伊野孝行のブログ

今週、金曜から!

4週にわたってしつこく宣伝してきた伊野孝行・丹下京子の二人展『鍵』、ついに今週の金曜日にはじまります。だいたい展覧会は当時者にとっては一大事ですが、他の方々にとってはどうでもよいことの一つかもしれません。行こうと思ってたけど、やっぱり面倒くさくなってヤメた。ということのないように心からお願いしたいです。昨日薬局で睡眠改善薬「ドリエル」を買ってきました。展覧会の前日はなぜかいつも眠れないからです。でも今回は二人だからだいぶ気は楽ですね。(画像はクリックするとピンぼけが治ります)

プチ予告編のつもりで漫画と切り抜きコラージュを載せてみました。切り抜きコラージュは絵の中のつまらない部分だけで合成してありますので、会場にいらっしゃれば1000倍面白いものがご覧になれる、はず…です!

ではみなさまHBギャラリーでお会いしましょう!ぐわはははははははあ〜っ!
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あんな鍵こんな鍵

伊野孝行・丹下京子二人展「鍵」宣伝特集、第三弾。今週もやりますよ〜。なぜって見に来て欲しいからでーす!

谷崎潤一郎は、妻の千代に自分の弟子の美青年を近づけ、不倫をけしかけ、それを同時進行で小説「蓼食ふ虫」として新聞に連載したおそろしい人です。「鍵」では登場人物の背景などほとんど語られておらず、夫の職業も大学教授とあるだけで何の教授かさっぱりわかりません。不要な説明はばっさり切られています。抽象絵画を観ているようです。観念的エロの世界でここまでひきつけるのは、やはり天才の筆に体験が加わっているからでしょう。ちなみに「鍵」を書いた時は七十歳。

「鍵」の連載時は棟方志功が挿絵を描いてます。古本で見つけた本には収録されてました。とてもいいです。いつものように仏教画っぽいですが。(毎度おなじみ、このブログのソフトのせいで画像がぼやけてみえますがクリックすると綺麗にみえますので、どうぞよろしく)

映画は有名な市川崑監督作品の他、日本で3本、海外で1本、映画化されてます。ロマンポルノの神代辰巳版「鍵」を観た丹下さんによると「爆笑」とのことでした。どういう意味なのか僕もこの眼で確かめなければなりません。市川崑版「鍵」は脚本に奥さんの和田夏十さんが加わっていて、鍵と日記、というキーワードを映画とは全く違った使い方にしています。絶対重要なこの二つを外して使いながら、原作を濃厚に再現しているのはお見事!と万歳するしかありませんでした。キャストは、中村鴈治郎、京マチ子、仲代達矢、叶順子とびったしあってます。山茶花究も顔を出します。さらに撮影は宮川一夫だし、音楽は芥川也寸志だし、とにかくこの映画は参考になるのですが、打ちのめされました。京マチ子は45歳の役だけどこのとき34歳。貫禄ある。宮川一夫映すところの京マチ子の肌の素晴らしいことよ。

一番最近に映画化されたのは、川島なお美と柄本明が主演です。篠山紀信が撮った川島なお美の「鍵」という写真集もあるらしい。海外版の「鍵」の画像はネットで見つけました。なにやら別物になっていそうでおかしい。展覧会が終わったら全てを見比べて、我々の「鍵」が何番にランクインするかやってみたいと思います。

現在、小説は新潮文庫で表紙は、森英二郎さんが描かれて(彫って刷って)います。森さんはご近所でもあるので、時々お茶をごいっしょしたりしています。このあいだは「宮の坂」の駅近くの、そこはかとなく西海岸を思わせる喫茶店でだべりました。

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二人展「鍵」は8/27から9/1まで。

「鍵」の人物スケッチ

来る8/27からの伊野孝行・丹下京子二人展にむけた宣伝特集、今週は登場人物のスケッチをのせてみます。夫、木村は僕が、妻と娘は丹下さんがそれぞれ描いてます。文字は僕が勝手に書き入れました。では、どうぞ!夫 大学教授 56歳   体力の衰えと精力の減退に悩んでいるが、観念的な性的欲求は旺盛。軽い猥談にさえ耳を覆う、妻の偽善的お上品さに不満をもっている。

妻 郁子 45歳       夫と寝床に入ってもただただ受け身の貞淑な妻。古風な貞操観念をもっている。いや、この物語が始まるまでは「もっていた」というべきか。

娘 敏子 22歳        木村と婚約中。木村が自分より美しい母に興味を持っていることに感づいている。生来のゆがんだ性格から、事を正すよりも混乱させてしまう。

木村 大学助手 35歳        夫の研究室で助手をつとめる。おそらく自分が世に出るために敏子と婚約したと思われる。要領がよく、教授のたくらみにも知らぬ顔で協力する。美しい容姿と逞しい肉体の持ち主。

伊野孝行 イラストレーター 38歳          自称「水彩の魔術師」丹下京子 イラストレーター CMプランナー 42歳  「性格はせわしない、とよく言われます」

 

 

二人展DMの正しい見方

来る8月27日(金)から9月1日(水)までHBギャラリーにて伊野孝行・丹下京子の「二人のスケベ展」じゃなかった、「二人展・鍵」が開催されます。みなさまご来場おまちしております。エログロナンセンスは世の中に余裕のある時代の表現ですが、この行き詰まった時代にエロとナンセンスで果敢に逆行したいと思います。

これが展覧会宣伝用カードです。タイトル「鍵」と二人の名前。「陰影礼賛」を思わせる和室の中で、なにやら気になるのは左に見える物体。さてこれは何でしょうか?(すべての画像はクリックすると鮮明になります。ピンぼけなのはブログのソフトのせいです。)

カードを開くと、丹下京子描く女性の絵が。足元には鍵が落ちています。右側にはなにやらあやしい白い足が。その上の文章にはこうあります。

老境をむかえた夫は、めっきり衰えた精力をある方法で取り戻すことを思いついた。/夫は若い男を妻に近づけた。彼は娘の恋人でもあるのだが…。/嫉妬の効用により、夫は目的を果たしつつあるが、貞淑な妻の中では何かが目覚めはじめた。/奇妙すぎる四人の関係。その果てにある世界とは。/谷崎潤一郎の小説を元に伊野孝行と丹下京子がおくる愛欲の悪夢。

開ききると私の描いた男性の絵(つまり夫ですな)が現れます。机に鍵をかけようとしています。真ん中には二人の日記の出だし部分が引用されています。お互いに秘密の日記をつけながらもこっそり読み合っている(読ませ合ってる)のです。二人の日記を交互に読んでいくことでこの物語は進んでいきます。

ひっくりかえすと、こうなっていました。横たわる妻は意識を失っているかのよう。眼鏡だけ光る夫はどうみてもあやしすぎます。

というようなわけです。原作にきわめて忠実に描いてますが、やはり個性というものは自然に出てしまうものです。小説でもない映画でもない「鍵」の世界が出来あがりつつあります。あとひと月を切りました。どうか見てやってくださいませ。ご鞭撻よろしくお願いいたします。
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港の中から誰かが呼んだ?

小学5年生の時、公文(くもん)の帰り道、自転車で港を走っていた。…ところまでは記憶にあるが、気がついたら溺れていた。

全く不思議である。落ちた記憶はないのに気がつけば海の中だった。溺れている間に記憶が消えてしまったのかもしれない。

当時はまだ泳げなかった。港の岸壁にはフジツボがびっしりついていたがそこに手をかけることも不可能だった。海の中から見上げる空には月が出ていた。溺れている時、むやみやたらに手足を動かし呼吸するのに必死だったが、頭の方は他のことを考える余裕があった。この月が見納めの景色だとか、友達の顔などが走馬灯のように順番に出てきたリだとか…短い人生だとは思わなかった。どれくらい時間がたったかわからないが、空に人影が現れて、長い竹竿をさしのべてくれた。この見ず知らずのオジさんがいなかったら、翌朝水死体で発見されていただろう。夜釣りをしていたオジさんは溺れる音を聞きつけてくれた。そこらへんに置いてあった海苔の養殖用の太い竹竿につかまらせようと機転をきかせてくれたのである。(顔がちょっと水木しげる先生風になってしまったが…)竹竿につかまり、何度もずり落ちたが、なんとかよじのぼって、助かったのであった。めでたし、めでたし。その晩は死の恐怖で泣きどおし、しばらく港にも近寄れなかった。翌日、こっそりと親父が自転車を引き上げに行った。ナイショにしていたのに「昨日誰かが溺れていた」という話は町に広がっていた。しかし、なぜ落ちたのかわからない。ぼんやりしていた子供だったので居眠り運転でもしてたのだろうか。おわり。

点取り占い第1集

「点取り占い」が好きなので…。本家ののんきさはにはなかなか到達できない。(画像はクリックで鮮明に!)