子供の頃の夢、それは「漫画家」になることでした。いや、実は大きくなってからも、漫画家になりたかった。大学時代には雑誌に投稿したこともあります。なのにいつしか漫画はそっちのけで、イラストレーター志望になってしまいました。しかし、イラストレーターで漫画も描ける人は、僕の憧れであります。湯村さん、安西さん、南伸坊さん、スージーさん…イラストレーターが漫画を描きはじめた時代の洗礼をうけましたから。今から5年ほど前、やっぱりもう一度漫画を描きたいと思い、3本描きました。「あひびき」「ひみつ」「人気者」という女子高生シリーズです。もちろん誰に頼まれたわけではありません。そしてオファーもないので最近は描いておりません。てへへ。今回HBビジュアルブック「こっけい以外に人間の美しさはない」に収録されている「人気者」という漫画を載せてみました。あ、ここに載せたのは1ページ目だけ。本篇はTISのサイトにアップしました。
クリックしてください!伊野孝行のまんが「人気者」
「小説すばる」で連載中の山本幸久さんの初の時代小説「大江戸あにまる」に挿絵を描いています。この小説は面白い!主人公はおよそ武士らしくない武士で、剣術もからきしダメ。かといって学問に優れているわけでもない。だけどこの小説の中に入ると、いい風が吹いていて、とても気持ちがいい。「新しい時代物」を読んでいる気がする。挿絵は雰囲気を描きたいから、僕にとっては願ったりかなったりの小説です。


というわけで、TISのサイトがリニューアルしました!(click!)
どうぞクリックしてのぞいてみてください。ホームページというのは色々な見せ方ができるけど、更新が難しい。ブログは更新が簡単だけど、見せ方が限定される。今度のTISのサイトは両方を兼ね備えています。画像も1000枚くらいアップ出来るらしいので、更新していきます。みなさまどうぞよろしくおねがいいたしま〜す!

前にも少しお知らせしましたが、今年は二人展と個展があります。そして早いもので、もう半年くらい過ぎてしまいました。気ばかりあせる毎日です。ここ2週間ほど、左目の下がビクビクしていたのは、ストレスのせいでしょうか?期待されてなくても、期待にこたえていかねばなりません。今日は8/27からはじまる二人展の事を書きましょう。
二人展のお相手は、丹下京子さん。そもそものきっかけは丹下さんから声をかけられたからです。丹下さんはCMプランナーでもあるのですが、その時点で何をやるかはノープランでした。個展じゃない場合は、なぜグループでやるのかという必然性が欲しい。第一回印象派展はサロンに受け入れられなかった画家達が起こした行動です。僕と丹下さん、この二人でしか出来なくて、二人だからこそ出来ることは何か?
…結局、谷崎潤一郎の「鍵」を元に絵を描くことにしました。この小説は夫婦がそれぞれ日記をつけていて、お互い盗み読みをしています。読者は夫の日記、嫁の日記を交互に読むことで小説が進んでいきます。この形式が、二人でやるには、なかなか面白いと思いました。もちろん夫のパートは僕が担当し、嫁は丹下さんです。主な登場人物は夫婦の娘と、娘の婚約者がでてきます。とてもインモラルなストーリーです。独特の暗さと重苦しさがある世界ですが、我々の持っているユーモアがどう混じっていくのか、その辺が見所になるでしょうか?小説とも映画とも違う所を提示しなければいけないと思っています。
展覧会がただ仕事のための見本市だったらつまらない。わざわざ見に来てくれた人に申し訳ない。実生活で母親でもある丹下さんは、頑張って助平な絵を描いてます。お楽しみに。
丹下京子さんのホームページはこちらです!
今月の泉麻人さんの「ロケ地探偵」は62年東宝作品、豊田四郎監督「如何なる星の下に」だった。豊田四郎は「夫婦善哉」「駅前旅館」など文芸作品も多く、この映画も高見順の小説が原作だ。どの映画も、何かといえば「お銚子」がすぐにはこばれてくる。だから映画を見終わった後は日本酒が飲みたくなってくる。この映画は東宝オールスター映画で植木等も出てくる。とても悪い役だ。小林信彦が「日本の喜劇人」の中で植木等に会ったときの第一印象は「色悪」と書いていたような覚えがあるが、まさにそんな感じの役だった。
さて、この連載がある「イッツコムマガジン」は来月号からリニューアルされるようで、いままでお世話になっていたデザイナーの西植さんともお別れになった。ありがとうございました。「ロケ地探偵」は存続ということなのでひと安心していたのだが、なかなか次号の連絡がない。このブログを書いている途中に、やっと連絡が来た。「新しいデザイナーさんより、別のデザイン案を提案され」たようで私は今回で終わりということが今わかった。(イラストレーターを替えてこの連載は続く。)複雑な心境でこのブログをしたためているわけです。自分でもピッタリだと思ってたんだけど。担当の平井さんもピッタリだと言ってくれてました。今までありがとうございました。しかし、世の中どうなっとんね〜ん!
5月1日発売の新潮文庫、角岡伸彦著「ホルモン奉行」のカバーを描きました。ホルモンが食べられて来た背景を語り、BSE騒動に憤り、日本各地、果ては米国、韓国など海外にも調査を敢行したホルモン奉行、角岡伸彦さんのルポルタージュです。ホルモン食文化の奥深さと多様さ、まずおいしさに感動することが理解を深める第一歩、知られざるホルモンの世界へようこそ!クリックすれば画像もクッキリ!
さて今度は、絵の制作意図を解説しましょう。ホルモン奉行は単なるグルメではない。ホルモンの奥にある文化もふくめて食べる、つまり味わっている表情にしなければならない。どうですか?なかなかいい顔でしょ?この際、箸が曲がってるなど気にしない、気にしない。奉行の顔に差す夕日は、味わうことの余韻をさらにひろげています。奉行と反対に牛は、それどころじゃないって顔をしている。自らの運命を予感しているのでしょう。夕日とそれに染まった空の色は、命を食べて命をつなぐことへの祈りを表し、なおかつこの色彩から、ホルモンの匂いが漂ってくるように狙って描きました。