伊野孝行のブログ

野生時代小説

角川書店「野生時代」に連載中の宇江佐真里さんの時代小説、「通りゃんせ」の挿絵です。「野生時代」は月刊誌だが、「通りゃんせ」は3ヶ月に1度の掲載で、つまり年に4回しか挿絵を描く機会がない。まさに忘れたころにやって来る仕事なのである。現代の青年が江戸時代にタイムスリップして展開していく話なので、いかにもな筆のタッチよりもペンのほうが合うかな、と思ってサインペンで描いてるのだが、サインペンは味が出ないので、難しいっすね。あー、難しい。でも味が出にくい画材をモノにできたら、実力がつくと思う。がんばるしかない。

 

 

小林ヒロアキさんのこと

何のためにブログをやっているか?自分の宣伝のためである。だけど今日は他人の宣伝をしよう。ぜひ、多くの人にこの人の存在を知って欲しい。彼の名前は、小林ヒロアキさん。自らを「ロックンイラストレーター」と名乗っている。「ロックンイラストレーター」とは語呂がいいが、僕は小林さんは芸術家だと思っている。岡本太郎の言う「芸術」の定義にもピタリとあてはまる、真の芸術家だ。僕は小林さんの作品を見ると、いつもジーンときてしまう。言葉はいつも直球で、なおかつ(これがスゴいとこなんだけど)クサくない。「今日の芸術はうまくあってはならない(岡本太郎)」のとおり絵はヘタである。この言葉にはこの絵しかない。うまい絵だったら説得力がこれほど出ない。

下の絵は、去年の個展のハガキになっていた絵だ。小林さんから次のようなメッセージとともに送られてきた。「私の尊敬する画家の谷内六郎(ロックンロール!)さんを意識しながら、これからの子供たちが健全に育つための環境づくりの大切さ、をテーマにして!色々描いてます。」…アート界広しといえ、こんなテーマで個展やる人いる?自分の思ってることをドーンとぶつける。本来のロックンロールはこういうことなんだと思う。小林さんの世界は万人に受け入れられるものだ。奈良美智もファンだと公言し、大竹伸郎もエールを送る小林ヒロアキさんにもっと幸あれ!

この個展に関する小林さんのメッセージはこちら

 

 

裏ネタ日本史

宝島社文庫の「裏ネタ日本史」という本の表紙を描いた。「紫式部はレズだった」「銭形平次は前科者」といった歴史トリビアが満載の本である。この絵の描き方は、彩度が高いので印刷で正確に再現しにくいのだが、仕上がりはとてもきれいで、良かった。デザイナーの藤牧朝子さんや印刷会社の職人さんに感謝しなければいけない。この水彩絵の具のおつゆ描きのやり方はずいぶんやっているが、利点は濃い内容でもあっさりして見えるということだ。もしアクリル絵の具で塗り込んだら,クドすぎるだろう。「壁に耳あり、障子に目あり」の様子を描いてみた。人間の営みには、このように裏の裏があるものなのだ。なお、本文のエピソードには関係ありません。

ついでに、実際には使わなかったが版画風バージョンもあるので、お見せいたします。

 

 

愛犬とイラストレーション

リクルートの「アイケント」という、犬のグッズ通販雑誌に描いた見開きを2つお見せします。愛犬と旅行に出かける時のNGシーンを描いたのだが、自分で言うのもなんだけど、イラストレーションを使うと、ただのQ&Aもこんなにおもしろくなるんだなぁ。メディアにはもっとイラストレーションを使って欲しいと切実に思う。生活かかってるしね。

※こんなに小さくては何もわからない。お願いします!クリックしてください。

「アイケント」では、他にも「犬語辞典」といのを連載していた。犬の行動(犬語)にはどんな意味があるのか知ろう、というコーナーである。下のちっちゃいカットも描いている。当初、毎回2犬語づつだったのが、犬は語彙が少ないので連載が早く終わってしまう、ということで毎回1犬語になった。しかし、犬の語彙が尽きるを待たずして「アイケント」が休刊になってしまったのである。残念!無念!

 

 

某大新聞からのビッグな話

某大新聞から、来年の新聞小説の挿絵の依頼が来た。作家は国民的に有名な先生である。これで来年は金持ちになれるぞ!今までの苦労が報われる。やはり神様はどこかで見ていなさるのだ。カラーで掲載ということなので、このようなサンプル作品を送った。ただ、ひとつ気になることが。最終的には作家の先生が決定するらしいのだが…。

で、しばらくして結果がきた。ダメであった。カックンショックだった。他の候補の人に決まったようだ。人生なかなかうまくいかないね。

 

 

PLAY!中国武術

講談社の「TRANSIT」という、内容のスゴく濃い旅行雑誌の仕事です。(以前「NEUTRAL」という名前で白夜書房から出ていた。)中国特集ということで、中国武術の図解をした。一口に中国武術といっても色々あって、感じを出すのに苦労した。…わけではなく、スムーズにできた。こんな図解は描くのが楽しいし、イラストレーションの基本という気がして職人気分にひたれる。編集部の文章もおもしろくて、小さいながらも気に入ってる仕事です。