうか…たくさんある好きな絵のなかから選ぶというだけでも、ひと仕事している気持ちになるし、頭が活性化されるようだ。なぞのB氏もトークに参加するというし。ま、僕はしゃべる用意はしていっても、結局しどろもどろになって、みんなに笑われればそれでよしだ。

ちゅーわけなんで、お申し込みは下記からですっ!↓
「私の好きな絵」トークショー申し込み

 

 

伊野孝行商店

9月26日(金)18時30分から、銀座のリクルートG8でひらかれている「TIS展」のイベントで「TIS夜店」というのがあります。会員有志がG8のロビーにお店をひろげて、いろんなものを売るという催しです。わたしはその係をやっているので、今週のブログはそのお知らせをば。みなさん是非おこしくださいませ。今年は何を売ろうかなと思案にくれていたところ「折りたたみ色紙」なるものを見つけたので、それに絵を描いてみました。クリックすると画像は大きくひろがるでしょう。作品番号1番「おどり」作品番号2番「臆病者」(この絵は耳鳥斎の戯画が元になっています。)作品番号3番「雨宿り」(この絵は竹原春朝斎の絵が元になっていますが、本家はタヌキではなく人間です。)作品番号4「めし処たぬき」

さあさ、みなさまおひとつどうですかな?値段はまだ決めてませんが、もちろん「こんなギャラで仕事頼まれたら、断る!」という値段にしておきます。お祭りなんでね。さてもう一種。この色紙は拙著「画家の肖像」をお買いあげくださったお客さまにもれなく一枚おつけしましょう(限定5部)。この機会にお求めになられますとお得ですよ。

そんなこんなの秋の小商いのお知らせでした。

出店作家(予定)/あずみ虫、黒田愛里、熊井正、五辻みつる、ささめやゆき、下村勝、チカツタケオ、廣中薫、ミナミタエコ、本秀康、森英二郎、矢吹申彦、山口マサル、山﨑若菜、渡辺浮美生、+(南伸坊、城芽ハヤト、井筒りつこ、櫻井砂冬美、伊藤彰剛、伊野孝行)
※当日の飛び入り参加もあるかもしれません!

時間/18:30~20:30
会場/クリエイションギャラリーG8 入場無料

 

 

TIS展とTAN

今週の更新はお知らせをふたつ。

まず、本日9月16日よりはじまる東京イラストレーターズ・ソサエティ主催の展覧会。毎年、テーマをもうけてやっていましたが、今年はテーマなしの自由。イラストレーターはふだんからテーマにあわせて描くことを仕事としてますから、どんなテーマでも合わせる習性をもっています。でも、テーマに合わせることに苦心して、かえってその人の持ち味がでなくなっていることもあるんじゃないだろうか…と展覧会委員は考えました。

1988年に、日本のイラストレーションをリードする作家達によって発足した東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)は、昨年25周年を迎え、会の顔・ロゴマークも一新しました。
毎年おなじみをいただいているTIS会員による展覧会は、それぞれの最も得意とする技で「イラストレーションの今」を網羅する楽しい展示にいたします。
次の四半世紀をスタートした、新しいTISにご期待ください。
これはわたしの出品作ではなくて、会員のみなさまへの参加を呼びかける「お誘い文」につけた絵でございます。馬場VSハンセン。これが今回の出品作です。タイトル「東男と京女」。自由に描いていいのだけど、なにが一番自分の持ち味を出せるのかと考え出すと、よくわからない。あまりそんなことを考えるのはよくないのかもしれない。おいおい、最初に言ってることと矛盾している…。

もうひとつのお知らせは、TAN(東京アートナビゲーター)のサイトが更新されました。江戸アートナビその六。江戸の女性のファッションのお手本は男だった。一筆斎文調 《2代目瀬川菊之丞の柳屋お藤》の巻!

 

 

100号×7枚

本日7月8日より14日まで、上野の森美術館ギャラリーでおこなわれる「絵を描くはじめ」という展覧会に参加します。美術ジャーナリストの藤田一人さん(「芸術新潮」で「わたし一人の美術時評」をいっしょに連載していた)が企画者で、「100号くらいの大きいエスキースを描いて欲しい」とたのまれた。めったにデカイ絵も描かないし、たまに仕事とはぜんぜんちがうことをやっておくのも何かしらひろうものがあると思って参加をきめた。ふだんの仕事はA4サイズくらいで描いているので(スキャナーがA4だから)100号と聞くとつい身がまえる。なにを描けばいいかな?……ある人に相談すると、「7日あるので7枚描いたらどう?7枚重ねて展示して一日ごとにはがしていくのは」と提案され「ほう、100号の日めくりカレンダーというわけか……おもしろいかも」とすぐに乗った。
シリウスという水彩紙のロールを買ってきた。だいたい100号くらいの大きさが7枚とれる。長押(なげし)にクリップでとめると、ふすま二枚よりは幅がすこしせまい。実際目の前にすると、そんなに大きくかんじない。100号は6畳で描けるサイズだな。筆も大きいのをつかえばそう時間はかからなさそう。
エスキースなんだから壁に落書きするくらいの気分でいきたい。7枚を通してのテーマというのは決めていない、ただ、この大きさで描いてみたいものを描いてみた。いちおう7枚それぞれに制作意図はあるけど、実験というか遊びです。

メンバーは全部で5人。ぼく以外は職業でいえば「画家」の方たちで、イラストレーターは一人だけ。印刷されたりメディアのなかで使われるわけではないが、ある与えられた状況のなかで絵を描く、ということでいえばこれもイラストレーションと言えるかな。べつに無理して言う必要もないけど。「絵」と言えばそれで済みますね。でもイラストレーターは画家の人たちとは筋肉のつきかたが違う。そういうところはちょっと意識してるかもしれない。

7枚重ねてかざってありますが、めくって見てもいいですよ。また、はがした絵も置いてありますので、ご自由に見てください。なんてたって上野だから、ほかに展覧会もやってるし、ぼくの絵がつまんなくても何かしらおもしろいでしょ?上野近辺は。
↓7枚の絵の「部分」をのせておきます。どうぞよろしく。きのう、搬入に行ってきた。自分ではデカい絵をかいたつもりだったが、他の人は100号とかのレベルではなく、5メートル×3メートルとかそんなかんじのデカさで、クジラの群れの中にマグロが混じっているようだったぜ…。上野の森美術館

 

 

紙芝居/宇野伊野トーク

教育画劇の紙芝居「ごん助じいさまとえんま大王」に絵を描きました。文はわしおとしこさん。元々民話としてあるお話だそうです。以下、僕なりに書いたざっくりとしたあらすじ。(じっさいの紙芝居のわしおとしこさんの文はぜんぜん違う雰囲気なのでご安心を)ごん助じいさんは村いちばんの踊りの名人。歌もうまい。とにかくごん助じいさんが踊れば、みんなたのしくなっちゃう。なのに、2場面目で早くもぽっくり死んでしまい、死後の世界をさまよい歩くごん助じいさん。じいさん自身ここはどこだかわからない様子。ひとつとばして4場面目で閻魔大王が登場!(設定では閻魔大王はそのへんをブラブラしていて、ごん助じいさんに会ったのである)やっぱしここは地獄だったのか!(しかし、あんなに人を楽しませていたごん助じいさんなのに、地獄におとされちゃうんだな…)おまえは、どこの誰じゃ?と問われて名のるごん助じいさん。「おお、おまえがあのごん助か」なんと踊りの名人ごん助の名は地獄にも知れ渡っていた。「踊ってみせい」といわれたごん助じいさん「しかし…こんなさみしい着物では踊れません」と答えれば、「わしの着物をかしてやろう!ついでにこの…」さてこれ以上アップすると営業妨害になるのでやめておきます。閻魔大王は着物をぬぐとどうなるのでしょう?着物のついでにアレも渡しちゃうのですが、アレとはなんでしょう?そしてごん助の行く末は!?このつづきは教育画劇の紙芝居で!またのご縁とおあずかり〜♬アッハッハ!笑いどっさり!日本のおもしろおばけ民話

はい、話かわっておしらせをば。来る6月22日(日)紀伊国屋書店 新宿本店で『宇野亞喜良AquiraxWORKS』(玄光社)刊行を記念して 宇野亞喜良さんとのトークイベントに出ます。お申し込みはコチラまで!

↑このイベントの告知サイトに書いてある、僕の説明が盛りすぎで…たいして知識もないし、研究もしていないのだが…どうしたものだろうか。困った。知識、技術、経験とも宇野さんのほうが何倍もあるので、実際は僕にレベルをあわせてお話をしてくださるにちがいない。しかし、宇野さんの画集発売にあわせて伊野くんのレベルにあわせて話をする、というのもおかしいので、ここではこういう風に書いてあるのだろう。インタビューということではなく、たぶん絵画やイラストレーションの話をすると思います。よかったら是非。

 

 

セミナー#3/秋田蘭画

南伸坊さんの絵についての話や文章がおもしろいのは、イラストレーションとアートを垣根なく語ってくれるからだ。自分にとってどうおもしろいのか、なぜおもしろくないのかのアングルがある。そういうときに垣根なんかむしろジャマだ。伸坊さんのアングルを通して絵を見ることは僕にとっても発見があり、ついでに自分のアングルも考えさせられる。

イラストレーションは純粋芸術とはちがう、アートはイラストなんかとはちがう、とふたつに別けて考えることは、職業意識としては便利かもしれないが、不幸のはじまりだと僕は思う。とくに今の時代に、わけることは意味がないんじゃないか。もともとお互いはべつのものではなかった。根っこでつながっていたはずの水脈や養分をふたたびとりもどしたい。自分自身の血の中にはなにが入っているのかを知りたい。ジャンルの壁がなくなった今はそういうことを楽しんでやれる時代になったと思う。……僕はそう思っているので、伸坊さんのように絵を見て語れる人の話が一番おもしろい。

というわけで、イラストレーション連続セミナー第3回のゲストは南伸坊さんです。いままでは伸坊さんがインタビュアーでしたが、今回はゲストにまわり、インタビュアーには作家の関川夏央さんが登場。どんなお話がとびだすのかお楽しみに!
セミナーのお申し込みはコチラをクリック!

さて、東京アートナビゲーションの「江戸アートナビ」が更新されました。今回は「秋田蘭画」です。秋田蘭画といっても実際は江戸で制作されていた。秋田藩士が描いたからそう呼ばれる。
上は小田野直武の「不忍池図」という秋田蘭画の有名な絵。西洋版画と中国絵画の影響があるが、とくに西洋人に習ったわけでも、中国人に習ったわけでもない。しかも静物画、風景画、写実、遠近がミックスされた江戸美術。このバランスが不思議な感覚をあたえてくれる。ヘンな絵だ。実際外国人に直接教えを請えば、このような絶妙な味は出ないだろう。

ついでにこれは推測にすぎないが、秋田藩士、小田野直武と彼の殿様である秋田藩主、佐竹曙山はボーイズラブの関係にあったのではないかとの説もあるみたい。この連載の担当の佐久間さん(女性)はボーイズラブには目がない人で、この絵につけたキャプションが笑える。ぜひ、下記をクリックして一読を!秋田蘭画、江戸絵画史上わずか7年の奇跡 監修/安村敏信先生

 

 

レポTVと季刊レポ

みなさんこんにちは!本日(4/22)夜の9時から「レポTV」に出演します。TVといっても地上波ではありません。BSでもありません。USTREAMという動画配信です。でも「レポTV」って言いはっているからTVでオッケーオーライ!

「レポTV 北尾トロアワー with えのきどいちろう」ということで北尾さんとえのきどさんが毎回ホストをつとめていらっしゃいます。本日はゲストに南伸坊さんわたしが出演します。

※放送が終わったので、今はYOUTUBEにアーカイブとして上がってます。当日は、えのきどいちろうさんがお風邪で出演はせず、外野から見守ってました。「レポTV 2014.4.22 えのきどは見ていた(やりづらい)YOUTUBE版」はコチラ!


レポTV 北尾トロアワー with えのきどいちろうUSTREAMはコチラ!

そのまえにまず「季刊レポ」という雑誌があります。編集人が北尾トロさんです。奥付には「レポ4つの約束」と題された文章が入っています。

1、「レポ」は編集人、北尾トロから読者への超分厚い手紙です!

2、読んでも人生の役に立たないノンフィクションが満載です!

3、ジャーナリスト魂とは無縁の、マニアックな視点、とぼけた風味、イイ腰の引け具合、を大事にします!

4、定期読者には毎月、何かがポストに届きます!

「レポ」はすでに15号、巻を重ねて、そのうち5、6冊はSOLDOUTになっています。

「季刊レポ」のサイトはコチラ!

最近「レポTV」のアーカイブがYOUTUBEにもアップされたようで、わたしも何本か見ましたが、これは傑作だなーと思ったのは、いとうせいこうさんがゲストの回。前半は通信空手の話(これがレポ的で実にくだらなくてオモロい)で、後半うってかわってマジメな最近の雑誌にたいする批評(レポはこういう危機意識をもって作られたんだと納得)が胸を熱くする。

レポTV 2012.2.21 いとうせいこう生登場!

わたしはなんで呼んでもらったかというと、「レポ」は「山田うどん」が援助していて4号前くらいから表4にイラストレーションで「山田うどん」の宣伝を入れているんです。わたしは次号の表4の絵を伸坊さんから紹介されて描くのです。宣伝といっても「まったく好きに描いていいです!」といわれてますけどね。

南伸坊さん描く「山田うどん」(15号掲載)と14号「特集 80年代エロ本文化」の表紙

やまだないとさん描く「山田うどん」ドレスがうどんで割り箸の髪飾り(14号掲載)と15号「特集 犯罪者たち」の表紙

 

 

おいどんの個展

おいどんは11月1日〜30日まで、鹿児島で個展するたい!…というわけで鹿児島は薩摩川内市隈之城町のギャラリー「U1 SPACE」で個展「Takayuki Ino’s Portrait Gallery」をやります。おちかくの方は是非お立ち寄りください。はい、よろしくおねがいします。スペースがひろいので50点くらい展示します。↑この画像は展示の内容とは関係ありません。フォルダを整理してたらでてきたので「芸術の秋」ということでのせてみました。

さて、「イラストレーションセミナー」もますます近づいてきましたよ。専門的な内容です。ただのトークショーではありません。お申し込みはコチラから。↓第一回イラストレーションセミナー 矢吹申彦×南伸坊