飛鳥新社からチョイと前に出た「専門家の予想はサルにも劣る」のカバーを描きました。ダン・ガードナーさんという人が書かれた本です。専門家の予想がいかに当たらないか。チンパンジーの投げるダーツより当たらないらしい。大震災と原発事故を経験した我々は、専門家の言うこともどうやらあてにならないらしい、と感じてはいるが、さて何故そんなに当たらないのか?心理的、社会的なトリックを解き明かしたのがこの本です。デザインはモリサキデザインさんです。
原書ではチンパンジーの写真が表紙に使われていたので、こっちは専門家とチンパンジーのダーツ合戦にすることにしました。表1に顔を出しているチンパンジーはカバーのそでにもまわっているのですが、ダーツに苦戦する専門家を影から笑ってるような感じにしたかったんです。原画はこんなかんじ。
表4は逆にチンパンジーが簡単に的に当てるのを、専門家が「どうして…?」というふうにしたかったんです。余談ですが、このあいだDVDで「猿の惑星 創世記」を見てとてもおもしろかった。見終わってしばらくは猿の真似をしていた。我が家にはチンパンジーのぬいぐるみがあり、急にそいつがかわいくなってきて、そいつでも遊びました。この本のカバーの絵はぬいぐるみを見ながら描きました。
高橋由一展を見てきた。おなじみの愉快な静物画以外にも、いろんな絵がありおどろきだった。日本ではじめて本格的に油絵を描きはじめたという人であるが、西洋の真似をするよりも「日本人のワシが油絵を描いたらどんな絵が描けるのか試してみる!」というような心意気を全体的に感じられ、そこが高橋由ならではのおもしろさだと思う。由一の時代、ヨーロッパでは印象派がはじまっていたが、そんなことは知らないはずの由一の絵の中に印象派のような絵がある。印象派は日本の絵から非常に影響を受けたわけだが、コースは逆であるが同じようなことを由一もやっていた。この時代はそれぞれの地域の中で発達してきた絵画が国を超えて混ざりはじめた頃だった。日本と西洋をまぜこぜする実験をかたや西では印象派がかたや極東では由一がやっていた。絵画史の最先端に立っていた前衛の画家である。「近代洋画の開拓者」などという呼び方では、日本では始祖的な存在であるが、世界的に見れば後進国のリーダーのような感じでなんだかさみしい。

とくにこの隅田川の夜景はこの展覧会の中でも随一の美しさで、なのに図録には小さくしか載っていなくて残念。がんばってでかい解像度でスキャンしたから是非クリックしてほしい。よかったら是非ほんものを見に行って欲しい。
江戸から明治になったとき、由一は40歳だった。つまり由一は明治人ではなく江戸人だった。さきほどの日本と西洋をまぜこぜする場合、この江戸人ということが重要なポイントである。江戸人高橋由一が油絵を描くからおもしろい絵ができあがった。次の世代になると実際に留学をしてしまうから、圧倒的に影響されちゃって、由一のようなおもしろい結果がでない。逆に西洋の古い絵の真似などをはじめてしまう。そして彼らはとてもウマい。僕は由一のちょっとヘタなところが好きだし、そこが新しさなのに。そう、時代は「絵はヘタでもいいじゃないか」というところにさしかかっていた頃でもあった。
ゴッホが広重の浮世絵の構図を取り入れようとしていた、その10年ほど前には由一もおなじような実験をしている。さきほどの雪景色の絵もそうだが手前に植物などを大きく配する絵を由一はよく描いている。由一は広重が好きだったようだ。
あと、由一はゴッホと同じくミレーの絵を模写しているのもおもしろい。広重とミレー、すごい偶然、いや、優れた頭脳に立つアンテナはインターネットなど必要としないということか。下の絵は由一の模写したミレーである。
おまけとして僕の「高橋由一の肖像」を載せてみる。残念ながら「お豆腐」の絵は出品されていなかった。
この「高橋由一の肖像」もおさめられた画集「画家の肖像」はハモニカブックスより発売中!(結局、宣伝か!)「ハモニカブックス」はこちらどえす!
小説現代で連載中の梶ようこさん「立身いたしたく候」の挿絵です。
夜食のおにぎり食べてます。
刀が刀らしく見えないって?そう、木刀です。じぶんでもそれを忘れてて、掲載誌が届いたときに、「なんて刀がヘタクソなんだ!」と情けなくなりました。そうそう木刀だったんだ。木刀としてもヘタだけど…。
このお侍(主人公ではない)が、今で言う「新型うつ病」にかかってて、世間や他人にうらみを抱いているというおはなし。だからタイトルが「うらみぶし」ウマい!
この侍は「矢場」で遊んでるときは生気を取り戻すという…。
西宮の苦楽園にある「ウラン堂」では6/30まで「伊野孝行 画家の肖像」やってます!(click!)