先週から引続き、個展の宣伝をば。全部で6種あるDMから今週も2種づつ、もったいぶってアップします。絵を描く人なら誰でも知っている有名画家だけど、そうでない方には「誰なの?」と言われるかも知れない。木村荘八とデビッド・ホックニーです。(画像はクリックすると鮮明に,大きくなるでしょう)
木村荘八といえば、一番有名なのは永井荷風の「濹東綺譚」の挿絵かな?と思いまして、その挿絵をもじってこの絵は描きました。木村荘八の後から店を出て来るのが永井荷風ですよ。木村荘八は今回3枚描きました。実家の「いろは牛鍋店」のお店の玄関を描いたすばらしい油絵がありますよね、あれをもじったのと、猫好き荘八が猫に囲まれている写真をもとにしたのと。どうぞみなさん見に来て下さいね,まじで。
肖像画の名手でもあるホックニーはこう語っています。『僕はキタイに開眼させられた。何を描いていいか悩んでいた時期に、僕は彼に、自分の興味、たとえば、菜食主義や政治のことを打ち明けたんだ。すると彼は言ったんだ。「どうしてそれをテーマに絵を描かないんだい?」僕自身の自意識にのぼるまでに、ずいぶんと時間がかかってしまったが、肖像画や人物画は無限に興味深いものだ。誰もが表情に感心がある。他人のことを語ることは、人間にとって非常に深遠なことだ。僕は肖像画の復活を確信している。』そういうこと、そういうこと。僕が今回やりたいのもこういうことです。
DMを見て「あれ、伊野君画家宣言?」なんて冗談で友達に言われましたが、たとえばこの木村荘八とホックニー、両者の画風にあわせてタッチをかえて描いて…こんなイラストレーションらしい展示は他にない。と言いたい。「いわゆる画家」ならこんな展示は絶対にしないと思うので、そういう逆の意味でもイラストレーターの芸をお見せする展覧会にしたいと思ってまーす。
告知!来月12月4日〜19日まで「リトルモア地下」にて個展「画家の肖像 Takayuki Ino’s National Portrait Gallery 」をやります。
今年のはじめ、ロンドンに「ゴッホ展」を見にいきました。16年ぶりの海外旅行でした。生で見たゴッホはとても良かったです。ロンドンにはNational Portrait Galleryという肖像画ばかりを集めた美術館があります。肖像画は僕にとって興味のつきることのない画題です。ロンドンで「ゴッホ」と「肖像画」を見ているうちに、年末にリトルモア地下でやることになっている個展は、画家の肖像を描こうと思いました。画家はもっとも身近に感じ、時には届かない遠さを思い知らされる存在です。そんな画家達をあの手この手で描いてみました。題して「画家の肖像 “Takayuki Ino’s National Portrait Gallery inTokyo”」です。是非見に来て下さい。 伊野孝行

Vincent van Gogh/Henri de Toulouse-Lautrec/Paul Gauguin/Salvador Dali
Pablo Picasso/Paul Cézanne/Henri Rousseau/David Hockney/Francis Bacon
Balthus/Alberto Giacometti/Rembrandt H. van Rijn/Edvard Munch
Marcel Duchamp/Andy Warhol/Jackson Pollock/Gilbert and George
Ron Mueck/Alexander Calder/J. M. W. Turner/Georges Bigot/Damien Hirst ……
岡本太郎/与謝蕪村/曾我蕭白/河鍋暁斎/木村荘八/小村雪岱/長沢節
山下清/横尾忠則/藤田嗣治/オノ・ヨーコ/棟方志功/草間彌生/茂田井武
富岡鉄斎/秋山祐徳太子/鈴木春信/長谷川利行 ……

今回はDMの絵はなんと6種類あります!今週は「自画像」「ゴッホとゴーギャン」の2種をアップしてみました。「自画像」はゴッホの「タンギー爺さんの肖像」(浮世絵をバックにタンギー爺さんが座ってる絵)を思い出しながら描いてみました。友達に言わせると、本物より男前なのだとか。そうですかね。おっと、それはどうでもいいとして、今日は何の日かご存知ですか?今日は12/9(木)19時30分からおこなわれる、私とあの南伸坊さんのトークショーの受付開始の日なのです!写真は「本人術」を使って沖縄の妖怪「キジムナー」そのものになった南伸坊さんです。名著『歴史上の本人』から無断で転載いたしました。どんなトークになるでしょう?
ご予約はリトルモア地下03−3401−1042(平日10時〜18時まで)か下記の予約フォームアドレスから!ご予約はコチラ
「芸術新潮」で連載中の藤田一人さんの「わたし一人の美術時評」先月は「役に立つ芸術」というテーマでした。社会における芸術の意味を問いただしているとてもおもしろい内容でした。最近は現代美術が全国各地の文化的地域振興のアイテムになっています。文化庁が後押ししている漫画やアニメの海外発信もそう。しかし芸術はそんなもんだっけ?デュシャンやウォーホールやダミアン・ハーストは何故あんな作品を作ったのか?コラムには「”役に立つ”ことと”必要である”ことは微妙に違う。実利性と必然性の違いと言ったらいいだろうか。少なくとも近代以降、芸術なるものの価値は後者に重きが置かれてきたはずだが。」と書かれてありました。このコラムを読んで、前に雑誌で森村泰昌さんが紹介していた赤瀬川原平さんの文章「この間友人と話をしていて、かつて芸術といわれていたものがいまはアートといわれているが、このアートの内実はじつはデザインなのだという結論になり、自分自身納得した」というのを思い出しました。
で、芸術家ではないけどイラストレーターの私はこのコラムになんとか挿絵をつけなければいけません。こういう重みのあるテーマはこちらもその本質にせまりたいところでしたが、即物的に役に立つというところに逃げてしまいました。「ジャコメッティの帽子掛け」はお役に立ちますでしょうか。このコラムでは題字も担当しております。

「小説すばる」で連載中の山本幸久さんの初の時代小説「大江戸あにまる」の挿絵です。今回の狂言回しの動物は羊。この小説の主人公は、武士にもかかわらず、剣術が弱く、気が弱く、およそ武士らしいところがまるでないのがとてもいいのです。3ヶ月に一度の掲載で、今月は新しい話の挿絵を描きます。今度は「ワニ」が出てくるそうで、山本さんの原稿を楽しみに待っているところです。


ブーム。それに乗らない手はない。しかし、みうらじゅんの「ゆるキャラ」をとってみても最初の発端と、それがブームになって末端にまでひろがった終着点では、本質がかなり変わってしまっている。ブームというのはそういうものであり、坂本龍馬を煎餅や饅頭にして何が意味があるのかわからないが、ともかくそれがブームだ。その坂本龍馬ブームが私のところにもやって来た。しかもこれは煎餅や饅頭ではない。ちゃんとした立派な小説である。
坂本龍馬のブーツをはいた2枚の写真。一枚はブーツが綺麗で、もう一枚はブーツが汚れているとか。そこに着目した作者の梶よう子さんが想像力を駆使してお書きになった読み切り短編小説である。掲載は「小説現代」でございます。
報告がおそくなりましたが「芸術新潮」にて9月号から、藤田一人さんのコラムに挿絵をつけています。藤田一人さんのお名前は「一人」と書いて「かずひと」と読みます。そんなわけで「わたし一人の美術時評」というタイトルになってます。この場合はふつうに「ひとり」と読んでくださいね。第一回目の内容は「現代若手美術家考」という内容でした。最近の若手作家に見られる傾向と、とりまく状況について書かれてありました。私は商業美術家ですが、それ以前に芸術家である気持ちを忘れてしまってはいい仕事もできません。芸術家にとって「若さ」は最も重要な価値の一つです。藤田さんのコラムは今売られてるので2回目。もう3回目の原稿も読んでイラストレーションを描き終わりましたが、時評であっても普遍的なお話が展開されていてとてもおもしろいです。力強い文章はこの夏の酷暑にもかかわらずクーラーなしの部屋で書かれたとか。芸術家にとって若さとは?…私の描いた挿絵はこんなものでした。文中にはこんなシーンはありませんけど。ヴィンちゃんとポール君の仲良し?コンビです。(ゴッホとゴーギャンです。念のため)